にらレバライター、BEEK DESIGN スタッフとして編集・デザイン業に勤しむ。元地域おこし協力隊・青少年育成プラザMiacisスタッフ。1991年生まれ。韮崎高校出身。音楽・サウナ・お寿司が大好き。
このゴールデンウィークに、韮崎市に新たなアートスポットが誕生しました。まちのひとたちの協力により、古くなったシャッターが、見る人を楽しませる華やかなシャッターへと大変身を遂げたのです。
今回の記事では、そんな韮崎市で行われている”シャッターアート”の取り組みについて、ご紹介したいと思います。
3日間に渡り開催された、シャッターアート制作イベント
GWの5月3日〜5日の3日間に渡り、韮崎市立民俗資料館ではシャッターアートを描くイベントが開催されました。
シャッターアートとは、その名の通り、シャッターに絵を描くことを言います。
シャッターというキャンパスはとても大きいので、誰でも参加自由のイベントとし、集まったみんなで協力して絵を描いていきます。
1日目は錆止めを塗った後のシャッターの一面を、黒く塗りつぶす作業からスタート。
協力会社の向山塗料の職人さんが、ペンキの塗り方を指導してくれます。
「ペンキが濃いことを『こみがいい』、水っぽいことを『しゃぶい』って言うんだよ」などと業界用語も説明してくれて、みんな興味津々。
真っ黒になったシャッターの上に、画家の羽中田桂子さんがチョークで下書きをして1日目が終了しました。
2日目には小・中・高・大学生・大人まで、さまざまな年代の参加者が集まりました。
みんなで協力して羽中田さんが描いた下書きをペンキで塗っていきます。細かい作業に子どもたちの集中力も高まります。
3日目は修正作業と文字入れ作業。まずは縁取りやはみ出た部分を直していきます。
民俗資料館職員の閏間さんが考えたお話も添えられて、ついにシャッターアートが完成!
みちがえるほど華やかなシャッターに変身しました。
描かれたのは「日本のへそ」と「縄文土偶ウーラ」
今回民俗資料館の2枚のシャッターに描かれたのは、「日本のへそ」と「縄文土偶ウーラ」の2つの絵。
「日本のへそ」の絵は、韮崎の大草町がちょうど日本の中心だと言われていることから、日本列島の中心に韮崎のまちの至るところに咲き誇る立派な桜が立っている様子をイメージして描かれているそうです。
「縄文土偶ウーラ」は、後田遺跡で発見された韮崎市を代表する土偶です。仮面をつけているように見えるところが特徴的な約4000年前の土偶で、民俗資料館内に展示されています。
命の大切さを伝承する土偶に願いを捧げながら日が沈んでいく様子が今回の絵には描かれています。
2枚の絵には、「子どもたちが健やかに育って欲しい」「いつまで韮崎らしく、平和であってほしい」という共通した想いが込められているそうです。
韮崎にあるシャッターアートはなんと11箇所!
この”シャッターアート”の取り組みは、シャッターが閉まったままの空き店舗が多くて寂しい韮崎のまちを活気づけようと、韮崎市がまちなか活性の事業の一貫で始めた取り組みであり、現在は市民の有志により続けられている取り組みです。
今回制作した民俗資料館のシャッターを含め、現在韮崎のまちには、11箇所のシャッターに絵が描かれています。
(富士山とカッパのシャッターの間に、わに塚の桜のシャッターがあります。)
商店街にあるものには韮崎に古くから伝わる民話が描かれているので、お話を楽しみながらまちを散策することもできます。
デザインは韮崎在住画家、羽中田桂子さん。絵にかける想いとは?
シャッターアートの絵をデザインしているのは、韮崎市在住の画家、羽中田桂子さん。
羽中田さんの絵が持つ不思議な世界観に魅了されているファンは全国にも多く、7月にはロシアのウラジオストックで初の海外展覧会も決まっているそうです。
羽中田さんは自分の絵を描くときにも今回のシャッターアートのように、背景を一度黒く塗りつぶします。そこに色を足していくのは、だんだんと世界を明るくしていく作業であり、暗闇に光が射していくイメージなのだそうです。
「シャッターに絵を描くことで全員が幸せになるとは思っていない。だけど参加した人や絵を見た人が笑顔になれば、その人がまた他の人をきっと笑顔にしてくれる。みんながハッピーになる方法は、まず隣の人を笑顔にすることだと思うんですよね。」
誰もが垣根なく関われる、みんなでつくりあげるアート
今回描いた「日本のへそ」は、羽中田さんの絵画教室に通っている中島俊樹くんがデザインをしています。
障がいを持っている彼は、2日目のペンキ塗りにもお母さんと一緒に足を運んでくれて、持ち前の集中力で絵の完成のために力を注いでくれました。
私はシャッターアートが、一部の人の満足ではなく、関わる市民が、なんの垣根なく制作し、完成という同じ到達点へ歩く過程の中に深い意義があると思っています。
羽中田さんの言葉からは、シャッターアートそのものだけではなく、それをつくる過程やそこから生まれてくる感情を大切に思っているのだということが伝わってきます。
ただかっこよさを求めるのではなく、少しはみ出したり歪んだりしながらも、「みんなで協力してつくる」ということが、この取り組みの大事なポイントと言えるでしょう。
実はみどころたくさん!韮崎市民俗資料館
韮崎市の民俗資料館は藤井町の少しわかりにくいところにありますが、実はとってもおもしろいスポットなのです。
NHK連続テレビ小説「花子とアン」の舞台に使われていたくらい、昔ながらの生活空間がリアルに再現されていて、明治時代に小学校で使われていた教科書や石版なども展示されています。時代ごとの土器などはもちろん、ウーラの友だちの土偶「石の坪」も愛らしい姿をしていて、一見の価値ありです。
新しいシャッターアートも誕生したことですし、ぜひ韮崎や日本の歴史・文化を堪能できる民俗資料館に足を運んでみてはいかがでしょうか?
そしてその足でぜひ、まちなかのシャッターアートも巡ってみてください。
この取り組みから生まれた喜びがまた、誰かの喜びにつながっていくことを願って。
韮崎市立民俗資料館
■開館時間 午前9時~午後4時30分 (午後4時頃までにご入館ください)
■入館料 無 料
■電 話 0551-22-1696
■休館日 月曜日、木曜日の午前中(※祝日の場合はその翌日が休館日となります)
年末年始(12月29日~1月3日)
*「にらみんのお散歩日記」に最新の休館日が掲載されています。こちらでご確認ください。
■場所 韮崎市藤井町南下條786-3