こんにちは!!学生編集部の長田拓真です。
韮崎から離れた地で活躍する同世代を学生編集部が取材しお届けしていこうと10月にスタートしたこの企画『にらヤンステーション ! 』
第3回目は、学生編集部の稲場理乃さんを長田拓真が取材しました。
【稲場理乃】
山梨県甲斐市生まれ。韮崎高校を卒業後、現在は國學院大學 文学部日本文学科で『古事記』の研究を行い、日本文学と日本語学を学ぶ。
学び、考え、それを分かち合うために必要となる「言葉」、そして言葉の芸術である「文学」の面白さを伝えていくことを目指し、高校の国語科教員を志す。
執筆活動に興味を持ち、「にらヤンステーション!」編集に携わる。同世代への取材を通して覚えた驚きや感動を発信していくことを目指しつつ、自らの文章作成のスキル向上を図る。
今回の記事では、幼い頃から文学に親しみ、現在に至るまで一貫して国語の先生になる夢を持ち続けている理乃さんに、文学の魅力、夢への思い、学生企画に参加した経緯など、インタビューした模様をお届けします。
理乃さんとは同じ編集部であり韮崎高校の同級生でもありますが、クラスが一緒になったことはなく、実際に向かい合って話すのは今回が初めてです。お互い少し緊張気味ですが、理乃さんの魅力を色々な角度から探っていきたいと思います。
文学の魅力に惹かれて~古事記研究に励む~
拓真:よろしく!理乃は今、大学ではどんなことを勉強しているの?
理乃:よろしくね!大学では古典文学を中心に勉強していて、今は『古事記』の研究をしてるよ。
拓真:俺は高校の頃から古典が苦手だったなー。理乃は高校で文系だったよね。そのときから古典が好きだったの?
理乃:うん!けど、古典を面白いと思って本格的に古典文学を読み始めたのは高校3年生くらいのころかな。
拓真:なんで古典を好きになったの?
理乃:初めは、古典の授業を受けていて分からないことがあるのがすごく嫌で、重点的に勉強し始めたんだ。「分かればもっと面白いはずなのに」と思って。それで色々調べたり読んだりしてるうちに、兼好法師の『徒然草』の中に書かれてある「見ぬ世の人を友とす」って言葉に出会ったんだ。「古典を通して、会った事もない古人と交流する」って意味で、古典文学に親しむことを指す言葉なんだけどね。今自分が読んでるこの作品を、話したこともない昔の人も同じように読んでたんだと思うと、なんだか面白くない?ずっと残ってきたものには、絶対理由があると思うんだ。「その面白さをもっと知りたい!」と思って、どんどん好きになっていったよ。
拓真:素敵だね!いくつか古典文学がある中でも、なんで『古事記』を研究しようと思ったの?
理乃:大学では、自分がまだまだ知らないことをたくさん勉強しようと思ってたんだ。源氏物語や枕草子といった、平安時代の宮中が舞台の雅な物語も大好きなんだけど、『古事記』ってこれまでちゃんと勉強したことがなくて。日本神話にも興味を持ってたから、挑戦してみようと思ったんだ。
拓真:具体的にどんな研究をしてるの?日本神話って言ったら、イザナミ、イザナギとか…?
理乃:神であり夫婦のイザナミ、イザナギは有名だね!私は今は天照大御神の研究をしてるよ。太陽神ということではアマテラスも結構有名なんじゃないかな?『古事記』って実は全部漢字で書かれているんだけど、二年生の前期は、それを現代の日本語でどうしたら読めるか、どういう捉え方ができるかを考えてたな。自分なりの書き下し文を作ったり、現代語訳を作ったり。今は後期に入ったからもっと突き詰めて、場面の描写から天照大御神像を読み取ったり、行動が示している意味を考察したりしてるよ。
拓真:『古事記』はたくさんの人に研究されてきて既に分かってる部分も多いと思うんだけど、それでも研究していくのはなんでなの?
理乃:そうだね〜。これまでたくさんの文学者が研究してきてるけど、それでも解明されてないことって実はまだまだあるんだ。ひとつの場面に対する解釈もさまざまな説に分かれていたりするから。研究する人によって、捉え方や考え方は変わるということだよね。これは古典だけの話じゃなく現代の文学にも言えることだけど、文学の魅力って、正しい解答がないことだと思うんだ。むしろ正解主義になってしまったら勿体無いなと思える学問だなって。
中学や高校までは正解を求めることも必要かもしれないけど、大学に入ったら「正解=答え」ではないんだなって思うようになった。文章だけを読んだら、テストで尋ねられているような「正解」には辿り着くかもしれないけど、時代背景とか人物相関とか…いろんな要素を考えていくと、もっと多くの答えが考えられる中で、「それって答えではなくない?」と思えたりするんだよね。だから、いろいろな答えが考えられる中で自分なりの答えを探すのが楽しくて、研究したくなるんだと思う!
拓真:正解のない学問。いやー、深いなー!
理乃:やればやるほど面白い、素敵な学問だよ〜。
つなぐ~人生を豊かにした国語を次世代へ~
拓真:将来は、日本文学に関わる仕事をしたいのかな?
理乃:うん。将来は、高校で国語の先生になりたいと思ってる!
拓真:先生になりたいと思ったきっかけは?
理乃:小学生の頃から国語が好きだったから、中学に上がった時には自然と先生になりたいと思ってたなあ。その時は、ただ漠然としていたんだけどね。
拓真:現在も同じ夢をブレずに持ち続けているなんてすごいな!ほんとに国語が好きなんだね。「こんな国語の先生になりたい」っていう理想はある?
理乃:そうだなあ。先生になるなら、「教科としての国語」以上のことを教えられる人になりたいな。授業をしてその教材のことを理解させて終わり、じゃなくて、その教材を使って、生徒の読解力、表現力、思考力を高めていける先生になりたい。試験のための知識も必要なんだけど、ただ試験をパスするための勉強としてだけじゃなくて、学んで得たものを色んな場面で応用できるのが国語の力だと思うんだ。それと、やっぱり生徒が「面白い」と思えたらそれが一番だな。好きなことって自然とはかどるから、私自身が大学までで学んだことをフル活用して、国語や文学の面白さを伝えていきたいな。
拓真:たしかに、読解力、表現力、思考力って、すべての基礎になっているし、色んな場面で応用できるよね。
今は大学で、高校までの国語よりも専門的な勉強をしていると思うけど、新たな発見や気づきはある?
理乃:最近すごく思うのは、文学って本当に人生を豊かにするものだなってことかな。本をたくさん読んだから語彙が増えたし、感動した時もモヤモヤした時も、その気持ちを表現する言葉を使えるようになった。国語を学んだから目上の人と話す時に敬語を正しく使えるようになった。国語は、自分という人間を表すための一つの手段にもなると思う。私は文学や国語を通して人生が豊かになったと感じてるんだ。だから自分の人生を豊かにしてくれたものを、次世代につないでいきたいと思ってる!
拓真:すごいなー、国語や文学が理乃の人生に大きな影響を与えているんだね!ちなみに、将来は山梨に帰ってくるの?
理乃:先生になるなら、山梨がいいな〜!!
拓真:なんで?地元愛?
理乃:これが拓真や大夢と同じように地元愛と呼べるかは分からないけど…。国語を楽しいと思わせてくれた先生たちと一緒に学校で働いてみたいな。それに、大学で学んだことを先生たちと話してみたいんだ!私が国語を楽しいと思えたのは先生のおかげだと思うから、成長して同じ視点で話ができたらいいなぁと思ってる。あとはやっぱり、自分がよく知っているところで、自分と同じように「国語が好き」と思える子を増やせたら嬉しいからね。
拓真:じゃあ、将来は3人で山梨を盛り上げていこう(笑)!
理乃:そうだね(笑)
原点回帰~韮崎への特別な思い~
〈韮崎で得たものとは?〉
拓真:韮崎でのエピソードも聞きたい!どんなことが思い出に残ってる?
理乃:韮崎で過ごした3年間の中では、陸上部で得たことが一番印象深いなあ。
拓真:陸上部を通じて得たことはなに?
理乃:3年間で結果だけを見たらいい時も悪い時ももちろんあって、毎回必ずしも努力が報われた訳ではなかったけど、それでも、努力なしで報われることなんてないんだなって学んだかな。それと、3年生の時には部長を務めさせてもらったんだけど、周りを見る力や状況を考える力も身についたなあ。
拓真:俺も部活やってたから感じるけど、やっぱり韮崎高校での3年間って特別な時間だったよね。
理乃:そうそう!それに、自分が全力で陸上に取り組んで大切な仲間や先生に巡り会えた地だから、韮崎には特別な思いがあるんだろうな。
〈今しかできない価値ある活動をしたい!〉
拓真:やっぱり、3人とも韮崎が好きなんだね(笑)理乃が学生企画に参加したのは、俺と同じように大夢に誘われたのがきっかけだと思うんだけど、どんな気持ちで参加したの?
理乃:大学の勉強とアルバイトのくり返しの中で、暇だった訳ではないんだけど、ずっと「なんだか味気ないなあ」って思ってたんだよね。「何か別のことを始めたいな」って思いがちょっとあって。誘ってもらった時は、自分のスキルアップになればいいなって思った。大夢から「理乃は文章書くのが得意だから」って声かけてもらって、自分の持ってるものを武器として活かせればいいなと思って、参加することにしたよ。
拓真:今回の学生企画『にらヤンステーション!』は、理乃が求めている文章のスキルアップにはもってこいの企画だよね!だけど、文章のスキルアップや経験を積む場なら他にもあると思うんだけど、その中で『にらヤン』に参加する思いみたいなものはある??
理乃:たしかに、文章を書くことによるスキルアップや経験値を求めるなら、他にも都内で機会は沢山あると思うけど、高校の同級生と何かをやるって経験はなかなかできないじゃん。今しかできないことに挑戦するって、それだけで、単なるスキルアップや経験を積むこと以上に価値のあることだと思うんだよね。
拓真:みんなそれぞれの道を歩んでるけど、高校の同級生とまた集まって一緒に何かをやるって、なんか不思議な感じがするよね。
〈原点回帰から学びを広げる〉
理乃:拓真と大夢と7月から企画を考え始めて、やっと最近『にらヤン』って形で企画を始めることができて、私なりに感じてることがあるんだ〜。
拓真:企画を考えるために、毎週電話して忙しかったね(笑)感じてることって、なに!?
理乃:拓真と大夢も同じだと思うけど、韮崎で過ごした高校の3年間って、部活を頑張ったり、進路を真剣に考えたり、人生の分岐点になる場面がたくさんあったよね。一度地元を離れたいま、そんな地で何かやること、繋がりを再び持つことに、原点回帰って意味があるんじゃないかなって感じてるんだ。根本にもどってみんなと交流することで、自分の今の状況とか状態をなんだか客観視できるようになった気がする。
拓真:たしかに!その通りだね!原点回帰…良い響きだな(笑)
理乃:それに、一人一人が勉強していることは違うけど、それぞれが考えていることを一緒に合わせて何か始めたら面白いんじゃないかって思うの。それがこの企画の良さでもあるしね。みんな得意なことも目指していることも違うけど、各々の個性を活かすことでチームとして色んなことに挑戦できるっていう。
拓真:理乃が言ったように3人それぞれに考えがあるけど、理乃はこれから学生企画をどうしていきたい?挑戦していきたいこととかあれば、教えてほしいな!
理乃:そうだな〜。この企画を始めるに当たって、ライティング講座を受けたり、ウェブ記事の編集について教わったり。やっているうちに、なんだかすごく色んなことを吸収できてる気がするんだよね。この先も、企画を通してどんどん学んでいけたらいいな。あとは、本当に個人的になんだけど…自分と同じように文学部に進学した同世代の話は、かなり聞いてみたい!
文学×まちづくり
拓真:俺はまちづくりの勉強してるんだけど、文学とまちづくりとで繋がることって何かないかなー?
理乃:あるある!韮崎が宮沢賢治の『銀河鉄道の夜』と関係あるって知ってた?文豪にゆかりのある地って、人気になるきっかけになるんじゃないかと思うんだよね。例えば、愛媛県の松山市は、夏目漱石の『坊ちゃん』の舞台として有名だよね。文学ファンの中には、好きな作家のゆかりの地や作品に関係のある地に実際に足を運ぶ人も多いから、そういったアプローチで地域の活性化を考えてみるのも良いんじゃないかな。
拓真:それは良いね!面白いと思う!『銀河鉄道の夜』とのつながりはそこまで知られてないけど、うまくアピールすれば人を呼び込むことにつながるかも!
理乃:あとは、新元号の『令和』って言葉が万葉集から採用されたことで古典に興味を持つ人が増えたことも、何かにつなげられそう。万葉集関連の本が売れたりしてるから、それをきっかけに、古典とか文学の面からアプローチできないかな。
拓真:すごい!それは俺じゃ思いつかないアイディアだなー!イベント系なら学生のうちにも企画できそうだね。俺が思いついたのは、俳句、和歌や短歌の大会のようなイベント!高齢者を対象に定期的に開催して、高齢者が家から外に出る習慣や新たなコミュニティを生むことでまちの活性化に繋げられるんじゃないかと思うんだ。逆に、あんまり古典文学に馴染みの少ない中学生以下も対象にして、古典の魅力を伝えることや子どもと高齢者で交流できる場にするのも良いかもしれないね。
理乃:それぞれが違う考えを持ってても、掛け合わせたら色んな可能性が見えてくるね!
拓真:それに、こうやってアイディアを出し合って何かを生み出すことってすごく価値がある気がするし、なにより楽しいね!
最終的には『古典』と『まちづくり』を掛け合わせたイベントを目指すとして、今はまずイベントの経験を積んでみたいな!例えば、小学生に向けて古典の面白さを理乃が教えるとか、単純に古典の学習支援として高校生を指導するイベントだって良さそう。俺はイベントを企画する実践ができるし、理乃は古典を教えるスキルアップと、人に伝える経験ができるよね!
理乃::すごい!やってみたい!これからの学生企画として考えてみようよ(笑)『にらヤン』でそういったアイディアを掛け合わせて何かを生み出していくコミュニティがつくれたら良いなー!
拓真:そうだね!3人で頑張っていこう!
文学に親しみ、国語で学んだことを将来に繋げる〜取材を終えて〜
「人生を豊かにする国語」を次世代に伝えたいという将来の夢に向けて、現在、大学で「文学の魅力を探求する」と同時に、『にらヤン』を通してさらに学びを広げようと行動している理乃さん。高校の時には接点が少なく人柄を知る機会がありませんでしたが、取材の中で感じた国語や文学に対する熱く真っすぐな気持ちや、韮崎への特別な思いを通じて理乃さんの人となりを知る機会となりました。
私、長田拓真も、今回初めて取材・執筆する立場に立ってみて、これからも、その人の新たな一面や夢に対する熱い思いから刺激を受けたり、新たに知る世界や価値観から学びを得たりすることを楽しみに、『にらヤン』で活動していきたいと思いが大きくなりました!
余談ですが、前回の記事で紹介させていただきました、私が参加するNPO法人敷島棚田等農耕文化保存協会が挑戦するクラウドファンディングが見事達成されましたので、ここでご報告させていただきます。ご協力ありがとうございました。
最後に、現在は大学生3人で編集作業をしていますが、韮崎への思いがある人、執筆活動に興味がある人、「学生としてこういう企画をやってみたいな」という構想がある人……、どんな風にでもいいので、この企画に関心を持ってくださった方は、是非お気軽にご連絡ください。カメラマンおよびライターも随時募集しています!「にらヤンステーション!」をみんなで作っていきましょう!
次回は、韮崎高校時代にハエの研究で「文部科学大臣賞」を受賞したことで知られる平田匠君の ”今”を追っていきます…次回もお楽しみに!