韮崎高校科学部で日本一になった彼が、大学生になってチャレンジしていることとは?『にらヤンステーション!』vol.4 平田匠

こんにちは!学生編集部の高村大夢です。

韮崎から離れた地で活躍する同世代を学生編集部が取材しお届けしていこうと10月にスタートしたこの企画『にらヤンステーション!』。今回からついに、学生編集部以外の人を取材していきたいと思います!

第4回目は、平田匠君を取材しました!(今回の記事は高村大夢が担当させていただきます!)

【平田匠(ひらた たくみ)】

東京都杉並区生まれ、山梨県北杜市育ち。韮崎高校文理科を卒業した後、慶応義塾大学環境情報学部に在籍。学生編集部の3人と同級生。
高校時代に科学部に所属し、全国総合文化祭で文部科学大臣賞を受賞。青少年育成プラザミアキスで活動した経験がある。
大学では渡辺研究室に所属し、ハエを用いて『代謝系』の研究を行っている。サークル活動で、ミュージカルの公演に取り組む。

今回の記事では、高校時代にハエの研究で日本一になった平田匠君が、どのような研究に取り組み、将来をどのように考えているかをインタビューした様子をお届けします。さらに、力を入れて活動しているミュージカルサークルについても沢山話してもらいました。まずは、平田君が高校時代に取り組んだ研究について迫っていきます!

日本一に選ばれた研究 ー活性酸素とアポトーシスー

大夢:韮崎高校で科学部に入ったきっかけは何だったの?

平田:文理科を受験した理由も同じになるんだけど、中学時代から理科が好きで、韮崎高校に入ったらSSHの活動をやりたいと思っていたんだ。SSHは「スーパーサイエンスハイスクール」の略で、文部科学省に指定された高校で先進的な理数教育を実施するというものだよね。理科を勉強する時間が増えるし研究費が多くなるから、さまざな研究にチャレンジできるというのがメリットなんだ。

大夢:そうか、文理科と科学部に入ればSSHの活動の機会が一番多くなるもんね。科学部ではどんな研究をしてたの?

平田:「ハエに青色LEDライトを当てると死ぬ」という先行研究があって、その理由を解明する研究をしていたよ。

大夢:理由は解明できたの?

平田:うん!

大夢:初心者にも分かるように優しく説明してほしいです!(笑)

平田:研究で得たデータから、青色光を当てたハエが死ぬのは、「活性酸素」という物質ができることが原因ではないかという仮説ができたんだ。

大夢:すいません!活性酸素ってなんですか(笑)

平田:活性酸素は細胞を傷つける物質で、さまざな病気の原因になるものなんだ。活性酸素によって細胞が死んでしまうんだよ。

大夢:青色光を当てると有害な物質ができるんだね。

平田:それをもとに調査を進めると、ハエの体内で「アポトーシス」が起きていることがわかったんだ。アポトーシスはプログラム細胞死を引き起こす現象のことで、例えばオタマジャクシがカエルになる時に尻尾が無くなるのもアポトーシスが原因。「尻尾を無くす」とプログラムされている一部の細胞が、オタマジャクシが成長する過程で細胞死するんだ。ハエに青色光を当てた場合にも、このような一連の流れが起こることの解明が新しい発見だったんだ。

母校の大先輩でノーベル賞受賞者の大村智先生との一枚

大夢:すごく分かりやすかった!この研究は、日常のどんなことに役立つの?

平田:青色光が人体に与える影響とかかな。このメカニズムが分かれば、色々な対策を考えることができると思うんだ。もし高校時代、この研究をもう少し進められていたら、どうしたら活性酸素を無くせるかなどに迫っていきたかったね。

大夢:自分たちの身近なことにも大きく関わっているんだね!

ハエを使った別のテーマの研究 ーALAとはー

大夢:大学でも研究を続けているの?

平田:続けているよ。高校とはテーマは変わったけどね。

大夢:どんなテーマになったの?

平田:代謝系の研究室に入って、健康寿命を延ばすことについて研究しているんだ。健康寿命っていうのは、病気にならずに健康で生きていられる時間のことだよ!この研究室ではマウスを使って実験をしているんだけど、自分はそれをハエに置き換えてやっている。具体的にはALAという物質を調査しているんだ。

大夢:ALAってなんですか(笑)

平田:ALAは『健康物質』と言われていて、サプリメントなどに含まれているよ。食べると体内のミトコンドリアが元気になるんだ。ミトコンドリアはエネルギーを生み出す器官だから、元気になると働きが活性化するからね。

大夢:ミトコンドリアとか久しぶりに聞いたわ(笑)分かりやすかったです(笑)

平田:マウスはALAを取り入れると、寿命が延びたりストレスが減ったりするんだけど、ハエではどうなるのかっていうところを解明したいんだ。

研究の概要(研究スライドより抜粋)

大夢:これは、日常生活のどんな部分に影響を与えるの?

平田:多くの生物に対してこの研究が進むと、ALAの信頼が上がって、ALAが使われる製品が増えると思うんだ。もっと健康でいられるようになる製品も生まれるかもしれない。ALAを取り入れたサプリメント以外にも、もっと色々なものに利用されて欲しいね。

大夢:平田の研究で多くの人がより健康になったらすごいことだな…。

ミュージカルに挑戦! ーリラックスと充実感ー

大夢:サークルは何をやっているの?

平田:ミュージカルサークルで活動しているよ。

大夢:平田がミュージカルをやっているというイメージがあんまりないけど、なんでミュージカルサークルに入ったの?

平田:小さいころから演劇が好きだったんだ。演じることで他の自分になれたり、その役の心情に触れられることがおもしろそうだなって思ってた。人生の中でやってみたいと思っていて、大学でその機会があったからチャレンジしようって思ったんだ。演劇サークルの公演も見たんだけど、いま所属しているミュージカルサークルの公演の方が面白かったからミュージカルを選んで活動しているって感じかな。

大夢:前に話したとき、サークル活動も研究と同じように大切にしているって話していたけど、どんな理由があるの?

平田:この活動は自分にとって、リラックスできるし頑張ろうと思える活動なんだ。研究や勉強はやりがいがあるけど、ずっとやってるとやっぱり疲れるから、そんな時にミュージカルの活動をすると楽しくてリラックスできるんだよね。やっているとすごく充実感があるんだ。

新人公演の様子。主演を務めた

大夢:一石二鳥の活動だね。反対に、大変なこともあったりするの?

平田:あるよ。学生だけで運営しているから、考えなければならないことも多くて、ぶつかることも多々あるんだ。でも、そこを乗り越えて公演を成功させたときの達成感はすごくあるね。あとは、練習が多く単純に忙しいことかな。
その反面、サークルのメンバーとは毎日のように一緒にいて、かけがえのない友人になったよ。みんな、公演が終わると公演ロスになっているね。

大夢:すごく仲がいいサークルなんだね!

平田:そうだよ!ぜひ、みんなに公演を見に来てほしいね。

新しい道の模索 ー学生起業にチャレンジ⁉︎ー

大夢:学生時代に関わってきた研究を続けて、将来も研究職に就くの?

平田:以前までは研究職に就きたい思いが強かったけど、今は弱まっているな。

大夢:どうして?

平田:一番の理由は、日本の研究職に期待できないからかな。現状として、研究費が少なくなっていること、給料も不遇であること、ストレスが多い労働環境であることがあるんだ。もしやるとしたら、新興国に行ってやりたいなと思ってる。新興国は多くの研究費が出るからね。でも、そのためには日本で結果を出すことが必要だし語学の壁もあるから難しいなと感じてる。

大夢:そうなんだ。逆にやってみたいなってことはある?

平田:起業してみたいと今は思っているよ。自分の性格的に、人の下で働き続けるってどうなんだろうって以前から思っていて、それなら起業も選択肢の一つだと考えている。可能であれば、学生のうちから動き出したいね!4年生には起業できているように頑張りたいな。

大夢:事業としてはどんなことを考えているの?

平田:どの分野でやっていこうかは勉強中だけど、今始めるなら性教育の分野でやってみたいかな。日本の性教育は特に課題に感じていて、具体的には、若者の性知識が不足していること、学ぶ手段がないことが挙げられるね。これらの課題を解決するために、お悩み相談ができるウェブページを運営したいと考えてる。

大夢:どんなきっかけで性教育の分野にチャレンジしようと思ったの?

平田:ミュージカルサークルで出会った友人と、学生起業をしてみたいという話をしたのがきっかけかな。その時に、性教育の分野は課題も多いと感じて社会からのニーズがあるのではないかということになったんだ。

大夢:どうやって収益を出すか考えたりする??

平田:気軽に利用してもらいたいから、利用者からの使用料ではなくて広告料を収益のメインに考えているよ。そうしていけるように、利用する人を最大限増やす工夫をしていければなとは思っている。あとは、教育者向けに作った記事などを有料で配信して利益にしていきたいね。

大夢:その仕組みだと気軽に利用できそうだね。教育者もターゲットにしているのが面白いと思った!

平田:社会全体の流れとして性教育の分野により注目が集まれば、必要なお金がこの分野に流れる仕組みができて、事業として課題解決を目指せると思っているよ。これの方が研究よりやってみたい気持ちが強いな。

新しい道の模索 ー科学をより身近にするためにー

平田:あと、もうひとつやってみたいことがあるんだ。

大夢:どんなこと?

平田:科学を若者にもっと広めたいというか、もっと身近な存在にしていける活動をしたいな。中高生向けに、ミアキスの「科学に特化したバージョン」みたいな場所をつくれればいいなと思っているよ。ミアキスは、学校や家とは違う第三の居場所だと思っていて、そういう場所で科学を学べたら、身近に感じれるのではないかと思うんだ。自分自身も高校時代にミアキスで有意義な時間を過ごして、貴重な場所だと実感しているよ。

ミアキスで開かれたレゴのワークショップ 将来の夢について語り合った

大夢:こちらは、ミアキスをモデルにして、非営利組織のイメージ?

平田:そうだね。ミアキスのように気軽に利用できるようにしたいな。さっきのウェブページ運営は広告費などで収益を上げるモデルが考えられるけど、こういう事業は非営利の方が向いているのではないかと思ってる。居場所づくりと科学を身近にすることの両方をかけ合わせて面白いものを作りたいね。

大夢:「中高生に向けて」というのには何か理由がある?

平田:小学生にも身近に感じてほしいとは思うんだけど、科学の「楽しいのその先にある面白い」を感じてほしいと考えているんだ。小学生で習う理科の知識だけではなかなか面白いまでいけないと感じていて、中高生をメインでやろうかなと思ってるんだ。

大夢:しっかりと考えた上での判断なんだね。

平田:科学が、サッカーや野球くらい身近になってほしい。そういう存在になっていければ、世界を変えられる日本人がもっと増えていくと思う!そこに携わっていきたいね。

大夢:企業と非営利組織を両方経営できたら、すごいかっこいい思う!

その際には、ぜひファンドレイジング手伝わせてください!(笑)

平田:頑張ります!

動き出した「にらヤン」と新しい仲間 ー取材を終えてー

今回の取材では、高校時代に日本一を受賞した研究のすごさを改めて感じ、大学時代も研究を続けながらさまざまなことにチャレンジしていることを知って、同級生として強い刺激になりました。取材を終え話してみると、高校時代に科学部と兼部して活動していた写真や、授業で取り組んでいるウェブデザインの実践の機会を探していることを知りました。にらヤンで一緒にやろうと誘ってみたところ、平田が、にらヤンにカメラマンやウェブデザインで関わっていくことになりました!今後がさらに楽しみです!。これからも、この活動を通して多くの同世代を巻き込んでいきたいです。ちなみに今回の記事も平田がレイアウトしました!

来年3月には平田が所属するミュージカルサークルの大きな公演があるそうなので、お時間ある方はぜひ足を運んでいただけたらと思います。近くなりましたら詳細をアップしたいと思いますので、チェックしてください!

最後に、これまで大学生3人で編集作業をしていましたが、今回、平田が新しく加わってくれました!経験や得意なスキルを活かして活動してみたい人、韮崎への思いがある人、執筆活動に興味がある人、「学生としてこういう企画をやってみたいな」という構想がある人……、どんな風にでもいいので、この企画に関心を持ってくださった方は、是非お気軽にご連絡ください。カメラマンおよびライターも随時募集しています!「にらヤンステーション!」をみんなで作っていきましょう!

次回は、コーヒーとホスピタリティに興味を持っている堀内雄太くんです!お楽しみに