こんにちは!学生編集部の長田拓真です。
昨年10月にスタートしたこの企画『にらヤンステーション!』。これまでに平田匠君と堀内雄太君が仲間に加わってくれました。これからも仲間が増え、『にらヤン』の可能性が広がることを想像するとわくわくします!
さて、第6回目は、山本哲央君を取材しました!
【山本哲央(やまもとてつお)】
山梨県甲斐市出身。韮崎高校を卒業後、中央大学経済学部国際経済学科に進学。高校時代に自転車競技を始め、わずか2年で高校日本一の快挙を成し遂げたことから、「最速の帰宅部」「リアル弱虫ペダル」などと呼ばれる。
現在は中央大学自転車競技部に所属し、「チャレンジロードレースU23」「インカレ個人パーシュート」優勝や、国際大会出場などの成績を収める。将来は自転車競技最大の大会『世界選手権自転車競技大会ロードレース』に出場し、15位以内を目標とする。
今回の記事では、高校時代に自転車競技で日本一に輝いた山本哲央君に行ったインタビューの様子をお届けします。自転車競技の原点である高校時代、大学での活動、将来の目標などについて、同級生ならではの視点から深堀りしていこうと思います!
はじめに、哲央君の自転車競技の原点に迫っていきたいと思います。
山本哲央と自転車との出会い~定期代13万円の節約が「リアル弱虫ペダル」を作り上げた!?
拓真:よろしく!まずは高校の頃の話を聞きたいんだけど、哲央はなんで自転車競技を始めたの?
哲央:よろしく~!自宅から韮崎高校までの通学定期代を計算したら3年間で13万円だったから、9万円のロード用自転車を買って通学することに決めたよ。それが、自転車との出会いで、どんどんのめり込んでいったよ!
拓真:はじめは定期代13万円を浮かすためだったんだ!?俺も哲央と同じ甲斐市出身で、自宅から高校までは10km以上離れていたけど、自転車通学なんて考えたことなかったな(笑)そこから自転車競技を本格的に始めたのはいつから?
哲央:高校1年生の5月に知り合いに誘われて他校の自転車競技部の合同練習会に参加したのがきっかけかな。
拓真:初めて練習会に参加して、何か感じたことはあった?
哲央:思っていたよりも自分が速くて、“これいけんじゃね”って感じたよ(笑)
拓真:なるほど!練習会に参加して自分の思わぬ才能に気が付いたのがきっかけってことだね(笑)
自転車競技を始めて2年で高校日本一~自由な練習スタイルと「最速の帰宅部」の裏話~
拓真:韮崎高校の自転車部は、哲央が一人で立ち上げたんだよね?
哲央:そうだよ!高校2年の秋に、正式に自転車部を立ち上げたよ。
拓真:普段はどんな練習をやっていたの?
哲央:土日は他校の合同練習に参加できたけど、部員は一人だけだったから、平日は一人で練習していたよ。基本的に平日は60~70kmの山道を走ってたかな。
拓真:60~70km!?想像できないんだけど、具体的にどんなコースを走ってた?
哲央:よく走っていたコースは、自宅から昇仙峡のあたりにある金櫻神社までのコースかな。金櫻神社は標高870mあるし、コース上に信号機があまりなくて良い練習になったな。
拓真:それは、きつそうだな!信号機が自転車競技の練習にどう影響してくるの?
哲央:そうだね、赤信号でいちいち停まってるとスピードが出しづらいし、タイムも計りづらいんだよね。信号機が少ない方が、より実践的な練習ができるってことかな!山道が多くて信号機も少ないのは、練習環境として恵まれていたと思うな。
拓真:なるほど!練習のメニューも自分で考えていたの?
哲央:そうだよ、自分でネットで調べてメニューを考えてたよ。山梨は練習環境に困らないから、自分で好きにコースやメニューを考えることにも練習の楽しさがあったよ。
拓真:山梨特有の恵まれた練習環境と自由な練習スタイルが、楽しく自転車競技を続けられた理由なんだね!それから、高校2年の3月にあった「全国高校選抜自転車競技大会ロードレース」で日本一になったんだよね。当時はどんな心境だった?
哲央:やっぱり、嬉しかったし、興奮したかな。高校の先生を含めてサポートしてくれた人が沢山いたから、感謝の気持ちも大きいな。
拓真:あの時はメディアで取り上げられて、ネットでは『最速の帰宅部』とか呼ばれてたよね(笑)
哲央:そうそう。でも、メディアでは「最速の帰宅部」として取り上げられてたけど、ちょっと違うんだよ。高校2年生の秋まではたしかに帰宅部だった。学校の成績がよろしくなくて、正式に部として認められなかったんだよね(笑)
でも、日本一になった3月の時点には、晴れて正式に自転車部として認められた後だったから、帰宅部ではなくなってたんだよ!
拓真:それは知らなかった!そんな裏話があったなんて…(笑)それでも始めて2年で日本一になるのは本当にすごい!
車と衝突事故でインハイの4日前に復帰~高校生活の思い出~
拓真:たしか高校3年生の時、登校中に事故起こしてなかった?
哲央:あったね~。登校中に車と衝突して3週間くらい入院したよ(笑)
拓真:3週間も入院してたのか!知らなかった。
哲央:そうなんだよ、リハビリがほんとしんどかった!なんとかインターハイの4日前に自転車競技に復帰したんだけど、結果40位くらいだったよ。
拓真:高3のインハイは、ぶっつけ本番だったんだね。しかも、日本一獲った後だったからプレッシャーもあったんじゃない?
哲央:そうそう、優勝候補みたいな感じだったからね(笑)でも、当時は日本一になってどこか満足している部分があったから、高校3年のインハイで惨敗してまだまだ弱いなって気づけたよ。今振り返れば、自分を見つめ直す良いきっかけになったな!
拓真:事故に遭ってインハイは惨敗したけど、哲央にとって自分を見つめ直すきっかけになったんだね!
高校時代のこぼれ話
拓真:哲央とは1年生の頃同じクラスだったよね。どうしても聞きたいことがあるんだけど…強歩大会のスタート地(北杜市長坂町)まで自転車で来て、走り終わった後も自転車に乗って帰宅したのは衝撃だったな(笑)あの時を振り返ってどう?
※韮崎高校の強歩大会は、北杜市長坂町をスタート地点に、男子は長野県諏訪湖までの41,1kmを走る。
哲央:自分でも何故自転車でスタート会場まで行こうとしたのかわからない(笑)振り返ると、帰りの道は登りが多くて本当にしんどかったよ。確実に馬鹿だった(笑)
拓真:普通はみんな電車だもんね。それに、哲央の自宅からスタート会場まで20kmはあるから、41km走って、40km自転車なんて一人だけトライアスロンだね(笑)
哲央:自転車の大会よりきつかったよ。
「リアル弱虫ペダル」世界へ進出!~大学では国際大会に出場~
拓真:次は、大学生活を中心に聞きたいな!大学での練習はどう?
哲央:大学の練習は正直言って、高校の時よりキツイ(笑)
拓真:どのくらい練習するの?
哲央:練習は基本週6日で、朝練は5:30~8:30、夜練は17:30~20:00までやってるよ。
拓真:それはキツイな~(笑)すごい練習量だね。この前、哲央が大会で優勝した記事を読んだんだけど、それだけの練習をしていると聞いて納得だよ。あれは、何の大会なのかな?
哲央:『チャレンジロードレースU23』のことかな。インカレでも3種目中2種目で優勝したよ!
拓真:さすがの活躍ぶりだね!高校時代は年代別の日本代表に選出されていたと思うけど、現在も代表には入ってるの?
哲央:大学でも日本代表に選出されて、ドイツ・カナダ・フランスで開催された国際大会に出場したよ!
拓真:ほんとにすごいなぁ。
哲央:でも、まだまだ世界では自分の力は通用しないと感じた結果だったよ。
拓真:やっぱり世界の壁は高いんだね。そういった国際大会でどの位の順位を目標にしているのかな?
哲央:短期的な目標としては、年代別の世界選手権で15~20位になってコンスタントに結果と経験を積み重ねていくことかな。
拓真:期待しています!
日本代表の気になる私生活!!~得意料理?勉強?彼女?~
拓真:ストイックな競技生活の裏側についても聞いてみたいんだけど、東京に出てからの一人暮らしはどう?
哲央:部員と寮生活を送っているよ。ちゃんと自炊もしてる!
拓真:寮生活なのか!選手にとって食事って大事だと思うけど、どんなものを作っているの?
哲央:味付けとか気にせず、ガソリンだと思ってるから、得意料理は、パスタにえごま油かけて塩コショウ、かな(笑)
拓真:え?それ、寮のご飯の方が栄養あるんじゃないの?(笑)
哲央:ちゃんと、野菜は食べてるから大丈夫!基本は温野菜だけど(笑)
拓真:めっちゃ面白いです(笑)生活のなかで大変だなって思うことある?
哲央:あるよ!体調管理が一番大変!合宿や国際大会で海外に行くことが多いから、時差ぼけや気候が劇的に変化すると体調の管理が難しいな。
拓真:なるほど!体調を崩さないように気を付けてることってある?
哲央:体調管理のために、コンディショニング栄養食のゼリーを飲んでるよ!
拓真:国際大会への出場が増えれば、体調管理はほんとに大事だもんね!次は勉強のことについて聞きたいな。部活と大学の勉強の両立はどうかな?
哲央:ん~とね、勉強はギリ(笑)
拓真:厳しい練習をやりながら勉強の両立は簡単ではないよね。大学生のうちに勉強面で頑張りたいなって思っていることはある?
哲央:あるよ!英語をはじめ、語学はしっかりと学んでおきたいな。やっぱり国際大会に出場すると、コミュニケーションをとるのに英語は重要だと感じるよ。
拓真:国際大会に出場するからこそ感じたことなんだね!恋愛についても聞いてみようかな(笑)大学生活で恋愛に関してはどうですか?
哲央:全くない(笑)ということで、彼女募集中です(笑)
目指すは世界選手権!!~明確に思い描く未来~
拓真:次は将来の進路について聞いていきます!自転車競技の職業っていうと、たとえば競輪なんかがイメージしやすいんだけど、そもそも他にどんな進路があるの?
哲央:プロになったら基本的には、短距離の『競輪』または中長距離の『ロードレース』のどちらかの種目を選択することになるかな。
拓真:哲央はどちらに進みたいと考えてる?
哲央:ロードレースをやりたい!
拓真:それはなんで?
哲央:自分が自転車競技の中で中長距離を得意にしているのもあるけど、将来は『世界選手権』のロードレース部門に出場することを目標としているからかな。
拓真:それが哲央の目標なんだね!世界選手権って、どんな大会なの?
哲央:正確には、『世界選手権自転車競技大会』と呼ばれる大会のことで、その名の通り自転車競技最大の大会だよ。その中にロードレース部門があって、特に俺は個人タイムトライアルって種目に国の代表選手として出場したい!
拓真:その世界選手権で、具体的に何位を狙いたい?あと、世界選手権のロードレース部門・タイムトライアルにこだわる理由はなにかある?
哲央:目標は15位以内を獲ること!昔から日本人選手はロードレース部門のタイムトライアルが弱いって言われてるんだよ。だから、日本人としてタイムトライアルでランク上位に入りたいって思いが強いかな!
拓真:すごい目標だね!現時点で感じてる世界で戦うために哲央自身に足りないものと、必要なことはなにかある?
哲央:国際大会に出場できる機会が多くなって、海外の選手に比べて筋持久力と心肺機能が全然足りてないなと感じてる。
拓真:総合的にスタミナが足りないってことかな?
哲央:そうだね。国際大会に出るまでは、自分のストロングポイントはスタミナだと思っていたんだけど、実際に国際大会に出て、このままだと世界には通用しないって感じたよ。前回のにらヤンに登場した平田匠くんに、俺の体内のミトコンドリアを活性化させてもらいたい(笑)これは真面目に科学的アプローチ欲しい。
拓真:なるほど!平田には伝えておきます(笑)
リアル弱虫ペダル、山梨から世界へ!~山梨で夢を追いかける~
拓真:哲央は将来的に山梨に帰ってきたい気持ちはある?
哲央:将来は山梨に帰りたいと考えてるよ!
拓真:それは、自転車競技を引退してから?
哲央:いや、むしろ大学卒業後から山梨に戻って自転車競技に打ち込みたいかな。山道が多くて信号機が少ない山梨の環境は、やっぱり自転車競技の練習にとって最適な環境なんだよね。
拓真:高校時代についての時の話でも練習環境についての話があったけど、東京と比べてそんなに違うと感じる?
哲央:うん、山梨の方が全然良いよ!同じ2時間の練習時間でも練習の質としてかなり違うと思う。東京だとどうしても信号に引っかかるからその都度休憩できちゃうけど、山梨だと信号なくて、休憩なんてできない(笑)
拓真:より厳しい環境に身を置いて成長するために山梨に帰りたいんだね!
哲央:そうだね。韮崎高校に進学していなかったら自転車競技に出会いすらしなかっただろうし、山梨で自転車を始めたからこそ、選手としてここまで成長できたと思ってる。だから、自分の自転車競技の原点である山梨で夢を追いかけたい。
拓真:山梨から世界へ!だね。哲央と友だちであることを誇りに思います!忙しいところ今日はありがとう。これからも頑張って!
哲央:こちらこそ!頑張ります!
拓真:今のうちに、サインもお願いします(笑)
元・最速の帰宅部の挑戦は続く~取材を終えて~
山本哲央とネットで検索すると、『最速の帰宅部』『リアル弱虫ペダル』などといった多くの記事が見つかります。なので今回の取材では、すでにある哲央君の記事では触れていないような、彼の人柄や思いを同級生ならではの視点で聞き出すことを意識しました。取材を通して、改めて彼のすごさを知るとともに、高校時代の思い出話や大学の話、そして描く未来を聞くことができ、私自身が楽しく記事を書くことができました。漫画の主人公のような結果を出してきた哲央君ですが、彼の挑戦はまだまだ続きます。山梨から世界へ!これからも哲央君を応援していきたいと思います。
経験や得意なスキルを活かして活動してみたい人、韮崎への思いがある人、執筆活動に興味がある人、「学生としてこういう企画をやってみたいな」という構想がある人……、どんな風にでもいいので、この企画に関心を持ってくださった方は、是非お気軽にご連絡ください。カメラマンおよびライターも随時募集しています!「にらヤンステーション!」をみんなで作っていきましょう!