海外で見つけた“好き”を凝縮!乳製品・卵未使用「誰でも安心して入れるカフェを目指して」|DAUGHTER(ドーター)

今年5月、本町通りの井筒屋醤油の右隣に、「Daughter(ドーター)」というカフェがOPENした。

カウンターにずらりと並ぶ自家製のパンやケーキなどの菓子類は、乳製品や卵を使わずに焼き上げられており、アレルギー反応が出にくいスペルト小麦が使われたメニューも豊富だ。

店内には、オーナーご夫妻が海外留学や旅を通して見つけた「好き」が至るところに溢れていて、足を運ぶ度に新たな刺激や発見が得られるような気がする。

今回のよりみちでは、韮崎のまちに新たな文化の風を吹き入れるカフェ「ドーター」を訪ねてきた。

”誰でも安心して入れるお店"を日本にも

オーナーの山邊夫妻ドーターを営んでいるのは、埼玉から移住してきた山邊知佑(ともすけ)さんと迪佳(みちか)さんご夫妻。カメラを向けるとさっと肩を組む可愛らしいお2人は、ニュージーランドで出会ったのだそう。

知佑さん:「僕らは留学中にニュージーランドで出会って、帰国後に結婚しました。出会った頃から、いつか自分たちでお店をやりたいねと話していたので、新婚旅行でカナダやポートランドなどのさまざまな国を半年間かけて回って、色々なお店を見てきたんです。」

迪佳さん:「私たちが訪ねた海外のカフェは、必ずアレルギーのある人向けのメニューやビーガンメニューが用意されていました。私は幼い頃から乳製品や小麦のアレルギーがあったので、外食するときに食べられるものが少なくて困っていて。どんな人でも安心して入ることのできるお店を日本にもつくりたいと思ったことがお店を始めた一番の理由です。」

素材の旨味がたっぷり詰まった、身体に優しいメニュー

カウンターにパンが並んでいる様子知佑さん:「パンは、甘めのハニーオーツトーストと、酸っぱさの後に乳酸っぽい旨味が広がるサワードゥの2種類をベースに展開しています。サワードゥは、酸っぱくて苦手という方もいるので、まずはハニーオーツトーストから試してみるのがおすすめです。」

菓子類の写真
迪佳さん:「パンやお菓子は、卵や乳製品を使わずに焼き上げています。甘いスイーツのような番人受けする味ではないですが、素材の味が楽しめて身体にも優しいので、リピートしてくれるお客さんが多いです。」

窪田:「ポップに書いてある、“スペルト小麦”って何ですか?」

迪佳さん:「品種改良がされていない、古代種の小麦です。スペルト小麦は、*小麦に比べてアレルギー反応が出にくいんです。」

窪田:「アレルギーがある人も安心して入れるお店があるのっていいですね。」

(*但し、グルテンフリーではありませんので、小麦アレルギーをお持ちの方は購入前にご自身で一度ご確認ください)

「これ、オーガニックだったんだ」でちょうどいい

ポトフの写真

窪田:「ドーターさんのパンは、スープのお供にぴったりですよね。今日いただいているこのポトフとの相性も抜群です!野菜も甘みたっぷりで、すごく美味しいです。」

知佑さん:「ありがとうございます。野菜は、韮崎や北杜で生産されている有機野菜を使っています。PEI COFFEEの慎平さんのお姉さんが明野でつくっている野菜もすごくおいしくて、たくさん使わせてもらっています。」

窪田:「じつは、こんなに食材にこだわっているカフェだということを今日まで知りませんでした...。」

有機グラノーラ

お土産に大人気な有機グラノーラ

知佑さん:「僕らは、食べておいしいと感じてもらって、後から『これオーガニック食品だったんだ』って知ってもらうくらいがちょうどいいのかなと思っています。」

迪佳さん:「全面に押し出してしまうと、『オーガニックじゃないとだめ』っていうメッセージに受け取られてしまいそうで。私たちはそう思っているわけではなくて、自分たちが普段好んで食べているものを、日常の延長でお客さんにお届けしているような感覚なんです。」

ピーナッツバタートースト

知佑さん:「例えば、このピーナッツバタートーストの、有機ピーナッツバターとフレッシュバナナ、ベーツシロップの組み合わせは、僕らも大好きで。美味しいし、身体にも優しいから、みんなにも食べてみて欲しい。ただそれだけのことなんですよ。」

お2人の『好き』を詰め込んだ、居心地の良い店内

窪田:「メニューだけでなく、お店のインテリアにもこだわりを感じます。」

迪佳さん:「そうですね。例えば少し奥に入ったエントランスの形は、『ビクトリアスタイル』と言って、まだ日本には少ない形です。海外で見て素敵だなと思って、絶対にエントランスはこうしたいと思っていたんです。」

エントランスの写真

知佑さん:「奥のカウンターの高さも115cmくらいあって、日本の平均よりだいぶ高めです。設計士さんには、本当にこんなに高くしていいの?と心配されたんですけど、この高さがお客さんと会話するにも物を置いたりするにもちょうどいいと僕らは感じていて。」

カウンター越しに会話する様子

迪佳さん:「棚に並べているビンは、向こうでオーガニックの農園に何週間か滞在したときに見た光景をイメージしています。プラスチックではなくビンを使う文化と、色々な物をごちゃっと置くスタイルが素敵だなと感じて真似してみました。」

ビンが棚に並んでいる写真

知佑さん:「海外のカフェは、ローカルのアーティストの絵を飾っているお店が多かったのも印象的でした。僕らも普段から友人の絵を飾っていて、今もちょうど知り合いのアーティストの展示をやっています。こういう機会もこれからどんどん増やしていきたいなと思っています。」

展示の様子

窪田:「インテリアにもお2人が海外で見て『いいな』と思ったものが、たくさん詰まっているんですね。」

迪佳さん:「まだまだ未完成なんですけどね。カフェのオペレーションに慣れて余裕が出てきたら、また徐々に手を加えて行きたいと思います。」

辿り着いた韮崎のまち

まちのコンパクトさがお気に入り

窪田:「そもそも、なぜ韮崎でお店を始めようと思ったんですか?」

知佑さん:「じつは韮崎を紹介してくれたのは、甲府のAKITO COFFEEのアキトさんだったんです。自然の近い街に移住してカフェをやりたいっていう相談をしたら、『韮崎もいいところだよ』って。それで実際に来てみたら、まちのコンパクトさが理想的だなと感じました。」

AKITO COFFEEの豆

お店で出しているコーヒーはAKITO COFFEEの豆を使用

迪佳さん:「移住と言っても、森の中みたいなところではなく、まちなかでお店をやりたいという想いがあったので、韮崎の駅周辺はちょうどいいなって。その日は、アメリカヤ辺りを回って、IROHA CRAFTの千葉さんや、PEI COFFEEの谷口夫妻、バンブーコアの清水さんとも話したんですけど、みんな『韮崎は悪いところがないよね』って言っていて。」

PEIさんご夫妻と4人で並んだ写真

噂をしていたらたまたまPEIさんご夫妻が登場!

知佑さん:「移住相談窓口で新規事業補助金空き店舗改修補助金のことも教えてもらって、このまちならスムーズにお店が始められそうだなって思いました。まちの人の紹介で店舗もスムーズに決まったので、本当にありがたかったです。」

DIYはまちの人と一緒に

窪田:「お店の改装をまちの人が手伝っている様子も、よくSNSにあがっていましたよね?」

知佑さん:「補強などの基礎工事は大工さんにお願いして、あとは自分たちでDIYしたんですけど、この築100年以上の物件を改装するには、とても自分たちの力だけでは足りなくて。特にコビルトのまぶさんには、すごくお世話になりました。」

改装中のまぶさんの姿

左に写っているのがコビルトのまぶさん

知佑さん:「まぶさんに天井の解体の相談をしたら、持っている工具を全部貸してくれて、必要な道具の手配までしてくれたんです。まぶさんにやり方を教わりながら、Miacisに来ている学生やまちの人と一緒に作業をしたりして、楽しかったし本当に助かりました。韮崎はアメリカヤにDIYセンターもあるし、まちに店舗づくりについて相談できる人がいるのって心強いですよね。」

自分たちのペースに合った、心地よい暮らし

窪田:「お店を始めてもうすぐ半年になりますが、やってみてどうですか?」


知佑さん:「移住の相談をしたときにアキトさんが、『山梨は、大きく儲けるのは難しいけど、生きていくには困らない場所だよ』と言っていたんですけど、本当にそうだなって。生活に必要な最低限のお金は好きなことで稼ぎながら、家族や友だちと過ごす時間を大切にしたいと思っている僕たちには、ぴったりの環境です。」

迪佳さん:「韮崎は家賃などの生活コストが低い上に1年間は補助金も出るので、稼ぐことに必死にならずに、自分たちのペースでやっていけるのが心地よいですね。有機野菜の価格も東京や埼玉と比べてかなり低いので、気軽に購入できるのも嬉しいです。」

窪田:「自分が求める暮らし方に合わせて住む場所を選ぶのって大事ですね。」

迪佳さん:「こっちに来てから山登りも始めて、やっぱり自然が近い暮らしはいいなって思います。大好きな温泉にすぐに行けるのも嬉しいです。」

山登りの写真

知佑さん:「それに山梨は、物事が繋がっていくスピードが早いなって感じます。誰かが何かやろうって言えば、別の誰かがすぐに『こうしようよ』って反応を返して、そこに色々な人が加わって、あっという間に形になっていく。」

迪佳さん:「お店を始めたばかりの私たちにもイベントのお誘いがあったりして、参加するとそこでまた色々な人と出会えるので面白いです。」

知佑さん:「僕たちは『移住するぞ!』と意気込んで来たわけではなくて、『行ってみようか』という感覚で韮崎に来たのですが、こっちに来てよかったなと思います。」

よりみちのかえりみち

壁に貼られたショップカードの数々お店の壁には、2人がこれまで回ったお店のショップカードがびっしりと貼られていた。

実際にさまざまな場所に足を運び、多様な文化に触れてきた2人は、暮らしにまつわる一つ一つのもの・ことを、自分たちで丁寧に選択してきたのだと思った。

だからこそ、2人は常に自然体であり、自分たちがいいと思うものを、押し付けることなく、多くの人に届けられるのだろう。

ニュージーランドで出会った2人が、巡り巡って辿り着いた韮崎のまちで始めた小さなお店。これからここで、どのような景色が見られるのか楽しみだ。

Daughterの基本情報

所在地: 山梨県韮崎市本町2-9-25
営業時間: 10:00~18:00(L.O.17:30)
定休日: 月曜日、火曜日
Instagram:daughter.cafe