2022年11月15日、本町通りにグランドオープンしたワインバー&ダイニング「koti(コチ)」は、ナチュラルワインと炭火焼をメインとしたビストロ料理を楽しめるお店。
昼はスープとドリンクが付いたセットメニュー、夜はアラカルトメニューが用意されており、こだわりの食材を丁寧に調理した料理はどれも絶品でワインにぴったりです。
kotiで料理をつくっているのは、昨年までParkside Parlor IRUで料理長をしていた清水亮介さん。独立後にご両親と始めたこのお店には、家族の夢や心温まるストーリーがたくさん詰まっていました。
目次
kotiを営む清水さん親子
kotiオーナーシェフの清水亮介さんは、昨年10月に惜しまれながら閉店したカフェ「Parkside Parlor IRU」で料理長を務めていました。一緒にお店に立っているご両親は、地元野菜を使ったヴィーガン料理を提供するカフェ「おちゃのじかん」を長年営んできた由美さん・俊弘さんご夫妻です。
どちらの店舗も閉店してしまいましたが、kotiにはそれぞれのお店の良さがしっかりと受け継がれていて、メニューを開くと新しさと懐かしさの両方が感じられます。今回の取材では、メニューに隠されている裏話も含めてご紹介していきます。
ヴィーガンOK!ワインと相性抜群でどんな人にも優しいメニュー
kotiでは、肉や野菜の炭火焼きをはじめ、パスタ、キッシュ、パテ・ド・カンパーニュなど、イタリアンやフレンチをベースとした豊富なメニューを揃えています。そのどれもが、ワインに合うかどうかという基準で考案されているそうです。
メニュー表を見ると、いくつもの料理名の横に「V」の字が書かれています。これはヴィーガン対応メニューであるという印。IRUやおちゃのじかんがそうであったように、どんな人でも来ることができるお店づくりを目指して、このようなメニューを用意しているそうです。
また、料理には化学調味料・食品添加物が入っているものを一切使用していないので、健康志向の方も安心して食べることができます。
「余計なものを入れずに、良い食材を丁寧に調理する。そういう外から見えないところにも、しっかりこだわりを持ってお客様に提供していきたい」と亮介さんは語ります。
手打ちパスタは清水家の味!おすすめは「生ハムとレモンクリームのパスタ」
kotiに行ったらぜひ味わっていただきたいのが、手打ちパスタを使ったメニュー。
昼限定の「生ハムとレモンクリームのパスタ」は、パスタをしっかり味わえるよう、シンプルなレモンクリームソースで味付けされています。
平打ちのパスタにソースがしっかりと絡んだところに、スペイン産の生ハム「ハモンセラーノ」のコクと塩っ気が良いアクセントとなり、たまらないおいしさです。
アレルギー反応の出づらいスペルト小麦でつくられた手打ちパスタは、コシがあるけれど重たくなく、噛むほどに麺本来の味が楽しめます。
そんなパスタに詰まった「家族の思い出」を亮介さんは話してくれました。
亮介さん:「このメニューを編み出した後にふと、父がよく家で手打ちパスタをつくってくれていたことを思い出したんです。すっかり忘れていたのですが、いつの間にか両親から影響を受けているものなんだなと思いました。この麺も、朝の早い時間から父と2人でせっせと手打ちしているので、いわば清水家の味ですね」
そんな家族の温かなエピソードが詰まった手打ちパスタは絶品なので、ぜひ一度味わってみてください。
素材本来の味を感じられる「野菜の炭火焼」
「野菜の炭火焼」は、5種類の旬野菜を炭火で焼いて盛り合わせたもの。県内農家や道の駅から仕入れる新鮮な野菜のおいしさをダイレクトに楽しむことができます。
食べてみると、素材を活かした深い味わいにびっくり。そのままでもおいしいですが、添えられたロメスコソースを付けて味変も楽しめちゃいます。
ちなみにこのソースは、IRUのタコライスにかけていたソースに少しアレンジを加えたもの。表面を焼いたパプリカとトマトを使っているため少しスモーキーな味わいで、炭火焼メニューに合わせるのにぴったりです。
赤ワインにぴったり!食感の違いが楽しい「パテ・ド・カンパーニュ」
「パテ・ド・カンパーニュ」はレバー、鴨、豚、背脂を丁寧に処理して、数種類のお酒でマリネした後ミンチにし、ピスタチオ、ドライフルーツを混ぜて型で焼き固めたもの。
濃厚なレバーにさまざまな食材のアクセントが加わっていることで、味や食感の違いを楽しみながら食べ進めることができます。添えられたマスタードやピクルスを一緒に食べてもおいしく、しっかりボリューム感がありますが飽きることなく食べられます。
おちゃのじかんの人気スイーツ「生チョコケーキ」
スイーツやパンは、おちゃのじかんを営んでいた時から変わらず由美さんの担当。
ずっしり感がたまらない「生チョコケーキ」は、とっても濃厚でコーヒーによく合います。国産小麦・天然酵母で焼き上げる自家製パンも素朴な味わいで、スープやパスタソースに付けて食べるのにぴったり。
おちゃのじかんのファンだった方は、ここでまた由美さんのスイーツやパンを味わうことができるので嬉しいですね。
環境にも身体にも配慮したナチュラルワインで大人のひとときを
kotiで提供しているワインは、北杜市に店舗を構えるWine Shop Soif.から仕入れる世界のナチュラルワイン。
自然の恵みへの敬意と生産者のこだわりや想いが込められ造られたナチュラルワインは、軽やかでおいしい上に、添加剤を使わない(または極力減らす)ことから、頭痛や二日酔いになりにくいと言われています。
kotiの料理とおいしいナチュラルワインを合わせれば、上質な大人の時間を堪能することができます。ボトルはもちろん、グラスワインも赤白2種類ずつ用意されているので、いろいろなワインを飲み比べできるのも嬉しいところです。
ワインの他にも、ギネスやミッケラーのビール、ジン、ウイスキー、ラムなども揃っているので、何を飲もうか悩むことはあっても、お酒に困ることは無いでしょう。
また、お酒を飲まない方への気遣いも忘れません。ノンアルコールカクテルや自家製シロップジュースをはじめソフトドリンクの種類も豊富なので、みんなで楽しくテーブルを囲うことができます。
親子の夢が合わさって実現!koti誕生のエピソード
「いつかは自分のお店を!」亮介さんの思い描いていた夢
それぞれ別のお店で料理を提供していた亮介さんとご両親は、なぜ一緒にお店を始めることになったのでしょうか。そのきっかけや今の想いを聞いてみました。
亮介さん:「IRUで働いていたときから、いつかは独立して自分のお店をやりたいと思っていました。昔からイタリアンが好きだったので、イタリアンとお酒を合わせて提供できるお店をやることが夢だったんです。
ただ、人手や資金のことを考えるとまだ先になるだろうなと思い、ぼんやりと思い描いていた程度でした。そんなときに、母の夢を聞く機会がたまたま訪れて…
まさかこんなに早くお店が出せるとは思っていなかったので、ありがとうという気持ちでいっぱいです」
昔読んだ小説の主人公に憧れて…?気になる由美さんの夢とは
由美さん:「一昨年のDaughterさんのクリスマスイベントで、Soif.さんがワインを振る舞っていた日があって、亮介に誘われて一緒に行きました。
ワインを飲みながら店内の様子を眺めていたら、10年ほど前に読んだ江國香織さんの『左岸』という小説がふと頭に浮かびました。右葉曲折あってパリに移り住んだ女性が40歳くらいからワインバーを始めるお話で、読んだときに『かっこいいな。私もいつかできたらいいな』と感じたことを思い出したんです。
亮介に『そういえば私、ワインバーをやりたいっていう夢があったんだ』と話したら、『自分もお店をやりたいから一緒にやろうよ』と言ってくれて。その場ですごく話が盛り上がって、帰って主人に話したら賛成してくれたので、本当にお店を始めることになりました。
言葉に出すと実現しちゃうんだなって思いましたね。夢を実現させてもらって感謝しております」
「新しいことに挑戦してみよう」2人の夢を聞いて俊弘さんが感じたこと
俊弘さん:「2人からワインバーの話を聞いてすぐに『それは楽しそうだな』と思いました。おちゃのじかんも大好きな場所でしたが、長年やってきたので新しいことにチャレンジしたいという気持ちが自分の中に芽生えていたのだと思います。
実を言うと僕はお酒が飲めないのですが、バーカウンターでお客さんと話をするのは好きみたいです。親子でお店をやっているからか客層も幅広く、新しい環境で毎日楽しい時間を過ごさせてもらっています」
kotiは家族3人の想いやタイミングが奇跡のように重なり合って誕生したお店だったのです。それぞれの言葉や表情からは、お店を始められたことへの喜びや感謝の気持ちが溢れ出ていて、こちらまで温かな気持ちになりました。
仲間がたくさんいる韮崎のまちのこれからを楽しみに
お店を始めることを決めてからは、すぐに物件探しをスタート。運良く大幅な改装の要らない居抜き物件に出会うことができたため、物件を決めてからはあっという間にお店のオープンを迎えました。
「韮崎はお店を始めやすかった」と亮介さんは韮崎のコミュニティの心地よさを話してくれました。
亮介さん:「韮崎は飲食店同士の仲が良いなって思います。ライバルではなく仲間として、みんなで盛り上げていこうという空気なので、お店を始めやすいのが良いですよね。
同世代の仲間もたくさんいるので、新メニューを試食し合ったり、休憩中やお店が終わった後にいろいろなお店に足を運んだりできるのも楽しいです。まだまだ新しいお店ができるという噂も耳にしますし、これから韮崎のまちで過ごしていく日々が楽しみです」
未来を想像し笑顔を浮かべながら、亮介さんは最後に今後の目標を語ってくれました。
亮介さん:「kotiには良いお客さんが付いてくれていると思うので、足を運び続けてもらえるよう、これからも家族で協力して魅力的なお店づくりをしていきたいと思います。そして、ここに来たついでに別のお店にも寄ってもらうというような流れをつくり、この辺りを歩く人をもっと増やしていけるようにがんばります!」
よりみちのかえりみち
『koti』という店名は、フィンランド語で『家』という意味なのだそう。このお店になんてぴったりな名前なのでしょうか。
kotiにいると、子連れのご家族、デートを楽しむカップル、1人でカウンター席に座って料理とワインを堪能する人など、さまざまなお客さんの姿を目にします。
料理やワインのおいしさに加えて、素敵なご家族が温かく出迎えてくれるという安心感が、多くの人の心をつかんでいるのだと、取材を通して強く感じました。
これからもたくさん韮崎のまちを歩いて、kotiを含む大好きな飲食店を応援していこう。そんな風に思った帰り道でした。
「koti」の基本情報
- 所在地:韮崎市本町2-10-8
- 営業時間:11時30分〜14時(L.O.13時30分)、17時〜22時(L.O.21時30分)
- TEL:0551-45-8223
- 定休日:水曜日、木曜日
- 駐車場:韮崎市商工会議所前コインパーキング90分無料
- Instagram:koti_bar.a.vin