韮崎市内から県道17号(別名:七里岩ライン)を長坂方面に向かって車を走らせると、その道は七里岩の頂きへと続いていく。
アクセルを踏み込み長い坂道を登りきった先に見えるのは、美しく雄大な自然と、蒸気機関車がシンボルの韮崎中央公園。スポーツを楽しむ人の息遣いや、アスレチックやミニSLではしゃぐ子どもたちの賑やかな声がこだまする...。
そこから通りを挟んで向かいにあるのが、今回の目的地となる「公園とパン」だ。
あそびパンや野菜を使ったパンでお馴染みの「野菜パンの店ド・ドウ(以下、ド・ドウ)」が移転オープンしたベーカリーカフェで、この春、開業1周年を迎えた。
公園とパンの店長・飯沼志保さんにお話を伺うと、お客様のことを第一に考え、地域との繋がりを大切にしている優しい想いで溢れていた。
目次
健康と美を意識したお店づくり
安心安全!色とりどりの野菜パンがお出迎え
左:店長の飯沼志保さん 右:スタッフのおりょうさん
「いらっしゃいませ〜」明るい声と素敵な笑顔で出迎えてくれたのは、店長の飯沼志保さんと、スタッフのおりょうさん。
大きな窓から燦々と光が降り注ぐ店内は開放感があり、まるで陽だまりの中にいるよう。ゆったりと寛げるイートインスペースもあり、ほっと一息つきながらカフェタイムを堪能できる。
焼き立ての味を再現できるよう、トースターが用意されているのも嬉しいポイントだ。
店内にずらりと並ぶ色とりどりの野菜パンの生地は、着色料・保存料・香料などを使用していない。
野菜本来の旨味と色を生かした優しい味わいで栄養も豊富。野菜が苦手なお子さんでもペロリと平らげてしまうんだとか。
おやつに食べたい菓子パンに、小腹満たしにぴったりの惣菜パンと種類も豊富でついつい目移りしてしまう。そんな個性豊かなパン一つ一つには、韮崎の味が詰まっているという。
飯沼さん:メニューが大きく変わることはありませんが、お客様にできるだけ四季を楽しんでいただきたくて、旬を取り入れた商品を提供するよう心がけています。
例えば、惣菜パンの具材は地元で取れた旬の野菜を、スコーンやパウンドケーキなどの焼き菓子もすべて手作りで、季節の果物をなるべく使っています。
旅の疲れを癒す休憩スポットにも
この日は快晴ということもあり、ロードバイクツーリングを楽しむ御一行様もご来店。
本当にあの急登を自転車で駆け登ってきたのだろうか...。
「俺、あんバターにする!」「どうしよう!悩む〜」わいわいお喋りを楽しみながら好みの子を探す賑やかな声が店内に響き渡っていた。
運動をすると糖分補給したくなるもの。中には、ソフトクリームを注文するお客様の姿も発見した。
なんと、このお店のソフトクリームは自分で巻くスタイル。
「上手にできるかな?」注文したダンディなお客様も、スタッフに手ほどきを受けて、いざ挑戦。少年のような無邪気な笑顔を浮かべながら巻く姿に、ほっこりする。
会計を済ませた御一行は、オープンテラスでしばし談笑を楽しみ、颯爽とバイクに跨がり次なる目的地へと旅立っていった。
きっと、彼ら彼女らのように、ふらっと立ち寄り公園とパンでの記憶を韮崎の思い出として刻んでいる人も多いことだろう。
迷ったらコレ!人気の商品をご紹介
オープン当初から変わらず並んでいる定番商品、季節に応じて登場する旬を楽しめるパン...。どれも魅力的で、どの子を連れて帰ろうか悩んでしまう。
そこで、飯沼さんに人気の商品BEST3とおすすめを聞いてみた。
3位:お野菜を練り込んだカラフル「クリームパン」
2位:旬の野菜を取り入れた「お惣菜パン」
公園の前ということもあるのか、小淵沢へのお出かけがてらに立ち寄られるのか、旅のお供として購入される方が多い印象です。
1位:お野菜を練り込んだ「3色丸パン」
かわいくて、体にも優しい。ちょっとした惣菜を挟むのにぴったりの商品です。
飯沼さんのおすすめ「サンドウィッチ&バーガー」
ハンバーグはお店のパン粉を使用しているので特におすすめです。
もうすぐキャベツの季節になるので楽しみにしていてください。
お野菜のボリューム満点「サラダセット」
せっかくなので、筆者もおすすめのサンドウィッチとこだわりのサラダが楽しめる「お得なセットメニュー」を注文した。
ジャンジャンタレたっぷりのから揚げドックは、ピリ辛と甘辛のバランスが良く薬味の風味がフワッと広がり、食べる手が止まらない。
セットのサラダは、これでもかと言わんばかりに旬の野菜がたっぷり。ハムやキノコなど素材の味を生かしたトッピングとドレッシングがいいアクセントになっていて大満足の一品。
野菜好きにはたまらない、身も心も満たされるランチセットだ。
公園とパンが目指す「パン屋のカタチ」
「健康と美」をテーマに
「韮崎での生活は日々発見の連続です」と柔らかい笑顔で話す店長の飯沼さんは、上野原市の出身で、結婚を機に韮崎へと移り住んだという。
飯沼さん自身もド・ドウのファンの1人であり、足繁くお店に通っていた。
飯沼さん:ド・ドゥには定期的に通っていて、その頃からオーナー夫妻(野田敬一さん・ひろみさん)の雰囲気や人柄にすごく惹かれて。
子育てがひと段落し、ちょうどお仕事を探しているタイミングで、この店の求人を見つけて、「ここしかない!絶対ここで働きたい!」って飛びついたのがきっかけでした(笑)。
アルバイトとして入社しパン作りを基礎から学び1年が経った頃、オーナーのひろみさんから「公園とパンの店長をしてみない?」と驚きの相談をされる。
しかし、飯沼さんに迷いはなかった。二つ返事で引き受けたという。
飯沼さん:目の前に公園があるからか、それとも店頭に並ぶパンが添加物を使わない体に優しい商品だからか。コンセプトは自然と”健康と美を意識したお店”になりました。
スタッフと「これがあったら便利だよね」「こんな商品があったらいいよね」と、日々楽しみながらアイデアを出し合っています。
大人も子どもも安心できる空間を
店長に任命されてからは、楽しくも目まぐるしい日々だった。「子ども大人も安心できる場所に」繰り返しミーティングを重ね、スタッフの熱い想いを少しずつ形にしていったという。
飯沼さん:月に数回、名物のあそびパンを楽しめるワークショップを開いているので、お子様連れのお客様がとっても多いです。ここにきた人が笑顔でいっぱいになれたらいい。「家族が安心して利用できるお店」でありたいと常に考えています。
お店には、子どもが楽しめそうなおもちゃもたくさん置いています。前の店舗が残してくれた授乳室やベビーベットもあるので、小さなお子さま連れのご家族も楽しい時間を過ごしてもらえたら嬉しいです。
景品は常連さんが作ったかわいいマグネット
なるほど、改めて店内を見渡すとベビーベット完備のお手洗いに授乳室、気軽に自由に遊べるおもちゃでいっぱいの棚と、至る所にパパ・ママが安心して過ごせる工夫が用意されている。
取材日はちょうど日曜日。タイミングよく”あそびパン”のワークショップに参加する親子に出会うことができた。
こねて、ちぎって、くっつけて”思い思いの形にしていく過程が粘土遊びのようで、小さいお子さんから大人まで幅広い年齢層の人が、オリジナルのパン作りを楽しむことができる。
特別に出来上がったあそびパンを見せていただくと、アンパンマン、バイキンマン、うさぎさん...かわいらしいモチーフがずらりと並んでいた。
「この子は粘土遊びが好きなので、楽しんでくれるかな?と思って。参加してよかったです」と、体験していたお母さん。
確かに、その場には子どもも大人も安心して過ごせる時間が流れていた。
パン作りを通して人と地域の繋がりを紡ぐ
「みんなに役割を」スタッフの個性を生かす
「久しぶり、おりょうちゃん元気だった?」「今日は天気がいいからお出かけしてきたの」取材中にも様々な人が来店する。
その和やかな雰囲気から、お客様はパンだけではなくスタッフとのコミュニケーションも楽しみに、この店を訪れている様子が伺えた。
また、ここで働くスタッフは、一人ひとりに「役割(担当)」が与えられていて、それぞれの個性を生かした活動も運営に取り入れているという。
飯沼さん:オーナーのひろみさんは「みんなに役割を」と、スタッフの個性を大切にする方。あそびパンの担当は美術部門、SNSでの発信を担当してする広報部門、新商品を考える商品開発部門…。
一人ひとりに担当が与えられています。スタッフも役割を持つことで、モチベーションアップに繋がり、日々楽しみながらお仕事しています。
飯沼さんも店長と兼任でヘルスケア部門を担当し、月に数回ストレッチや筋トレなど体を動かすワークショップを企画・運営している。きっかけは、長く趣味で続けているエアロビクスだった。
飯沼さん:「健康」をテーマにしていることもあり、エアロビクスに興味を持ってくださるお客様も多くて。不定期で、店の前の空間を使って、自己免疫力を高めて健康な体を作れるような簡単なワークショップを開催しています。
体を美しく保ちたい人もいれば、怪我予防のために健康的な体を作りたい人もいる。体の悩みは人それぞれ違うと思うので、幅広い年齢の方が楽しく参加できるようなプログラムを考えることが楽しみの1つになっています。
誰もがほっとする地域の居場所に
体に優しいパンと個性豊かなスタッフが出迎えてくれる公園とパン。1周年を迎えた今、改めて今後はどんなお店にしていきたのだろうか。
飯沼さん:店内にランチボックスを入れられるようなカゴを設置して、ついでに公園で遊べるおもちゃやレジャーシートも貸し出しちゃう。そんな手ぶらで公園に遊びに行けるような「ピクニックセット」を用意したいと、スタッフの間で盛り上がっています。
他にも、パンづくりの教室やピザづくり体験など、パン屋さんならではのワークショップも展開していきたいです。叶えたいアイデアは、まだまだたくさんあるので、少しずつ形にしてお客様の笑顔に繋がるお店を作っていきたいです。
飯沼さんの紡ぐ言葉の中には、お客様のことを第一に考え、地域との繋がりを大切にしている優しい想いで溢れていた。
飯沼さん:ふらっと立ち寄り他愛のない話を交わして笑い合えるような、フレンドリーなお店を目指しています。公園に遊びに来たついでや、ちょっと暇ができたから来ちゃった〜と軽いノリで遊びに来てもらえたら嬉しいです。
終始笑顔を絶やさず、優しい言葉を紡ぎながら想いを語ってくれた飯沼さん。短い取材の中であったが、彼女の柔らかな人柄に触れ心がじんわり温かくなった。
中央公園へ遊びに行くついでに、清里方面へお出かけする際に、ぜひ立ち寄ってみてはいかがだろうか。
編集後記
帰りがけにお土産としていくつか気になる子を購入。しばらく食卓が賑やかになりそうで思わず笑みが溢れた。
「泣いてる音楽に、笑っている音楽。子どもたちの話し声が聞こえてくると安心しますね。厨房で、子どもたちの声をBGMに仕込みをしている瞬間がとても幸せです」
ふと、取材中に飯沼さんが嬉しそうに話してくれた言葉を思い出し、心が熱くなる。そして、近い内にまたあの笑顔に会いたいと思った。
「今度は誰と一緒にこの店を訪れようか」そんなことを思い浮かべながら、購入したあんバターを口いっぱいに頬張ると、心も体も幸せで満たされていた。
”今日もいい日になりそうだ!”ウキウキな気持ちを抱えて、次なる目的地へと車を走らせる。
「公園とパン」基本情報
- 所在地:〒407-0003 山梨県韮崎市藤井町北下條2105-2
- 営業時間:10:00~16:30
- 定休日:火曜日、水曜日、年末年始
- お問い合わせ:080-3476-3060
- Instagram :https://www.instagram.com/koentopan/
- Facebook:https://ja-jp.facebook.com/pandodou/
- HP:https://www.dodou-pan.com/
お野菜が嫌いなお子様がおいしいと喜んで食べてるシーンを頻繁に見かけます。クリームも毎日手作りしています。
個人的には、ほうれん草をおすすめしたいです。