「お客様の求める最高品質を追求する」品質に妥協しない食品添加物メーカーが72年間貫いてきた信念|ツルヤ化成

顧客の要求する最高品質の製品を創出し、利益のために品質を犠牲にすることはしない

創業以来こだわりと信念を持って貫いてきた製造方針を、常務の齋藤嗣樹さんはあらためて力強く口にします。

ニラサキのシゴト第10回は、龍岡町・御勅使工業団地に位置し、甘味料など食品添加物の製造を手掛ける「ツルヤ化成工業株式会社」。
顧客や消費者の立場に立って食の安全・安心を最優先に考えてきた会社の理念や、それを実践する若手社員の方の様子をうかがいました。
また、実際に工場内を見学しながら、「徹底した衛生管理」が体現されている現場の様子や、「意図的に人間の手を取り入れることで発揮しているツルヤ化成独自の強み」についてもお聞きしてきました。

会社概要
  • 事業内容:甘味料を中心とした食品添加物等の製造及び販売
  • 設立:1949年
  • 所在地:韮崎市龍岡町下條南割995-400(本社工場) ほか、神奈川県相模原市にも
  • 従業員数:本社工場には約90名が所属(パート職員等含む)

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会社について

ツルヤ化成工業ってどんな会社?

常務の齋藤嗣樹さんにお話をお伺いしました。

————本日はよろしくお願いします。はじめに、ツルヤ化成さんがどのような会社か教えてください。

齋藤さん
ツルヤ化成工業株式会社は、1949年、甘味料の製造を行うメーカーとして東京都目黒区に設立されました。現在では甘味料だけでなく品質保持剤などの食品添加物を幅広く手掛けていますが、当時は甘味料のみを製造していました。
当時は戦後間もない時期でしたので、砂糖の代わりに甘みをつける食材として、甘味料は重宝していたそうです。

———今と違って砂糖が希少で高価な時代だったからですね。

そうですね。実際に、当社の製品は時代の需要に合っていて、事業はかなり順調だったようです。
その際、砂糖の何百倍もの甘みがあってサジ加減が難しかった甘味料を「薄める」ということを行ったのですが、それを世界で初めて製品化したのが当社なのだと聞いています。

———世界で初めて!難しい技術だったんですね。

薄める際、甘味料と何かをただ混ぜ合わせれば良いということではなく、どこをすくっても、成分がムラなく品質が均一である必要があります。強い甘みを持つ甘味料は、コンマ数パーセントの違いが大きな変化を与えますからね。均一に薄めることは、言葉で言うよりも難しいことなんですよね。

———なるほど。今ではさまざまな製品に広く活用されている甘味料ですが、改良の歴史があったんですね。

その後、1988年に現在の韮崎市竜岡町に本社・本社工場を移転し、今にいたります。
現在は、甘味料の製造を中心に、品質保持剤、健康食品、調味料などさまざまな製品を手掛けています。裏方で活躍する食品添加物は、ふだんなかなか目にされないかと思いますが、当社の製品が使用されている食品の中には、みなさんがよく知っているものも多いのではないでしょうか。

ツルヤ化成の製品が使用されている食品。みなさんが食べたこと、飲んだことのあるものはいくつありますか?

多様な要望に柔軟に応えられる『少量多品種』製造が強み

———ツルヤ化成工業の特徴や、独自の強みを教えてください。

齋藤さん
当社の製造の特徴は、『少量多品種』という言葉で言い表せるかと思います。
通常、甘味料・食品添加物は複数の成分を組み合わせてつくられますが、現在、当社で組み合わせられる製品は、データ上2000ほど。メーカーが品質保証をして販売している甘味料の種類で言えば、日本で一番多くの種類を揃えています。さまざまな種類の製品を少量からでも製造できることが当社の強みではないでしょうか。

———2000種類も!さらにそれを組み合わせて作るとなると、膨大なレシピになりますね。

さらに、製造を依頼してくるお客様の要望に合わせて製品の新開発を引き受けることもあるので、実際のレシピはそれ以上多いと言えるでしょうね。

———お客さんの要望にこまやかに応えられるところが御社の強みというわけですね。

そうですね。一般的に、大手メーカーなどは、大規模な製造ラインを組んだり、機械を入れて自動化を進めたりして、「一度に早く大量につくる」ということを効率化しています。反対に、お客さん一人ひとりの要望に対して臨機応変に製造を変える『少量多品種』は難しいかもしれませんね。

当社では、その臨機応変さ、お客様の要望への柔軟さを活かせるよう、製造工程すべてを機械化・自動化するのではなく、「人間が作業する部分」を意図的に取り入れるようにしています。幅広い種類の製品を細やかに調整しながら製造していくやり方では、機械やロボットが行うより人間の方がまだまだ圧倒的に早く、しかも正確だからです。

———製造の方法や種類によっては、すべて機械化してしまえば良いということではないんですね。

そうですね。もちろん機械化にもメリットはありますし、当社でも『ロボット委員会』などを設置して、効率化の推進を積極的に取り入れることもしています。
しかし、わたしたちが一番に追求していることは、「お客様の要望に最大限近づけた製品を、最高品質でつくること」なんです。
だからこそ、一様に機械化を進めるのではなく、人間の手作業の優れている部分も取り入れながら、お客様に幅広い選択肢を提案できる『少量多品種』という製造方法を続けてきているんです。

———お客さんの要望に応えることに、とことんこだわられているんですね。機械化するメリット、あえて人の手を入れるメリットの両方をうまく組み合わせられていることが、ツルヤ化成の強みと言えそうですね。

創業以来貫いてきた理念「利益のために品質を犠牲にすることはしない」

———ツルヤ化成が大切にされていることはどんなことですか?

齋藤さん
1949年の創業以来、わたしたちが大切に考え続けてきたことが、
当社は顧客の要求する最高品質の製品を創出し、利益のために品質を犠牲にすることはしない
という製造方針です。

品質に関しては、

  1. そもそも異常が起こらないための厳密な『製造管理』
  2. 製品に対する精密な『社内検査』
  3. 第三者の専門機関による『外部検査と認証』

という工程を必ずクリアするようにしています。

———ホームページを拝見していても、特に「食品の安全性」や「お客様の安心」を大切に考えられている会社だなという印象でした。

わたしたちはお客様が口に入れる食品を作る会社ですから、たとえば一つの異物混入によって、会社全体の信頼をすべて失ってしまうということもありえます。「クレームゼロ」という合言葉は、現場に立たれる製造スタッフの方とも強く共有しています。
第三者の検査機関による検査を受けるためには月に数百万円という大きなコストがかかっていますが、お客様に私たちの製品を安心して使ってもらうために、品質保証にはこだわりを貫いています。

———「利益のために品質を犠牲にすることはしない」という製造方針が、まさに体現されていますね。

工場内にある「理化学検査室」「微生物検査室」「機器分析室」では、品質、包装袋のキズ、細菌など、さまざまな角度から精密な検査が行われている

部外者からの持ち込みや製造現場での異常を防止・監視するために、常時モニタリング

―――これだけ徹底した安全管理がされていると安心ですね。

齋藤さん
「安全につくること」はもちろんですが、さらに「安心」という視点も考える必要があります。
つまり、わたしたち自身が安全に製造するだけでなく、その製造現場を見ていないお客様にも「この製品は安全だ」と安心してもらう必要があるということです。

———なるほど。安心してもらうためには具体的にどのようなことが必要なのでしょうか?

『安全の裏付け』が誰からでも見える状態にすることが大事だと考えています。
当社の工場は、2002年には農水省が定める『JAS』*の認定を、2004年には日本食品添加物協会が定める『食添GMP』*の認定を受け、以降、年に1回検査機関による監査を受けて更新しています。昨年は、社内の検査・分析機器を厚労省が設定する『HACCP』*に沿うものに更新しました。

(*参考)
  • JAS・・・農林水産省が食品の取り扱い方法などについて定めた評価基準
  • 食添GMP・・・日本食品添加物協会が、食品添加物の製造や品質の管理について定めたガイドライン
  • HACCP(ハサップ)・・・製造における危害要因の分析と回避のために定められている国際的な衛生管理手法。

たとえば食添GMPでいえば、製造・品質管理の基準などが決められているほか、食品添加物を取り扱う上で必要な研修方法なども細かくガイドラインに定められております。わたしたちもそのガイドラインに従って講師を招き研修を行っておりますし、その記録はすべて保存し、お客様に求められたときには開示できるようにしています。

———安全性を公正な認証によって知ることができるから、お客様はさらに安心ですね。「安全」であるだけでなく「安全だと思えることが大切だ」という話がよく分かりました。

今後について

『ハラール調味料』の開発に挑戦

———70年以上の歴史がある一方で、HPからは、「新しい挑戦をしている企業だな」という印象も受けました。現在挑戦していることや、この先目指している目標があれば教えてください。

齋藤さん
拠点である山梨には今後も貢献していきますが、拠点を増やしたり新開発を通じて新しい顧客層の獲得にも挑戦しているところです。「ハラール」という言葉は、ご存知ですか?

———ハラール・・・?初耳です。

法律で豚を食べることを禁じられているイスラム教徒でも口にできる材料のみで作られた食品をアラビア語で「ハラール(=許された)フード」と呼ぶそうです。いま当社では、豚成分を含まずイスラム教徒が使用できる調味料の開発と、「ハラール認定」工場の設立に挑戦しているところです。

———考えたこともなかったですが、僕たちが当たり前のように使っている食材に不安を感じている人たちもいるんですね。国際的で、多くの人々の暮らしを明るくできそうな挑戦だなと、聞いていてワクワクします。

受け入れてもらえたことへの恩返しを

———韮崎市について考えていることや思いはありますか?

齋藤さん
当社は、経産省が全国各地で選定する『地域未来牽引企業』にも選ばれており、地域が持続、発展していくために貢献したいという思いは常々持っています。

———以前、僕たち河原部社(にらレバを運営するNPO)が開催したキャリア教育イベントの際も、パネリストとしてご協力いただきましたよね。

2019年6月にNPO法人河原部社が開催した『しごと展』。市内の中学2年生に向けて働き方ややりがいをお話ししていただきました

また、私個人で言えば、青年会議所・ロータリークラブや、地域審議委員、商工会など、地域の活動にも積極的に関わるようにしてきました。

———そこにはどういった思いがあったのでしょうか。

私にとっては、地域に対する「恩返し」という気持ちが強いですね。元々県外の企業であった私たちを仲間として受け入れてくれたことに、今もすごく感謝をしています。地域活動への参加や市内の雇用創出という形で恩義を返すことで、韮崎市の持続や発展に今後も貢献できたら嬉しいです。

一緒に働く仲間に求めるのは『設計する力』

———これからも御社が活躍していく上で、「こんな人物に来てほしい」と期待する人物像はありますか?

齋藤さん
私個人としては、「自分の時間や人生を設計できる人」と一緒に働けると嬉しいですね。
当社で働く方々には、会社でしっかり働く時間も大切にしてほしいですが、同時に、プライベートの時間を充実させたり思いっきり楽しむことも大切にしてほしいと考えています。
今やるべき仕事とやりたいことを両立させるためには、「いつまでに、何を、どれだけやるか」を決めて実行できる力、つまり、『設計力』が不可欠なんです。

———自分自身の生き方を、自分で決めるということですね。

そうですね。その『設計力』は、日々の業務という単位で見たときにも重要な能力です。
上司や先輩から受けた仕事に対して、言われたままただ漫然と取り組むのと、「いつまでに、何を、どれだけやればいいのか」と自分で進め方を設計していくのとでは、大きく違ってきますよね。
そうやって、自分自身の時間や生き方を『設計』できる人と仲間として働けたら嬉しいですし、当社の社員が仕事を通じて『設計力』を磨いていくことをサポートしていきたいとも思います。

―――仕事の中で『設計力』を身につけることが、社員さん自らの人生を設計していく力にもつながっていく好循環が素敵ですね!
次に、実際に製造現場で働かれている社員の方からもお話をうかがわせてください。

ツルヤ化成で働く若手社員の様子

若手を代表してインタビューに答えてくださったのは小澤郁省(いくみ)さん。
弱冠24歳ながら、包装フロアの主任として約30名を束ね、現場の指揮や指導にあたられています。

韮崎出身で、東京・茨城で他業界の仕事を経験された後、韮崎に戻ってこられたという小澤さんに、若手社員さんの視点から見るツルヤ化成工業の特色や、地元企業で働く様子について教えていただきました。

30名を統率するフロア主任を担当

―――小澤さんは、ふだんどのような業務をされているんでしょうか?

小澤さん
完成した製品を出荷先に合わせて袋分けする「包装」という工程があるのですが、その「包装」部署の主任として、約30名の作業員の方への指揮や指導を担当しています。

―――24歳という若さで30名もまとめてらっしゃって、素晴らしい活躍ですね!

ありがたいことですね。私は現在入社5年目ですが、一生懸命働いていることに対して、上司や会社がきちんと評価してくれているというは、恵まれた環境だなと思っています。30人という数はほかの部署と比べても特に多いんですが、その分、私自身の働きがいや達成感にもつながっているなと感じます

―――普段から自分の働きをきちんと評価してくれていて、その上で「任せる」と言ってもらえると、一層嬉しいですよね。

作業中の小澤さん。包装工程を行う1階フロアの全体統括をされています

―――日々の業務の中では、どんなことを大切にされていますか?

ツルヤ化成工業が掲げる「利益のために品質を犠牲にしない」という製造方針には、私自身とても共感しており、その遂行を日々目指しています。
具体的には、常務のお話の中にもあったように、「クレームゼロ」を製造現場の合言葉にして、みなさんが口にする食品の中に異物混入などが決して起きないよう、細心の注意を傾けて製造にあたっています

―――頼もしいですね。反対に、責任あるポジションの中で、苦労はありませんか?

そうですね。当社はとてもいい会社だと自負していますが、正直に言えば、それでもやっぱり「仕事をする」という中には、楽しい時間だけではなく、うまくいかなかったり何かトラブルに直面したりと、ストレスや疲れを感じることもたしかにあります。
でも、そんな日は、「地元で働いていて良かった!」と気が付くときでもあるんです。

―――どういう意味でしょうか?

ツルヤ化成工業に勤める前は、茨城の水戸市で通信業の会社に勤めていたのですが、そこでは「何かあったときに気軽に会える人や相談できる人が周りに誰もいない」という思いを感じていました。
その思いが一つのきっかけで、地元山梨に戻ることを考えたんです。

―――地元に戻ってきた後、どのような違いがありましたか?

さきほどのお話したように、気心の知れた昔からの友人や相談できる家族が身近な距離にいるというのは、本当に救われますね。
その日大変なことがあっても、友人や家族と会って楽しんでいるうちに発散されるから、ストレスを溜めこむということはなくなりました。それは地元で働く大きなメリットだなと、実体験から感じていますね。地元に帰ってきてよかったです。

―――素敵なお話が聞けてよかったです。これからも小澤さんが活躍の場を広げていくのがとても楽しみです!

工場内を見学

最後に、製造部の市村裕二さんのご案内の元、工場内を見学させていただきました。

衛生服とキャップを着用の上、粘着ローラーでコロコロ

入室時の手順も一つ一つ丁寧に定められ、衛生管理のためのルールが徹底されています

靴の除菌をした後、エアーシャワーをくぐってから工場内に入室

機械が速く均質につくり、人間が柔軟につくる

材料はエレベータで3階に運ばれ、その後、次の製造工程をたどります。

仕込み、混合、包装、検査の順に整理した製造工程図

材料はエレベータで最上階へ。仕込み→混合→包装→検査の順に工程が進む

材料は、『V型混合機』という機械を使ってぐるぐると混ぜ合わされます。Vの形状に沿って中の材料が動くので、短い時間で、均一に材料を混ぜることができます。

製品ごとの規定回数を混ぜたら、管を伝ってそのまま1階へ

スピーディかつ均質的に作るのが得意な機械を取り入れる一方で、粉の計量や包装作業を行う1階包装室では、作業員の方の「人間の目」「人間の手」が多く取り入れられていました。

失礼を承知で「機械の方が速くないんですか?」と市村さんにお聞きしてみたところ、

種類や量を柔軟に変えて作業するのは、今でも人間のほうが圧倒的に速いんですよね。
おおまかな量をまず人が測って、そのあと機械が精密に調整したり確認したりする。
人間と機械の長所を組み合わせることによって、速くて正確、さらに柔軟に製造することができるんです

と、機械と手作業のそれぞれの長所についてお話しいただきました。

毎日1時間半かけて清掃


見学した夕方4時ごろには、ほとんどの機械が稼働を終えて洗浄中でした。毎日1時間~1時間半ほど時間をかけて、丁寧に清掃・機械洗浄を行っているそうです。
誰ひとり手を抜かず、隅々までピカピカにきれいにしている様子から、徹底した衛生管理・安全意識の意識が製造現場の一人ひとりにも行き渡っていることを、強く感じ取れました。

まとめ

今回は、食品添加物などの製造を手掛ける《ツルヤ化成工業株式会社》を取材しました。

取材を通じてもっとも印象深く感じたことは、「信用性の高さ」です。
「良いものを作る」と目標を立てることは簡単ですが、それを実行すること、実行し続けることは、言葉で言うほどに簡単なことではないはずです。
創業以来72年間、「お客様が求める最高品質」を妥協せず常に第一に追求し続け、信念を貫くために必要なことを一つ一つ着実に積み重ねてきた姿勢に、企業としての信頼性の高さを強く感じました。

また、日々フロア主任として製造現場に立たれている小澤さんが「クレームゼロ」を目標に安全管理を徹底していると話されていたことや、工場内の隅々まで清掃されている従業員の方々の様子から、品質や安全への意識が現場にも行き届いていることを肌で感じました。

甘味料や食品添加物は、身近で使われているものでありながら、あまりよく知らないで口にしているという方も少なくないのではないかと思います。また、どのように製造されているかを目にする機会も少ないものです。

品質に妥協せず、顧客の要望や信用に対して誠実に真摯に向き合うツルヤ化成さんの考え方や製造の様子を実際に見てみたことで、わたしたちが当たり前のように受けられている「食の安全」を支えてくれている企業にあらためて感謝する機会となりました。