韮崎中央公園前に『WORKSPACE TUM』オープン!若者と地域を繋ぐ拠点が誕生したワケ

山梨県道17号・七里岩ラインを北杜方面から韮崎駅に向かって走っていると、韮崎市中央公園の道向かいにガソリンスタンド跡地があるのをご存知でしょうか?

今回取材に伺った、韮崎の若者たちが集い活躍する拠点として話題のシェアワーキングスペース『WORKSPACE TUM(ワークスペース ツム)』はそこにあります。

これまで会員制として、ひっそりと運営していた同施設が、今年1月31日より一般利用者向けに定期的な無料開放が始まりドロップイン制度も導入されました。

にらレバ編集部は、この施設を運営している河原部社の本田美月さんに、施設内をルームツアーをしていただきながら、設立に込めた想いや誕生秘話など、詳しく話を伺いました。

謎多きTUMの内部に潜入!

WORKSPACE TUM(以下、TUM)は、韮崎を中心とした県内で活動している若者はもちろん、これから韮崎で何らかの活動をしていきたいと考えている若者同士を繋げ、自分たちが暮らす街やこれからの未来をより良くするための学びや経験を積み重ねていく場所として誕生しました。

元ガソリンスタンドのガレージをリノベーションしたそうですが、中は一体どうなっているのでしょうか。

本田さん
こんにちは。本日はよろしくお願いします。

爽やかな笑顔で出迎えてくれたのは、TUMプロジェクトリーダーの本田美月さん。ルームツアーをしながらTUMの雰囲気や魅力を紹介していただきました。

▼TUM案内人

本田美月(ほんだ・みづき)
TUMプロジェクトリーダー

甲府生まれ。大学進学で一旦東京に出るものの、在学中に山梨にUターンし、そのまま山梨在住に。河原部社ではニラサキサラニプロジェクトをメインに担当。たまにスタッフとしてMiacisにも顔を出してるほか、コピーライターとして社内のコピーワークも担当中。プライベートでは花とインテリアに心血注いでいます。

 

自然と交流が生まれる「コミュニティスペース」

ーーー本日はよろしくお願いします。早速ですが、オートロックかつ、指紋認証で出入りできるなんてハイテクで驚きました。

本田さん
基本的に、無人運営&会員制を導入しているので、利用者が自由に出入りできるようにしています。

また、月に数回ほどオープンデーとドロップインの日を設けていて、その時はスタッフも常駐しているので一般の方も利用できますよ。

(ピー、ガチャ)どうぞお入りください。

ーーーすごくおしゃれな空間ですね。外観とのギャップに驚きました…。

本田さん
良いですよね。私もすごく気に入っています(笑)。

1階のエリアを私たちは「コミュニティスペース」と呼んでいて、作業をしつつ、利用者同士で気軽に会話を楽しめるようソファやテーブルなどを用意しています。

ーーー食器に白物家電、プリンターや文房具と備品も充実していますね。

本田さん
ここにある備品はすべて自由にご利用いただけます。

コーヒーや紅茶も用意していますので、ぜひ作業の合間にホッと一息ついてください。

4月からは隣の店舗に「公園とパン」さんがオープンするので、ランチや3時のおやつタイムも充実すると思います。

ーーーこの本棚&階段の下にある空間…とても良いですね。利用者同士で争奪戦になりそう…。

本田さん
この空間はすごく人気ですよ!夏場なんて取り合いでした(笑)。隠れ家的な要素があってワクワクしますよね。

次に2階フロアのご案内をするので、ここから足元に気をつけて登ってください。

ーーーあっ、すごい!この本棚は階段にもなっているんですね。

 

作業に集中したい時は2階フロアで

本田さん
2階にあがると、仕事やクリエイティブな作業をしたい人向けの個室ブースや作業スペースがあります。

本田さん
まず、左手に見えるのが個室ブース。半個室のスペースが3つあって、集中して作業したい人におすすめです。

ーーー見た目は狭そうに感じましたが、実際に利用してみると足も伸ばせて、ちょうどいい空間ですね。仕事も捗りそう。

本田さん
奥にある作業スペースは、左右にゆとりのあるテーブルが4席あります。机いっぱいに資料を広げて仕事したい時にも便利です。

窓から差し込む自然光を浴びることができるのも良いところです。

広々と使える作業スペースが4席

ーーー2階の吹き抜けからの眺めも最高ですね。飽きのこない落ち着いた雰囲気でとても居心地がいいです。デザインや内装はどのようして決まったのですか?

本田さん
TUMの空間デザインは、東京を拠点に活躍されているデザイナーさんにお願いしました。

オンラインで打ち合わせを重ねていましたが、実際にこの場所に訪れていただいた時に、「元ガレージらしいインダストリーな雰囲気を残しつつ、ナチュラルな要素もミックスした空間にしましょう」と提案してくださって。

着工前のガレージでデザイナーさんと打ち合わせ

本田さん
そこからイメージが次々に湧いてきて、私たちがやりたいこととデザインが良い方向に固まっていきました。

ーーーどんな点にこだわりましたか?

本田さん
仕事場でありつつも、気兼ねなく集まって会話を楽しみながら人と繋がれる場所にしたいと思ったので、「開放感のある空間」を大切にしました。

個室の数を3つに絞っているのも、1人で黙々と作業をする場所というよりも、みんなとコミュニケーションを取りながら、リラックスして働いてもらいたいからです。

ーーー確かに、ほっと落ち着く憩いの場的な空間ですね。本多さんのお気に入りの場所とかありますか?

本田さん
難しい質問ですね〜(笑)。

気に入っているところは色々とありますが、やっぱり1階のコミュニティスペースかな(?)。

いろいろと試行錯誤をしたエリアなので、思い入れがあるんです。

本田さん
ちなみに、TUMの設計と施工は甲府市にある建築設計事務所「SHOEI」さんにお願いしています。

基本的には自社設計・施工をされているのですが、”施工のみ”という私たちの無理なお願いも快く受けてくださって…。

ーーー先ほど見せていただいてた、イメージデザインそのままですね。よく見ると、ところどころ手作り感があっていいですね。

本田さん
実は、設計図に起こしていく段階で、当初予定していた予算では難しいことが判明しちゃって…。何度も打ち合わせをしていく中で「自分たちでできるところはDIYしてみよう」と言う話になったんです。

ここでもSHOEIさんは、親身になって色々とアドバイスしてくださいました。とても感謝しています。

机と椅子だけ運び込んでミーティング

ーーー(写真を見て)全然違いますね〜。雰囲気も印象もガラッと変わって、すごくいいです。

本田さん
施工が終わったばかりの時は、家具もなくてすっからかん状態だったので、消防点検に来られた方には「本当にこれで完成ですか?」と恐々と聞かれました(笑)。

完成当初のTUM。ここからDIYスタート。

本田さん
私たちも完成した当初は「大丈夫かな?」と不安に思っていたんですけど、少しずつ手を加えて生き、最終的には想像以上の仕上がりになりました。…大変だったな〜(笑)。

ーーー実際にどんなDIYをされたんですか?

本田さん
家具を取り付けたり、壁を塗装したり、木目にワックスを染み込ませて色をつけたり…集まれるメンバーで少しずつ進めていきました。

集まったメンバーで手分けして塗装

本田さん
河原部社のメンバーやMiacisを利用してくれている高校生、TUMのイベントに参加してくれた方など、たくさんの方の力を借りながら完成しました。

自分たちで電球を取り付け中

ーーーみんなで作り上げたTUM。愛着も湧いて、感動もひとしおなのでは?

本田さん
まずは形になってよかった〜っと、ホッとしてます。

本当にいろんな方に支えられて、助けられながらここまでこれたので感謝しかありません。

本田さん
このネオンサインはデザイナーさんの提案なんですが…

TUMのシンボルマークになっていて、利用者さんから「いいね」と言われることも多いんです。

自分たちだけで考えていたら、きっとこの発想も浮かばなかったと思います。

ーーー確かに、あるとないで雰囲気がガラッと変わりますね。海外のおしゃれなバーみたいな…。

本田さん
そうなんです!TUMは夜の時間帯の利用もいいんです。

電気を落として間接照明だけにすると雰囲気が出るので、仕事や作業をするところというよりかは、コミュニケーションの場になります。

本田さん
備品として焚き火台も用意しているので、キャンプファイヤーしながら、語ったり、食事したりするのも、かなりおすすめです。

ーーーアフターファイブも捗りますね。

本田さん
夜の時間にみんなで集まって、わいわいガヤガヤできる雰囲気の良いコミュニティスペースを探している、という方にも活用してもらいたいです。

焚き火を囲んでチルタイム

本田さん
焚き火を眺めて、TUMで談笑しながら、軽くご飯つまむ…すごく盛り上がりますよ。

ワールドカップの時なんて利用者同士で声をかけあって朝まで観戦していたようです(笑)。

もちろん、こういう使い方もウェルカムです。

 

TUMに込めた願いと韮崎の未来

ルームツアーを終えたところで、どのような経緯でTUMのプロジェクトがスタートしたのか、どんな想いを持って活動されているのか、本田さんに改めてお話を伺いました。

ーーーまずはTUMが誕生したきっかけについて教えてください。

本田さん
河原部社は、20・30代のメンバーで構成された若者主体の組織なんですが、スタッフの共通認識として「韮崎含めその周辺に住む若者同士の横のつながりがあまりないね〜」と感じていて。

個人ベースで活動している人はたくさんいるけど、それぞれが繋がったらもっとこのまちのためにできることが増えるよね…じゃあ、その繋がりができるコミュニティを作っちゃおう!というのがきっかけでした。

ーーーそうして誕生したのがTUMなんですね。場所やオフラインにこだわった理由はありますか?

本田さん
やっぱり、直接会うことが大切だと思っていて。私たちがオフラインにこだわったのも「その空間だから生まれる何かが絶対ある」と感じているからです。

それならまずは拠点が必要だよねと、自然な流れでTUMの構想が浮かんできました。

TUMの屋上からの景色

ーーーここで出会った人たちの中から、何かが生まれたらいいな〜という目論見が?

本田さん
どんどん生まれてほしいですね。

私も何気ない会話の中から新しいアイデアが浮かんだりするので、TUMでの交流を通して「何かを誰かと一緒にやりたい」という気持ちが芽生えやすいのでは?と感じています。

ここに集まる人たちは、仕事の内容も持っているスキルも様々です。そこに、お互いの足りないところを補えるような仲間ができたら心強いはずです。

ーーー遊ぶ友達作りではなくて、助け合える仲間と出会えるということですね。

本田さん
まさに、そうです。何か新しいことに挑戦したい時、誰かの手を借りたくなった時...気軽に声を掛け合って助け合う、そんな人間関係を築いてもらえたらいいですね。

TUM裏にある畑をみんなで開墾!

本田さん
TUMでの出会いを通して、個々が取り組んでいることが集まって、繋がって、また別のものが生まれて…いい循環となって広がっていく。

それが最終的に韮崎や地域の活力にも繋がっていくような状態になったら、より嬉しいです。

ーーー具体的にどんな活動が生まれてほしいですか?

本田さん
やっぱり地域が活性化するような、まちづくりに近いようなプロジェクトですね。

きっと、ここに集まる人って、それぞれこの場所でやりたいこととか、場所は決まっていなくても、なんとなくこういうことがやりたいって想いを持っている人が多いはずです。

利用者同士でBBQ交流

本田さん
TUMで意気投合できる仲間が見つかって、その繋がりから、まちがより良くなるプロジェクトが次々と誕生していく…こんな流れが生まれたら理想です。

ーーー若者主体のプロジェクトが続々と立ち上がっている光景をみてみたいです。これからTUMをどんな場所にしていきたいですか?

本田さん
いろんな人たちが気軽に訪れて「最近どうなの?」といったフランクな話から、仕事に関する熱いトークまで、人も会話も行き交いワイワイと賑わっている場所にしたいです。

本田さん
利用者同士が自然と交流して盛り上がってイベントを企画して、それをきっかけにまた人が集まって、繋がって…おもしろい循環が生まれる場所として機能したらとても楽しいと思うんです。

それが、最終的に韮崎って面白いまちだな〜、なんか盛り上がって来ているな〜と、ポジティブなイメージに繋がればと。

…妄想ですけど(笑)。

ーーー楽しそうですね。ここを拠点として韮崎全体が盛り上がり、周りにも波及していくような…それくらいの気概で運営されると?

本田さん
プレッシャーを感じます(笑)。でも、それくらいの想いを持って運営していきます。

韮崎は若い移住者も多くて、ここ数年で新しいお店やおもしろい取り組みもどんどん増えているんです。

ミアキスのイベント会場としても解放

本田さん
TUMも若い人たちに「自分たちも韮崎のまちづくりに関われる可能性があるんだ」と希望を持ってもらえるきっかけになれば。

周りの人に「こういうことやりたいんだよね〜」と語っているうちに、「自分にもできるかもしれない」とか、「周りに言えなかったけど夢に向かって行動してみようかな?」とか、前向きな気持ちが生まれる場所にしたいです。

ーーー最後に、TUMに興味を持っている方にメッセージをお願いします。

本田さん
いつでも誰でも気軽に訪れてもらえたら嬉しいです。もちろん、たまたまここを通りかかったから、気分転換したいから…というノリでも全然OKです。

突然訪れるのは敷居が高い!と感じられる方は、イベントやオープンデー&ドロップインを活用して、まずは雰囲気を感じてみてください

中高生と一緒にBBQ

本田さん
TUMはまだまだ手探りで運営している段階なので、積極的に利用者のご意見やご要望を取り入れたいと思っています。

単なるコアワーキングスペースではなくて、皆さんの成長と共にTUMも進化していく…。そんなカジュアルな場所なので、ぜひ利用していただけたら嬉しいです。

 

新聞やテレビでは「人口減少」「若者流出」といった後ろ向きな言葉が毎日のように飛び交っていますが…TUMや韮崎の未来への熱い想いを語る本田さんの瞳はキラキラと輝いていて、そんな不安も消し飛ぶほど眩しかったです。

取材の帰り道、別の取材で河原部社代表の西田さんが話していた自分たちのいるところを自分たちでつくっていこう!という言葉を、ふと思い出しました。

この場所を起点に「韮崎のまちづくりに関わりたい」と燃える若者たちが集い、希望を持って活動している光景がさまざまと浮かび、心がじんわり熱くなりました。

 

TUMの基本情報

住所:〒407-0003 山梨県韮崎市藤井町北下條2105−2(駐車場あり)

\オープンデー/
営業日:毎月第3火曜日 10:00~18:00
※ 誰でも気軽に訪れ利用することができます

\ドロップイン/
営業日 :毎月第2・4火曜日10:00~18:00
利用料金:1,100円(税込)

毎月のスケジュールは、公式Instagramをチェックしてください。

【主な設備】
フリーアドレスデスク17席(内訳:4人用テーブル ×2、個室3席、個人作業スペース6席)ソファ席、Wi-Fi、コーヒーメーカー、電子レンジ、冷蔵庫、モニター、プリンターなど

 

利用者の声

プレオープン時よりTUMを利用されている小畑さん大川さんに、インタビューしました。

ーーーTUMを利用するようになったきっかけを教えてください。

小畑さん
旧友からの紹介で利用を開始しました。課題間としては韮崎市で作業する場所がなかったことが大きいです。

大川さん
私は学生で、かつインターンのお仕事に携わっており、こうした勉強やリモートワークができる場所の存在を兼ねてから求めていました。

もともとTUMの運営の方と面識があり、施設がオープンするまでの準備期間では何度かお手伝いをさせていただきました。そういった経緯で、現在モニターとしてTUMを利用しています。

ーーー実際に利用した感想を教えてください。

小畑さん
相談の上ならOKということでモニターを置かせてもらいました。その結果、作業効率も上がりました。他の方がおられるので、息抜きとして会話できるのも良かったです。

大川さん
カジュアルで落ち着いた雰囲気がとても良いです。作業場として利用するだけではなく、他の利用者との新しい出会いがあるのも、ここならではの魅力ではないでしょうか。施設の設備は徐々に整いつつあって、現在は特に不満を感じることはないです。

ーーーTUMのどんなところがおすすめですか?

小畑さん
家ではだれてしまう人や、これから韮崎市への移住を考えている人はもちろんのこと、仕事の横の繋がりや友人知人が増やしたいって人が利用する場所としてよいのではないでしょうか。

大川さん
新しい出会いの場として利用できるという点です。私自身は学生で地域に根差した仕事をしているわけでもないので、その点を最大限活用することはできていませんが、ローカルな出会いを求めている方にとっては最適の環境だと思います。

時々イベントが開催されているので、普段の利用では出会えない人も、そうした催しを通して交流することができます。