美土偶「ミス石之坪」の魅力とは?知られざる縄文の世界にトリップ!|教えて!閏間さんVol.3

SDG’sやサスティナブルな活動を求められるようになった昨今。日本では、密かに「縄文ブーム」が起こっているらしい

山梨県・長野県を中心とする中部高地エリアは、縄文遺跡の宝庫と呼ばれており、数え切れないほどの遺跡が点在している韮崎市は、縄文ファンにとって、激アツスポット。

そんなまちにせっかく住んでいるからこそ、知っていただきたい存在がいる。
それは、日本遺産にも登録されている石之坪遺跡(円野町)から発掘された土偶ミス石之坪(石之坪遺跡の土偶)」だ。

ミス石之坪は、先月26日から開催されている『縄文ドキドキ総選挙2021』にエントリーしており、「今年こそは悲願の1位を…」と熱く燃えている男がいる。

韮崎の歴史といえばこのお方…民俗資料館の閏間俊明さんその人だ。

教えて!閏間さん」ということで、今回は、ミス石之坪の魅力はもちろん、知られざる縄文土器の世界と楽しみ方について聞いてきた。

先生、無知な私に縄文時代について教えてください!

!

土偶サコッシュがかわいい!

松野
ご無沙汰しております!

以前、取材させていただいた「教えて!閏間さんシリーズ」とても好評でしたね。

その節は、ありがとうございました。

閏間さん
いえいえ。私も「にらレバみましたよ〜」と、記事を読んだ方から声をかけていただき、新鮮でした。

今回は、どうされましたか?

松野
昨年に引き続き、石之坪遺跡から発掘された「ミス石之坪」が縄文ドキドキ総選挙2021に参加中。しかも、1位を狙っていると聞きまして…

この際だから、土偶や縄文時代について、根掘り葉掘り聞くぞ!ということで、遊びに来ちゃいました(笑)。

閏間さん
縄文時代ね〜、とても奥深い世界ですよ!さて、何から話しましょうか?

松野
(今回の取材だけでは、収まらない予感しかしない…。)

そもそも土偶って、なんですか?

松野
さっそく質問なんですが…

そもそもの話、土偶ってなんのために作られたんですか?

閏間さん
そうだな〜。一口に土偶といっても、説明するのがすごく難しいんですよね。

縄文時代って歴史の教科書では、0.5〜1ページ程度で終わったでしょ?

松野
はい。弥生時代や邪馬台国と一括りにされてました。

閏間さん
でも、実際は1万何千年も続いている時代なんだよね。

松野
え…長っ!

「マンモス狩って、土器作ってました」で、片付けてはいけない歳月じゃないですか。

閏間さん
でしょ?ちなみに、マンモスいないですからね

だから、その長い時間の中で土偶が、ずっと同じ機能や役割で存在していたのか、と聞かれるとハッキリいってわからない。

松野
伝言ゲームみたいに、前半と後半で「まったく違う意味合い」になっていそうですね。

閏間さん
まさにそれ!初期の頃に作られた土偶って、すっごく素朴だし、発見例もめちゃくちゃ少ないんですよ。

ま~それでも、1万数千年前の人が土偶を作っていたことだけでも驚きですけどね!

もののけ姫に登場する、こだまみたい。

閏間さん
縄文時代って長いから、その時々で表現が豊かになったり、丁寧であったり、地域でちがったり…

同じ土偶でも、長い時間の中で、作っている縄文人の土偶に対する思いも変わっているかもしれないですよね。

松野
携帯電話みたいですね。元祖はポケベルやPHSで、今はスマホ。

連絡手段には変わりないけれど、使われ方や取り巻く環境が変化している的な。

閏間さん
そう!土偶も、環境や生活様式に合わせて、意味や役割がアップデートされてきたのかもしれません。

現に、偶って名前自体も、現代人が勝手にそう呼んでいるだけですから(笑)。

松野
(…当時は、なんて呼ばれていたんだろう。)

みえない何かへの想いや願いが込められている?

「もはや、ブラックボックスなのでは?」と思い始めた松野の図。

閏間さん
先ほどの質問にお答えしていませんでしたね。

土偶に限らず、縄文土器も含め、この時代に作られたものは、命を育んでいることを表現しているんだろうな、って感じています。

松野
命を育んでいる?詳しく教えてください。

閏間さん
土器って、現代でいう鍋。

現代人は、鍋という調理具に対して機能性や使いやすさを求めますよね

松野
確かに。つい、シンプルでスタイリッシュなものばかり揃えちゃいます…。

閏間さん
でも、縄文土器って機能面で考えたら、ハッキリいっていらないものばかり。

というか、ごちゃごちゃ装飾されてて、どう考えても不便じゃないですか?

どうやって持つのが正解?こぼさずに使うとか無理だよ…。

閏間さん
土器は、道具としての機能だけを求めず、強い想いみたいなものが込められて作られているんじゃないかな?

松野
土器を通して「みえない何かへの感謝や祈り」を表現している可能性があると?

閏間さん
その可能性も大いにある。

実際、土器は「料理しないと人間が食べれないもの」を加工するための道具。要するに食事を生み出してくれる魔法の器なんじゃないかと。

そして、食事をとるという行為は、人間が命を紡ぐために必要なこと。土器を通して「命をいただくこと」に感謝をしている縄文人が見えてきませんか?

松野
…うっすらと見えてきたような気がします?

縄文人って、感受性や表現力が豊かだったんですね。

閏間さん
おっと、そこは注意が必要です。

土偶や土器の表現が豊かだと「その当時の生活が豊かだった」と受け取ってしまう人がいます。それはあまりにも安直すぎるかと。

松野
え…どういうことでしょうか?

土器は華やか!でも、「生活は豊か」とは限らない?

閏間さん
私は、その逆だった可能性もあるんじゃないかな?と思っています。

石棒には、子孫繁栄や豊穣の祈りが込められている。

閏間さん
丁寧に、そして思いを込めて作らなくちゃいけない理由があったんじゃないかなと。

命を育むことにとても困難が伴うからこそであり、必ずしも単純に「豊か」という言葉で片づけちゃいけないんじゃないかなと思っちゃうんですよね。

松野
言われてみると。土器や土偶の派手な模様は神様というか…

人智を超えた何かを形にしている可能性があるということでしょうか?

閏間さん
日本には昔から「藁をも掴む」「最後は神頼み」という言葉がありますよね

土器や土偶を作り頼らないと生きていけない。

それほど、精神的に追い詰められるような環境だった、と捉えることもできますよね。

松野
確かに。人間の力ではどうしようもない力が及んだとき、何かにすがりたくなってしまうこと、ありますね。

閏間さん
それで「なんらかの想いが込められている」と仮説を立てみる。でも、

縄文時代は「文字に残す」という文化がなかったので、モノからしか語れない。

だから形だけじゃなくて、発見されたときの状況から推測することもある

松野
確証がないからこそ、様々な角度から慎重に追求していくことが大切。

だからこそ、奥深い世界なんですね。

閏間さんの推し「ミス石之坪」ってどんな土偶なの?

ミス石之坪の魅力を教えてください!

松野
そんな閏間さんが、我が子のように愛して止まない「ミス石之坪」。

改めて、この子の魅力やチャームポイントを教えてください。

閏間さん
そうだな〜。まずは、細部まで丁寧に作られているところかな?

そして、見る角度によって表情がコロコロと変わるところですね。

松野
本当だ!下から見ると泣き顔のように見えて、少し視線をあげると穏やかな表情になった(ような気がする)。

閏間さん
土偶って、基本的につり目で、能面のように角度を変えると表情が変わるように作られている。

ミス石之坪は、丁寧に作られているからこそ、その表情の変化を読み取りやすいと思います

寝かせると泣き顔。立てるとなんか怒ってる?と、見えなくもない。

閏間さん
じっと眺めていると、子育てをしている世代(母親)の喜怒哀楽の感情を描いているようにも見えませんか?

まさに、愛を育む姿をリアルに想像できる、そんな魅力を持った土偶です。

松野
全身が残っていないからこそ、より顔や表情に注目して眺めてしまいますね。

閏間さん
併せて、「もし、全身があったらどんな姿なんだろう?」と、想像しながら楽しんでいただけたら嬉しいです。

ミス石之坪を擬人化!ぐうかわ…。

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ミス石之坪しか勝たん!学者の「心」を語りたくなる土偶

松野
「ミス石之坪しか勝たん!」的な、そんな深い愛をひしひしと感じております。

閏間さん
自分で掘りだした子だからね!

初対面した時、何千年の時を土の中で過ごしていて、久方ぶりに見る人間が「私でごめん」って、ちょっと思ったけど…(笑)

松野
!?!?

きっと、閏間さんに、見つけてもらえて嬉しかったと思いますよ?(笑)

閏間さん
あはは、そうだと嬉しいね(笑)。

「閏間さん×ミス石之坪」のツーショット

閏間さん
大学時代から考古学研究に携わって早31年

。これまでたくさんの土偶を発掘してきたけど、この子は出土状況も含めて、やっぱり別格だったからね。

「なにこれ~(ハート)」「嘘でしょ?」って。

松野
閏間さんが思わず乙女になっちゃうくらいの衝撃だったんですね(笑)。

どんな、状況で発見されたんですか?

閏間さん
この子が発見されたのは、日本遺産にも登録されている「石之坪遺跡(円野町)」

フラスコ型土杭と呼ばれる「貯蔵穴」で、食料を加工するための石器4点と一緒に発見されました

しかも、ミス石之坪は伏せられていて「大地にキスをしているのかな?」と思うほど、神々しい姿でしたね。

民俗資料館では、発見当時を再現して展示されている。

閏間さん
食料を保管する、貯蔵穴から石器と土偶が発見された。

思わず「もう、命の育みセット状態じゃん!」ってツッコミ入れちゃいましたよね。(笑)

松野
お得な条件が、もれなく揃って出てきたんですね(笑)。

閏間さん
はい、痺れました。縄文文化というか…縄文人の気持ちをなんとなく、肌で感じた瞬間だったので。

考古学って、感情的な解釈が入ってしまうので「心」を語りたがらない学問なんです。

でも、ミス石之坪を発見した時は、「これは語ってもいいんじゃない?」「むしろ、語らせてくれ!」と思えた土偶でもあります。

 

殿堂入り「縄文のビーナス」って、どんな土偶?

松野
ところで、昨年もこの総選挙にエントリーされていて、ミス石之坪は3位という結果でしたね。

閏間さん
それでも、全国3位ですからね!負け惜しみですが(笑)。

松野
その時、ダントツの1位で、今年は殿堂入りを果たした「縄文のビーナス」って、一体どんな土偶なんですか?

閏間さん
シンプルに、縄文のビーナスは国宝です

しかも、発掘時は片方の足が取れていましたが「ほとんど完全な形で見つかっている」ところもポイントですね。

資料を広げながら「ほら!すごくな〜い?」の図

閏間さん
つまり、国宝になるからには、それなりの魅力があるわけです

ほら、腰からお尻にかけてのビーナスラインが、どっしりとしながらもふくよかで…すごく、いい感じの形をしていますよね

松野
本当だ!体のラインが、嫉妬しちゃうくらい美しい。

閏間さん
ね!焼きもしっかりしているし、とても丁寧に磨かれてピカピカしているし、表情もいい感じだし…。

しかも、キラキラしてるでしょ?これは、わざと粘土に“金色雲母”という砂を混ぜているんですよ。

松野
キレイですね。さすが、国宝!

閏間さん
でも、ビーナスが人気な理由はそれだけじゃない。

地元の人からとても愛されているからこそ、あれだけの票が集まったと思います。

松野
え…あのとんでもない票数の正体は、地元の方の愛なんですね

閏間さん
そうなんです。2位の南アルプス市にある鋳物師屋遺跡の「ラヴィちゃん」もそうですけど、地元の人にとっても誇りなんですよね。

閏間さんが、土偶の魅力をわかりやすく解説中。

閏間さん
例え、どんなに素晴らしいものでも、その存在を知らなければ、興味を持たないし誰にも注目されない。

何事も、まずは地域の人たちに「地元にこんなにすごいものがあるのか!」と知ってもらうことが大切なんだと思います。

松野
ミス石之坪も、今以上に、韮崎の人から愛される存在になってほしいですね!

閏間さん
ですね!もっと、多くの方に縄文時代のことを知ってもらい、興味を持っていただけるよう、今以上にPR活動を頑張ります!

松野
ということで、皆さん、ミス石之坪の応援をよろしくお願いいたします!

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「興味がない人でも楽しめる!」縄文の世界の歩き方

松野
今回の取材で、なんだか縄文時代への興味がふつふつと湧いてきました。

閏間さん
お、ついに縄文ガールデビューですか?歓迎しますよ(笑)。

松野
それは…また、おいおいで(笑)。

最後に、私みたいに「知識ゼロ」な人でも縄文時代を楽しむコツや魅力について教えてください!

閏間さん
まずは、気軽な気持ちで実物を観に行って、「昔の日本では、こんなものを作っていたんだ」「これ、何を表現してるの?」程度のリアクションでいいと思います。

抽象画を観て「ナニコレ?」って思いますよね、そんな感じです。

松野
歴史を学ぼうと意気込むんじゃなくて、とりあえず自由でいいってことですか?

閏間さん
とっかかりはそれでいいと思います。

そこから、縄文時代の土器や土偶は、すべて手作りで、同じものはこの世に2つとしてない「唯一無二の存在」であることを感じてほしいですね。

松野
なるほど…設計図も機械も、型取りの技術もない時代

すべて手作業で、ここまで精巧な作りってすごいですよね。

閏間さん
一般的に、縄文人は手先が器用じゃないと思われがちですが、現代人と何ら変わらない。

むしろ、物事に丁寧に向き合ってるからこその器用さがあります

民俗資料館では様々な土器が飾られています。

閏間さん
立体的な装飾とか派手なんだけど、それだけじゃなくて意外と繊細で、細部までよく見ると「おや?いい仕事してますね〜」って感じる丁寧さがある

惚れ惚れするような、そんな職人技に注目してみてください。

松野
土器を通して、縄文時代へ思いを馳せる。

誰かと一緒に訪れて、それぞれが感じた縄文時代について語る時間も楽しそうですね

閏間さん
ぜひ、家族やお友達と縄文トリップしてみてください。

編集後記〜縄文ガールへの道〜

「縄文ガール」まんざらでもない!と思っている松野

土偶に土器に縄文時代…と、かなりお腹いっぱいだが、まだまだ、縄文時代の「じ」の字にも到達できていないんだろうな。

帰り際に、山梨県は縄文王国といわれており、韮崎市は比較的華やかな土偶が発掘される、すごいところだ!と聞いたからだろうか。

それとも、この原稿を書きながら、ミュージシャン池田貴史のソロユニット「レキシ」の狩りから稲作へ』を、リピート再生していたからだろうか。

「縄文土器」というワードが、頭から離れなくなってしまった。

「縄文時代も私も逃げたりしないので、いつでも遊びに来てくださいね」と話してくださった閏間さん。

彼ら彼女ら(土偶と土器)のことが気になり、閏間さんの元へ足を運んでしまう日が来るのも、そう遠くはないな…と感じた、そんな取材であった。

「ミス石之坪」は、
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韮崎市民俗資料館の基本情報

  • 所在地 :韮崎市藤井町南下條786-3
  • 開館時間:午前9時~午後4時30分 (午後4時頃までにご入館ください)
  • 休館日 :月曜日、木曜日の午前中(※祝日の場合はその翌日が休館日となります)
    年末年始(12月29日~1月3日)
    「にらみんのお散歩日記」に最新の休館日が掲載されています。