にらレバ学生ライター。新潟県出身。山梨県立大学人間福祉学部で、社会福祉士の資格を取るために勉強中。特に地域福祉の分野に興味を持つ。お笑い・歌うこと大好きで、テレビ鑑賞・カラオケが趣味。
みなさんは「余白」というものをどのように捉えていますか?
時間の余白、空間の余白、心の余白、人と人の余白…
余白は日常の中に沢山埋もれています。余白を埋めるのも、余白をあえて作るのも、余白の使い方はひとそれぞれです。
今回の記事は「余白」がテーマ。
前半では、余白の可能性を広げるために行った『韮崎ヨハクカフェイベント』について、イベントを行った経緯や当日までの準備の様子をご紹介。
後半では、イベントに対する町の方々の反応やイベントを通してわたし自身が感じたこと、余白のこれからの可能性についての提案をしていきます。
韮崎の現状を知ったことがイベントを行うきっかけに
わたしは、去年の夏からにらレバのインターンに参加させていただき、今まで全く関わることのなかった韮崎と関わるようになりました。
韮崎の人々と接していくことで、人と人の距離の近さや地域住民の温かさなど、小さい地域だからこその良さを感じる一方で、地元離れの若者や空き家の多さなどの韮崎の課題を知ることも多くありました。
その中でも、韮崎駅裏にある韮崎商店街では、かつては70店舗あったお店が、今では20店舗弱しかなくなってしまったというお話から、閉店してしまったお店の多さに気づきました。
お店を閉じた後の空きスペースや空き家をそのままにしておくのは、もったいない!なにか活用することはできないのかと考えました。
そこで、空きスペースや空き家、空き物件などの、空いてしまっていてあまり目を向けられていない空間に着目し「余白」と捉えました。韮崎の余白を別の形で活用することで、お店が少なくなってしまった韮崎の町を盛り上げられるのではないかと思ったのです。
わたしは、カフェ巡りが趣味でカフェ経営に興味があり、今春から甲府のレンタルスペースで、友達とカフェを運営していく予定があります(詳細は下の方に記載します)
そのこともあり、韮崎の余白を使ったカフェをオープンしてみたい!という考えになり、この企画は動き出しました。
恵比寿家との出会い
まずは、カフェを行うことのできるある程度スペースのある空き場所を探すことからスタート!
いくつか候補はあったのですが、なかなか決まらず、韮崎の数々の空き家のリノベーションを手がけているイロハクラフトの千葉さんの元を訪れることに。
千葉さんにお話をすると、「そういうことならぴったりのところがある」と1つの空き家を紹介していただきました。それが今回のイベントの拠点となった「恵比寿家」です。
恵比寿家は、元々は夫婦で経営していたお寿司屋 兼 割烹料理屋でした。旦那さんが他界してからは奥さん1人で切り盛りしていましたが、2年ほど前にお店を閉じ、奥さんはお子さんが住む他県に引っ越したため、1年以上空き家になっていました。
千葉さん自身リノベーション物件として目をつけていたということや、学生の積極的な活動を応援したいという気持ちから、恵比寿家を紹介してくれました。
早速その日のうちに内見させていただけることに。
恵比寿家の場所は、韮崎駅から徒歩5分と好立地で、3階建ての建物には、広い屋上も付いていました。
1階は、お寿司屋の入り口と日常生活に使っていたような玄関口、裏口と出入り口が3カ所あり、中央には大きな厨房がありました。
2階へ上がると畳の部屋が2部屋、3階は50人ほど収容できる大きな宴会場が1部屋あり、繁盛していたお店だということを想像させました。
一通り部屋を見させてもらい、様々な想像が膨らみ、ここを使いたい!と直感的に思い、内見後すぐにここをイベント会場にすることを決めました。
恵比寿家が地域に愛される存在だったことを知った準備期間
イベントの場所が恵比寿家に決まり、いよいよ準備段階へ。
『韮崎ヨハクカフェ』というイベント名で、日時は1月17日(日)に決め、ポスターを作成しました。
カフェで提供するドリンクやフードは、私が甲府で運営するカフェでも販売予定のものと同じものを提供することに決め、そのスタッフと一緒にカフェドリンク・フードを作成、提供することに。
恵比寿家の物件は、今後も様々なことが発展していくであろう場所だと思ったため、周りの学生たちを巻き込んだ企画にしたいという思いもあり、山梨の学生団体トップファンの学生にもイベントスタッフとして協力していただくことになりました。
また、このイベントのことを周知してもらうために、恵比寿家の周辺のお店を一軒一軒周り、ポスターを配りました。
「よく恵比寿家の3階で法事を行っていたなあ、懐かしい」
「恵比寿家は、韮崎に昔から住む人なら、絶対一回は行ったことがある場所だよ」
地域の方々の直の反応を伺うことができ、地域の方に愛されていた存在であることを知ったことで、そのような場所を使わせて頂けることの有難みを感じることができました。
恵比寿家の2軒隣のケーキ屋『アルプス』の三枝さんからは、「行動することが大事!ずっと閉じていたシャッターが開くだけで嬉しいよ!」「学生たちだけで行うのはすごい!頑張ってね」と熱い応援の声もいただき、多くの地元の方々に勇気づけられました。
イベント前日の16日(土)は一日がかりの掃除と準備。
2年前から時が止まっている場所を、お客さんを招き入れるカフェ空間にするのは非常に大変かつ地道な作業でした。
カフェスタッフや、ミアキスのスタッフ、学生にも手伝ってもらい、凍える寒さの中なんとか完成。
恵比寿家に元々置いてあったもので使えそうなものは活かし、レトロ感満載のカフェ空間に仕上がりました。お客さんが使うスリッパは、市民体育館にお願いをしてお借りしました。
お昼には、同じ通りにある『ほさか』さんのおにぎりと、作業中にアルプスの三枝さんが差し入れてくださった温かいお茶で休憩。疲れた体に沁みわたり、心も温まりました!
積極的にアクションを起こすことで、興味関心を持ってくれる方や応援してくれる方々が様々な形で関わってくれ、それがわたしたち自身の原動力にもなるということを感じました。
いよいよ韮崎ヨハクカフェオープン!
そして、イベント当日。
午前中に自宅で約80個のお菓子を作り終え、最終準備を終えた後、13時にお店をオープン!
1階のお寿司屋だったところは、カフェの販売スペースにしました。テイクアウトも可能にし、小上がりの畳の席はテイクアウトの待機スペースに。
ネタを入れていたであろうショーケースには、提供する見本のお菓子を入れるケースに応用しました。
また、販売スペースの一角に、「ヨハクあつめ」というイベントコーナーを設けました。
韮崎の地元の方だからこそ知る空き家や空きスペースを、韮崎の地図に付箋で書き込んでもらい、ほかにもまだまだある『韮崎の余白』を集めました。
地元の方や韮崎以外から来たお客さんとも韮崎の余白を共有することで、余白の存在に目を向けて欲しいと考えました。
2階の二つある和室は、お客さんの飲食・休憩スペースに。
階段に近いほうの部屋では、机を大きな円形に組むことで、交流もでき楽しめる空間になりました。
奥の一部屋では、机を全て壁際に向け、落ち着いた空間をつくりました。
お客さんは、各々でお話をしながら、頼まれたドリンク・お菓子などを召し上がり、それぞれの余白の時間を楽しんでいる様子でした。
13時から17時のイベントで、約80人ものお客さんに来ていただいたという大盛況の結果に!
家族連れ、中高生、わたしたちと同じ大学生、お年寄りなど年代も性別も偏ることなく、1日限定のイベントでありながら多くの方に楽しんで頂けたのではないかと思います。
さらに、エフエム八ヶ岳ラジオの取材も受けさせていただき、イベントの経緯や目的などについて楽しくお話ししました。
自分たちの活動に周囲が興味を持って集まってくれるということに気づきました。新しく行動を起こすことで、つながりが連鎖していきその活動の認知度もどんどん広まっていくのだと感じました。
イベントを通して感じたこと
大きな盛り上がりを見せた韮崎ヨハクカフェ。
ドリンクかフードを頼んでくれたお客さんには待ってもらうための番号札を渡し、その裏にこのイベントの意見や感想を書いてもらいました。
「みんなの協力で、1つ1つのことがつながって形になっていくことがすごいなと思いました。若い力が集まって大きなパワーを生み出しているのでしょう、これからも応援しています」
「普段は入れない空き家に入れるいい企画だと思った、こんなお店が使われていないなんてもったいない!また別の場所での開催も楽しみにしています」
「二人で散歩に来ましたら、思いがけず声をかけられティータイムを過ごすことができて大変楽しかったです」
「隣に住んでいるものですが、昔の恵比寿家さんがこんな風になったんだなあと不思議な気持ちです」
沢山のご意見、ご感想ありがとうございました!
わたしはイベントを行う前、地域の中で大きな存在感のあった恵比寿家という場所を大学生たちが別の形で活用するということについて、地域の方々の反応に対する不安がありました。
しかし、来てくれた方々は、皆さん本当に温かく応援してくれていて、学生が活動をするという点に多くの方が興味関心を持ってくれていることに気づきました。
地域の中で昔から知名度のある場所をお借りできたことで、昔訪れたことのある地域の人たちの思い出話を聞くこともできました。
新型コロナウイルスへの心配もあり、一定距離を取った席配置、消毒検温の徹底など対策を行ってのイベントでしたが、こんなコロナ禍の中でも、明るいイベントをすることで地域を盛り上げることができたのではないかと思います。
「ヨハクあつめ」のコーナーでは、恵比寿家周辺の閉店してしまったお店の空きスペースや、韮崎市の使われていない畑や空き家などの情報などが寄せられました。
中には、「元々お店を営業していたスペースが空いているので、使ってください」と家主が自分の余白を紹介してくれていた付箋もありました。
皆さんから頂いた韮崎の余白の情報は、後日韮崎市役所の空き家対策のご担当者さんに提供しました。
空き家対策の職員さん方も空き家の情報など集めるのに苦労していて、また空き家が見つかっても所有権問題などがあるというお話を伺うことができました。
余白の無限の可能性
空いて使われなくなってしまった韮崎の余白を別の形で活用したいという思いで動き出した今回のカフェイベントでしたが、わたし自身地域の方々にも勇気づけられ、地域と一緒になって韮崎の一日を盛り上げることができたと思います。
韮崎の余白をわたしたちの活動で彩ることで、地域の皆さんの心にも彩りを添えることができたのではないかと感じています。
来てくれたお客さん含め、ご協力くださった方々本当にありがとうございました!
今回のイベントを通して、韮崎には、私が思っていたより多くの使われていない余白が存在することに気づきました。
今回は、空きビルをカフェとして活用しましたが、余白になっている場所は、きっとまだまだたくさんあると思います。
それらの余白をどう活用するかも、あなた次第でいくらでも見つかるはず。
身近な余白を見つけて、自分の興味があることをぜひやってみてほしいと思います。
最後に、今回のような空きスペースや空き家に興味のある方に向けて、活用する際のポイントや、空きスペースを見つけるのに役立つサイトや機関を紹介します。空きスペースを活かして何かやってみたいという方の参考になれば嬉しいです。
韮崎で探している方
- 市役所総合政策課
- 韮崎市空き家バンク
- 移住相談窓口
- 韮崎市商工会
マッチングサイト
今すぐ活用する予定がなくても、自分の住む地域にある空きスペースを調べてみることで地域を知ることにもつながるので、是非調べてみてください。
また、空き家については、水道や電気が通ってない可能性が高いです。
今回のイベントは1日限定のイベントだったため、通常の契約ではなく使用期間を申請して通していただきました。
空き家を利用する際は、水道や電気も調べておくと、スムーズな活用ができると思います。
今回のイベントでカフェスタッフをしてくれた友達と今年の3月から甲府でオープンするカフェは「ヨハクニイロドリ」。
甲府のレンタルシェアキッチン「ゑびすや」にて、毎週日曜に営業します。
韮崎ヨハクカフェで提供していたドリンクやお菓子なども販売する予定です。
インスタグラム(@yohaku_ni_irodori)にて情報を発信しておりますので、是非ご覧ください。お待ちしております!
余白は、誰にも使われずに余っている部分。だからこそ、いくつもの活用方法があり、みなさんならではの使い方を生み出していける場所なのだと思います。
まずは、身の回りにある余白を探してみてください。
そして、その余白を自分ならではの色に色づけることができるか是非考えてみてほしいです。
この記事が、余白の存在や余白の可能性について考えるきっかけになれば嬉しいです。