にらレバ学生ライター。2000年生まれ。韮崎高校出身で、筝曲部に所属していた。現在は、山梨県立大学で観光やまちづくりを学んでいる。趣味はカフェ巡り。将来は、人とつながる仕事をしたいと考えている。海外旅行もたくさんして、人生の経験値を増やしていきたい。
こんにちは。インターンとして、にらレバの学生ライターをしている渡邉結衣です。
将来は、地元の南アルプス市に関われる仕事をしたいと思っていて、大学で「まちづくり」について学んだり、南アルプス市での地域活動に参加したりしています。
今回は、地域活動に興味のある私の視点から、「地域とのつながりの作り方」についてお話していこうと思います。
記事の背景
「何かしたい」という思いと実行の間には高いハードルがある
私がにらレバでインターンを始めたのも、地域のことや「まちづくり」について学びたいと思ったことがきっかけでした。
私は韮崎高校に通っていたのですが、そのころ、韮崎の象徴とも言えるアメリカヤが復活したり、中学・高校生の拠点『Miacis』がオープンしたりと、まちの変化を感じてきました。韮崎市のローカルメディアである「にらレバ」に入ることで、そんな、まちづくりが進む韮崎市についてよく知れるだろうと思ったし、実際に、入ってみて多くの学びを得ることができました。
私と同じように、「地域に関わる何かがしたい」と考えている人は多いのではないかと思います。特に学生であれば、「学生のあいだに何かしたい」という思いもあるかもしれません。
しかし一方で、いざ何かをしようと思ったとき、いきなり地域の中で活動を始められる人はそう多くないのではないでしょうか。地域とのつながりが持てていない状態では、「何からどう始めればいいのか」「誰と一緒にやっていけばいいのか」など、具体的な方法を思い浮かべづらいからです。
思いと実行の間には高いハードルがあるように私は感じます。
ボランティアは、地域とのつながりを築く手段?
叶えたい思いを実行していくためには、私が「にらレバ」に入ってまちづくりを学ぶ機会を得たように、力を貸してくれる地域の人々や団体とのつながりを築いていくことが重要だと感じています。
そこで私は、地域とのつながりを築く手段の一つとして、「ボランティア」に着目しました。
地域の問題に対して取り組む団体や会社にボランティアとして参加させてもらうことで、「地域の問題」を活動者の視点から見ることができたり、自分の将来の目標となるような方と一緒に活動したりできるのではないかと考えたのです。
教科書や教室で学べることを越えて、直に地域の問題に触れたり、地域で活躍する方に出会えるボランティアという機会が、「何かをしたい」という思いを持った学生が「実行」に移していく入り口や、そのヒントになるのではと考えました。
今回は実際に、韮崎市子育て支援センター「にら★ちび」と、子ども食堂を運営する「にららん♪食堂」でボランティアを体験させていただきました。実際に地域の人とどのようなつながりを作ることができたかなど、ボランティア活動に参加したからこそ感じられた視点や得られた気付きを紹介したいと思います。
実際にボランティアを体験
①にら★ちびのボランティアに体験取材
『にら★ちび』は、NPO法人 子育て支援センターちびっこはうすが運営している韮崎市の子育て支援センターです。韮崎駅前の市民交流センターニコリ3階にあります。
実は高校生のときにも、ボランティアとして、「にら★ちび」のスタッフをさせていただいたことがあったのですが、子どもを預ける保育園や幼稚園など「お母さんが子どもを預ける場所」とは違って、「お母さんも子どもと一緒に遊ぶ施設なんだ」ということを実際の様子から感じた記憶があります。
今回のボランティア参加にあたって、ちびっこはうす代表の内藤香織さんに、「にら★ちびとはそもそもどのような施設なのか」「韮崎の中でどんな役割を担っているのか」についてお伺いしました。
子育て中のお母さんが抱える大きな悩みや不安の一つが「孤独感」。お母さんたちを孤独にさせないことが、「にら★ちび」が担っている役割の一つだと内藤さんは言います。
お母さんと子どもがのびのびと遊べる空間があること、スタッフと交流したり相談したりでききる場があることで、お母さんたちはリラックスすることができます。
また、子育ての悩みがあったとき、自分から施設や専門家へ相談をしに行くことに敷居の高さを感じるお母さんは多いようですが、子どもと遊びながら、スタッフに気軽に悩みを相談したり打ち明かしてくれるそうです。
サポートが必要であればにら★ちび内の相談所でゆっくり相談を聞いたり、外部の専門施設と連携したサポートも行っています。
多くのお母さんにとって子育ては、一人の命を育てていくというプレッシャーを感じるものでもあります。孤独の中であれば、そのプレッシャーはなおさらのこと。子育てを頑張っている他のお母さんや子育ての先輩のスタッフさんと触れ合える場所が地域の中にあるということは、きっとお母さんたちにとっての大きな励みになっているのだろうと思います。
当日参加して感じたことをレポート
内藤さんから説明を受けて理解を深めたところで、実際にボランティアとして参加してみました。
「にら★ちび」のボランティアスタッフは、「ケロケロ隊」と呼ばれています。
普段は施設内で子どもと遊んだりお母さんと話をしたりするのが主な役割になりますが、私がボランティアに参加した日はちょうど「にら★歩歩くらぶ」という散歩イベントがあったので、そちらの補助スタッフとして参加させていただきました。
お散歩では、お母さんと子どもたちがスタッフと一緒に一時間ほど歩きます。
今回は、次のスポットを巡りました。
- 観音坂にある公園で雪遊び
- カフェ『PEI COFFEE』さんによるお菓子の配布
この日は、雪が降った次の日でした。道が滑りやすい中、お母さんとスタッフさんがお子さんの足元を見守っています。
そして、公園に到着!子どもたちは、雪に夢中で遊んでいました。
なかなか子どもと触れ合う機会がない私は、緊張しながらも、雪という最強の武器を使って仲を深めようとしています(笑)遊んでくれてありがとう^^
途中から、保健師さんもイベントに合流しました。
実は、「にら★歩歩くらぶ」は、韮崎市が市民の健康づくりを目的に進める『健康ポイント事業』の一環でもあり、「にら★ちび」と市役所の保健福祉課とが連携しながら実施されています。
韮崎市健康ポイント事業(ウェルネスポイント)の詳細はこちら |
保健師の櫻本さんは、イベントに関わっている目的を説明してくれました。
「私たち保健師は、『アセスメント型』と呼ばれる、「~しなさい」という上からの指導ではなく、市民の方に寄り添うことで市民の方の健康をサポートすることを大切にしています。
今日のような子育て支援のイベントにも積極的に足を運ぶことで、日頃から、お子さんの発達状況を把握したり、お母さんたちの相談を聞いたりすることができます。
健康診断だけでは、緊張してしまっていたりして、その子の普段の様子については理解できないですからね。子どもが自然に遊んでいる場に混じりながら、ご家庭の状況を把握したり、信頼を築いたりしています。」
子育てをしていく上で、定期検診や困ったときのサポートなど、家庭と保健師さんと関わりはとても重要です。こういったイベントを通して保健師さんと話をしたり保健師さんのことを知れる機会があるということは、お母さんにとっては嬉しいことではないでしょうか。
私自身、保健師さんという存在に会ったことがなかったので、これまでは「堅い」というイメージを持っていましたが、お話をしてみたら、とても優しく感じがよく、お話しやすい存在なんだなという印象を持ちました。
公園で遊んだ後は、韮崎中央商店街にある喫茶店『PEI COFFEE』へ向かいました。
お店に到着すると、なんと店主さんが全員にクッキーをプレゼントしてくれました。
今回のPEI COFFEEさんのように、「にら★歩歩くらぶ」では、散歩コースの中で地域のお店を訪れたりすることがよくあるそうです。
子育てを応援・支援してくれる韮崎市内の団体や施設を『子育て応援店』として位置づけ、協力や連携が取れる仕組みをとっています。
イベントを通じて訪れることで、当日お母さん方に喜んでもらえることはもちろん、お店にとっては、「子育てに優しいお店」だとお母さんたちに認識してもらうことができ、再び訪れるきっかけにもなります。
お母さんにとってもお店にとっても嬉しい仕組みで上手くできていますよね。
1時間ほどのお散歩で、今回のイベントは終わりです。
内藤さんの明るく元気で、おしゃべり大好きな性格は、ボランティアに楽しく参加できる雰囲気を作り出してくれました。また、どのスタッフさんもとても優しかったです。
お母さんたちも、私とお子さんが一緒に遊べるように見守ってくれました。
優しい人ばかりで、韮崎は素敵なまちだなと感動しました。
にら★ちびのボランティアに参加して、感じたことや得たこと
・内藤さんをはじめ、「にら★ちび」のスタッフさんや保健師さんの「育児を頑張るお母さんたちの孤独感や不安を取り除きたい」という思いを伺うことができた。また、地域全体でお母さんたちに寄り添いたいという一つの目標に対して、ボランティア団体だけでなく、行政やお店の方など、様々な人がいろんな立場から子育てを応援していることが分かった。
・スタッフやお母さんたちから子育ての話を伺ったり、かわいい子どもたちと一緒に遊んだりすることで、学生のうちに育児の楽しさを体験することができた!また、子育て支援施設の存在を知ることで、将来、自分自身が子育てをすることになったときどこを頼ったり相談すればいいか分かり、将来の子育てや暮らしに対する不安が少なくなった。 |
②にららん♪食堂のボランティアに体験取材
次に、子ども食堂を運営する「にららん♪食堂」でのボランティアにも参加しました。
にららん♪食堂は、「食を通じて地域の人々がつながる場所をつくる」を目的に、韮崎市内でこども食堂などを開催している団体です。コロナ禍でこども食堂を開くのが難しいことから、昨年5月からは「フードパントリー」の取組みを行っています。今回のボランティアでは私は、フードパントリーの補助スタッフをさせてもらいました。
「子ども食堂」の存在は言葉としては知っていましたが、どのようなものか詳しくは理解していませんでした。そこでボランティアに参加する前に、にららん♪食堂を立ち上げた内藤慶子さんから、「子ども食堂やフードパントリーの取組み」「韮崎においてどんな役割を担っているのか」についてお伺いしました。
「まちのみんなが世代を超えて気軽に交流できる機会」
にららん♪食堂は、そんな地域がつながる機会を作ろうとしているのだと内藤さんは言います。
たとえば仕事などの事情で親御さんが家を一日中留守にしているご家庭では、十分な栄養を摂れずに困っている子どもがいるかもしれません。一人暮らしの高齢者であれば、自宅で一人でご飯を食べるのが寂しく、誰かと触れ合えるつながりがほしいと感じている方がいるかもしれません。
そんな方々が家庭や世代の垣根を越えてつながりを持てる場所を作ろうと、内藤さんは「にららん♪食堂」を立ち上げました。
コロナ禍を受けて、地域の人々が一堂に会して食事を楽しむということは困難になってしまいましたが、「自宅にいる時間が増えるからこそ、生活に困っている人への支援が必要だ」という想いで、現在は、『フードパントリー』と呼ばれる食事支援の取り組みを行っています。
フードパントリーとは、地域の協力企業や農家さんから食品等の寄贈を募り、主にひとり親家庭や生活に困窮している家庭を対象に配布する(*)、という活動を意味しています。
私は今回、フードパントリーの食品準備や当日のスタッフとして参加させていただきました。
(補足)
*フードパントリーで配布する食品等は、山梨県内で子ども食堂を運営する団体が所属しているネットワーク「やまなし地域こども食堂にじいろのわ」を介して寄贈・提供されています。 |
当日参加して、感じたことをレポート
私は、各家庭に配布する食料を分ける作業から手伝わせていただきました。
寄贈していただいた食材を分けてて感じたことは、一家庭分の食材の支給量が、案外多いということです。多すぎて、配分に苦戦するほどでした。
こんなに多くの食材を支給できるということは、県内のこども食堂のネットワークが上手く働いているからですよね。
そして、フードパントリー当日。今回は、Parkside Parlor IRUさんで実施されました。
「あんなに小さかったのに、大きくなったね!」
配布を受け取りに来たお母さんたち一人ひとりに、内藤さんたちは笑顔で声を掛けます。お母さんたちも、ただ食品を受け取るだけでなく、その温かいコミュニケーションを嬉しそうにしている光景が印象的でした。
「はじめのうちは距離感もありましたが、顔を合わせながらコミュニケーションを重ねるうち、私たちのことを信頼してくれたり、家庭内での悩みを打ち明けたりしてくれるようになってきました。それがにららん♪食堂をやっていてよかったと、心から嬉しくなる瞬間ですね」
にららん♪食堂が大切にしているコミュニケーションへの思いや、利用者さんたちとの関係について、内藤さんはそう話されていました。
実際この日も、育児や子育てについて相談するお母さんもいて、食料の受け渡しだけではなく、誰かに悩みを相談できる場がフードパントリーの中に作り出されていることを実感しました。
にららん♪食堂のボランティアに参加して、感じたことや得たこと
・お母さんと内藤さんたちの会話を通じて、お母さんが抱える育児の悩みを実際に聞くことができ、誰かに悩みを相談できる場が「フードパントリー」という県内の子ども食堂のネットワークの仕組みから作り出されていた。
・自分の住んでいるまちに、困っている人がいる現状に対して、「何かしなければ」という危機感を持ち、助けようと行動をおこす人が韮崎にいることが分かった。その姿を実際に見ることで、自分もそのような一人になりたいと思った。 |
体験の振り返り。学生がボランティアに参加して分かったこと
今回は、「にら★ちび」と「にららん♪食堂」のボランティアを体験させていただきました。
あらためて、「ボランティアを通じて、地域とのつながりをつくる」という本記事のテーマに立ち返って、体験から学んだこと、気付いたことをまとめてみたいと思います。
①地域の課題に対する活動者側の視点を知ることができる
「にら★ちび」の内藤香織さんは、お母さんたちへの直接的なサポートだけではなく、「もっと大きな支援」が必要になるケースを予防することも「にら★ちび」の役割だと話してくれました。
たとえば孤独な子育てに耐えられず、育児放棄などのケースに発展してしまった場合には、市の税金などをかけて、はるかに手厚い支援を行う必要があります。そういった家庭の割合が増えれば、当然、市の財政も圧迫されてしまいます。
「にら★ちび」の存在がお母さん達の孤独の緩和をすることで、家庭状況の悪化を未然に防ぎ、それがひいては地域の健全経営にもつながっていく。
そんな広い視点での子育て支援の考え方を教えていただきました。
また、にららん♪食堂の内藤慶子さんからは、「家庭問題の連鎖」という視点から話を伺いました。
たとえば、困窮が原因で十分な食事をとれずに育った人にとっては、その環境や育て方が「当たり前」のものであり、将来自分の子どもを生んだときに、自分が経験したことと同じような育児をしてしまいやすいそう。
つまり、貧困や家庭内の問題は「連鎖」するということです。
その連鎖を断ち切ることが家庭問題の根本的な解決であり、にららん♪食堂やフードパントリーの中にあるような対面的なコミュニケーションを継続していくことが、その連鎖を断ち切ることにつながっていく。
内藤慶子さんからは、目の前の問題の背景にある課題を見る視点について教わることができました。
どちらの活動からも、「活動者側に立ってみないと見えてこない視点」を知ることが出来ました。
②人の思いに直に触れられる
ボランティアを通じて、考えていた以上に多くの方との出会いがありました。施設のスタッフの方や、戸惑いや複雑な課題を抱えながらも子育てに励む親御さんのほか、行政の方、地域でお店を経営されている方ともお話をしました。
それぞれ立場が違う中で、自分の家族のこと、自分たちの地域のことを思い、良くしようと奮闘している思いに触れることができました。
特に、今回のボランティアを受け入れてくださった内藤香織さんと内藤慶子さんの活動を間近で見ることができたことは、「何かをしたい」と思う私にとって、とても学びが多かったです。
現状への危機感や課題感を原動力に、実際に行動を起こしていく熱にあてられて、私もお二人のように、地元のために何かしたいという想いが一層強くなりました。
まとめ
「にら★ちび」では子育ての知識を手に入れたり、「にららん♪食堂」ではお母さんが抱える悩みを伺えたり、学生のうちに育児の知識を手に入れることができました。また、活動者側に立ってみないと見えてこない視点を把握でき、既存のサービスでは行き届かないニーズへの対応や予防的活動、精神的支援活動をするのがボランティアだと感じました。多くの学べる部分がありながらも、自分が活動したことが結果的に誰かのためになっている。それは、ボランティア活動だからこそできることではないかと思います。
「何かしたい」と考えている学生のみなさん!まずは、ボランティアに参加して、地域のニーズを把握したり、それぞれの立場の人とたくさん出会ったりして、地域とのつながりを築いていくのはどうでしょうか。活動を通して、自分が何を誰に対して始めるべきかなど具体的な方法を思いつくヒントになるでしょう。たとえどんなに小さな一歩だとしても、動き始めることが大切だと思います。