にらレバライター、BEEK DESIGN スタッフとして編集・デザイン業に勤しむ。元地域おこし協力隊・青少年育成プラザMiacisスタッフ。1991年生まれ。韮崎高校出身。音楽・サウナ・お寿司が大好き。
2018年12月にご紹介した《だんらんキッチン》のプロジェクトを覚えているでしょうか。
まちの中の空き家を自分たちの手で改装し、地域の人に開放したシェアキッチンをつくるというこのプロジェクトは、にらレバ掲載後、ラジオの出演依頼があったり全国誌で紹介されたりと、大きな反響がありました。
さらに嬉しいことに、にらレバの記事を読んだ方からお二人のもとに、「軽トラあげます」と連絡があったとのこと!にらレバでだんらんキッチンのことを見かけ、お二人が使うのではないかと思い、軽トラを譲ってくれるのだそうです。
私たちとしても嬉しいニュースだったので、安里夫妻にくっついて、引き渡しの場面に同行させてもらいました。
地方には物のやり取りが多いとは聞くものの、「軽トラをタダでもらう」なんてさすがにびっくり。
はじめは興味本位で同行させてもらった取材でしたが、ものをみんなでシェアして使うという考え方、自分たちで暮らしを作る「セルフビルド」という考え方を通じて、「豊かな生き方ってなんだろう」ということを考えさせられる機会になりました。
軽トラを譲ってもらう場面に同行
梅の花も咲き始めた3月のよく晴れた日、軽トラを譲ってくれるというカップルを訪ねて、北杜市明野町まで行ってきました。
韮崎駅から車で約15分とあまり離れていませんが、狭い山道を通る道のりはちょっとした冒険気分。山道を抜けて開けた場所の一角に、今回お世話になるお二人が暮らすお家はありました。
標高が上がるので、見える景色も韮崎と違ってきます
コミュニティサービスを通じて物を譲り合う
軽トラを譲ってくれるのは、ポルトガル人のヌノさんとポルトガルと日本のハーフのエリカさんカップル。
実は、お二人と安里夫妻は、使わなくなったものを無料で人に譲る『オカネイラズ』というコミュニティサービスを通じてちょっとした知り合いだったのだそうです。(その際は、安里夫婦がアップした廃材を、ヌノさんたちが「ロケットストーブに使いたい」と言って引き取りました)
「ポルトガルに帰るから使ってもらいたい」
エリカさん、ヌノさん
今回お二人は、ポルトガルに帰ることになり、軽トラをオカネイラズに出そうかと検討していましたが、Facebookでにたまたま目にした《だんらんキッチン》の記事を見て安里夫妻のことを思い出し、二人が使うかなと思って直接連絡をしてくれたのだそうです。
家の中に招いていただき、まずはお茶タイム
明野町での1年半の生活を楽しそうに振り返るエリカさん
久しぶりの再会を喜ぶ睦美さん
もらったものを使って、自分たちの暮らしをセルフビルド
部屋には、安里夫婦からもらったり自分たちで集めたりした廃材でつくったというロケットストーブが。
家には隙間が多い上に北杜の冬はとても冷えるので、「このストーブがなければ生きていなかったかもしれない」と話していました。
他にも、断熱材を自分たちで壁に取り付けたり、畳を変えたり壁を塗ったりと、セルフビルドで自分たちの生活を作っているところが《だんらんキッチン》のやっていることと共通しており、元々親しい友人だったかのように話が盛り上がります。
「お風呂がないから薪風呂をつくろうと思ったけど間に合わなかった」と話すヌノさん。
それに対して、数年前、韮崎よりもずっと田舎の身延町というまちで民泊をやっていたという安里夫妻からは、2時間(寒い日は3時間!)かけて薪風呂を沸かしていたというエピソードが飛び出しました。
ヌノさんとエリカさんの生活を見たことで当時の自分たちの生活が思い起こされ、「暮らしの豊かさってなんなんだろう」と少しセンチメンタルになってしまったと安里さんは後に語ってくれました。
薪風呂に使おうと思っていた廃材
軽トラ以外にもいっぱい譲ってもらっちゃいました!
「他にも欲しいものがあったら持って行って!」とあれこれ勧めてくれるエリカさん。
それに対して、「そんなにいらないでしょ。」とつっこみを入れるヌノさん。
そんな微笑ましいやり取りを聞きながら、しっかりと欲しいものを物色する女性陣・・・(笑)(睦美さんと窪田)
軽トラのほかに、洋服や椅子やたこ焼き機まで譲ってくださいました。
(ちゃっかり窪田も便乗して、「火の鳥」「AKIRA」の全巻セットをいただきました・・・笑)
いよいよ軽トラの引き渡し!
お家散策が落ち着いたところで、いよいよ本題である軽トラの引き渡し。手続きを進めていきます。
名義変更の書類を記入してもらい・・・
残っている保険料は月で割って、残り分は安里夫妻からエリカさんに支払われます。
それ以外は本当に無料なんです!軽トラが無料!あらためて、すごい・・・!
この軽トラも、元々ヌノさんたちが地域の方に譲ってもらったものなのだそうです。
「みんなすっごく優しくしてくれたんだよ」と語るお二人。お二人が受けた優しさがめぐり巡って他の人にも受け継がれるのは、本当に素敵なことだと思います。
タイヤにつけるチェーンも譲ってくれました。
ヌノさんさんに乗り方や注意点を教わり、いよいよ引き渡しが完了です!
もらった軽トラは、今度はみんなでシェア!
この日にもらった軽トラは安里夫妻が管理しますが、
誰でも使うことができる仕組み
にするつもりだそうです。
4人のように本格的なセルフビルドはしていない人でも、木材を買ってちょっとした棚をつくってみようかなというときや引越しのときなどに借りられる軽トラがあったら便利ですよね。
安里さんたちはこの「みんなでシェアして使う」という概念を、『コビルト』という仕組みで表しています。
道具も人手もシェアしながら、気軽に欲しいものがつくれるようになったら、自分自身で「豊かな暮らし」を作り出していくこともできるかもしれません。
軽トラを通じて「豊かさ」について考えることになるとは思っていませんでした。記事を通してお二人にお会いできたこと、そしてまたこの記事で山梨での暮らしの一つをみなさんにご紹介できたことを嬉しく思います。
ヌノさん、エリカさん本当にありがとうございました!日本に帰ってきたらぜひ韮崎に遊びに来てくださいね!
だんらんキッチン6月完成予定...?
だんらんキッチンは、6月ごろ完成予定です。
安里さん夫妻は別の仕事の合間を縫って作業を進めていますが、少しずつ完成に近づいているのが感じられます。地域の中学生や高校生が手伝いに来たり、作業のあとはみんなでご飯をつくって食べたりと、つくっていく過程でもすでに『だんらんキッチン』の中に「だんらん」が生まれています。
まだまだお手伝いさんも募集中。「1日だけセルフビルドを体験してみたい!」というように、イベントに参加するようなつもりで気軽に参加するのももちろんOKです。興味のある方はぜひだんらんキッチンのお問い合わせフォームまで。
にらレバでも引き続き、その後の様子をお伝えしていきたいと思っていますのでお楽しみに!