山梨県内初のふるさと納税「電子感謝券」が韮崎市でスタート。関係人口を増加させる制度の狙いと魅力とは?

プロジェクト

自分自身の故郷や、応援したい自治体に寄附ができる「ふるさと納税」に注目が集まっています。所得税や住民税の還付や控除が受けられるとあって、ここ数年で利用者も大幅に増え、認知度も高まってきました。

駆け込み時期となる年末には、自治体ごとに寄附額の多寡が注目され、何十億円という単位で話題になったりもしています。

そして現在ふるさと納税には、国が主導し、改正と工夫が行われ、質的な変化が訪れています。

今回の記事では、山梨県内で初めて韮崎市に導入された「電子感謝券」の紹介と共に、ふるさと納税とまちづくりに関して、考えをまとめてみます。

ふるさと納税の制度変更でどう変わるのか?

まずはじめにふるさと納税についてのあらましを確認しておきます。平成30年度の実績では、全国での寄附額が5,127億円にのぼり、寄附件数は2,322万件となっています。それぞれ前年比で約1.4倍と約1.34倍となっており、順調に伸びていることがわかります。

冒頭でも触れたように、ふるさと納税は制度改正が行われたのですが、その内容をご存知でしょうか。

要点をまとめると、還元率3割超えまたは地場産品でないものを返礼品としていると、2019年6月以降の寄附控除の対象から外れるというものです(改正地方税法)。ふるさと納税への注目度の高さの要因のひとつに、寄附金額に対して大幅な還元率を誇る自治体の存在がありましたが、この法改正をもとに、「圧倒的にお得だから寄附をする」という行為が抑制されることになりました。

ここから読み取れるのは、制度を主導する国として、過剰な返礼品競争を抑え、本来目的としていた「応援したい自治体に寄附をする」というふるさと納税に立ちかえるという態度です。

この制度改正によって、ふるさと納税を実施する自治体はより一層の工夫が求められるようになりました。

新しく始まったふるさと納税の返礼品「電子感謝券」で地域を訪れるきっかけをつくる

ふるさとチョイスのwebサイトより引用

このような背景の中で韮崎市が導入したのが「電子感謝券」です。山梨県でこの仕組を導入するのは韮崎市が初めてで、全国では24自治体で導入されています。

電子感謝券は、ふるさと納税の返礼品として提供され、自治体が定めた加盟店での買い物や食事などに利用できる券(電子ポイントを利用)で、「電子」の名の通り、スマートフォン等のアプリを介して利用する仕組みとなっています。

この仕組みの特徴は、寄附をすることでお礼の品が送られてくるという従来の仕組みが、いわゆるショッピング形式であったのに対し、実際に現地を訪れることで活用できる観光サポートの側面があることでしょう。

同額の寄附によるお返しであっても、電子感謝券の方が、実際に地域を訪れる際の交通費や宿泊費、飲食代など、提供されるお返し以上の経済効果が見込めることもポイントです。

韮崎市内の13店舗からスタート: 宿泊施設に利用することも

韮崎市総合政策課の平賀さんにご説明いただきました。

韮崎市の電子感謝券の提供は、2019年8月にスタートしましたが、現在13箇所で利用することが可能となっています。

飲食店や小売店での利用はもちろん、宿泊施設での利用ができるため、韮崎を訪れる際に利用しやすいものとなっています。注意点としては、小売店で利用する場合、該当商品(地場産品など)のみが対象となるため、購入したいものが電子感謝券の対象かどうかを予め確認しておくことが必要です。

電子感謝券を導入した狙いについて、韮崎市総合政策課の平賀さんはこう言います。

新しい取り組みを積極的にやっていきたいという思いです。実際に訪れていただいて、韮崎を知っていただければと考えています。

しかし課題もあり、そのひとつが事業者のみなさんに認知していただくのが難しいことや、魅力がまだまだ発信できていなくて、電子感謝券を利用できる箇所がなかなか広がっていかないことだと言います。解決のために、事業所への協力依頼を行ったり、PRチラシを作ったりということを行っているそうです。

新聞広告への出稿なども通して魅力を発信中だそう

ちなみに韮崎市のふるさと納税額は、2018年の実績で9,483件の寄附が集まり、合計1億4700万円となっています。2019年度は、それを上回る目標を立て、進めていると言います。

まちづくりのビジョンをともに描き、「韮崎”ゼイ“」をかたちづくることがスタート

ふるさと納税の質的な変化が起こっていく中で求められるのは、まちに住む人々や企業と行政が連携していくことでしょう。

従来のふるさと納税は、「地域の魅力」というのは建前に過ぎず、実質的には「お得さ」による物質的な競争でした。しかし制度改正でお得さが目減りした分、より本質的な地域の魅力を訴求することによる競争となっていくのだと思われます。

その中で大事なのは、従来の行政が窓口となり寄附者を集め、事業者から返礼品を手配するという一連の流れによって生じている行政側が提供するサービスだという認識から脱却することでしょう。ふるさと納税を取り巻く事態を、まち全体のこととして捉えましょうということです。

具体的に必要なことは、ふるさと納税の制度を活かし、どのように寄附者との関係値を築くのかという方針であり、その築き方は、まちがどうなりたいのかというビジョンと紐付いたものである必要があるでしょう。

「お得だから」という理由が十分に通用しなくなったことで、むしろ明らかになるのは、まちごとの本質的な魅力そのものであり、その伝え方の試行錯誤になるはずです。

「勢」をどう作っていくのか?

そこで大事な視点として、「韮崎”勢”」という見方を示してみます。例えば、オリンピックを思い出していただくとわかりやすいかもしれません。オリンピックでは、陸上競技やサッカーなど比較的メジャーな競技から、馬術などのマイナー競技まで、全339種目の競技が行われます。

そこで開催中に連日報じられるのが、各種競技の詳細と合わせて、全体的な日本勢の動向です。個人やチームといった単位を超えたところで、「勢」という面での捉え方がされるわけです。つまり、点での活躍を結んでいくと、「勢」という面単位の活躍になるのです。

まちづくりに求められるのもこの視点で、メジャーな商品や観光地から、ニッチな体験まで含めた「まちの魅力をつなぐこと」を通じて、面をかたちづくり、まち全体としての魅力を示していくということです。

そうすることで、例えばふるさと納税であっても、寄附者との間に築かれる関係のパイプを太くしていくことができるはずです。

次世代のまちのゆたかさにつながる、コミュニケーションとしてのふるさと納税の利用促進

この見方は、まちを拠点にする事業者や、暮らす人々が、積極的にまちのために行動しましょうということではありません。ふるさと納税をはじめ、まちづくりとの協働を考えることが、結果的にゆたかなまちにづくりにつながり、事業や暮らしに還元される可能性を指しています。

再びオリンピックを例に出します。いま選手を応援する手段といえば、声援を送るくらいしかないかもしれません。しかし一方でまちを考えてみると、「良い街ですね、応援しています」と声援を送るだけでなく、まちを訪れて品物を買ったり、宿泊したりといった行動の他にも、より直接的な応援の方法としてふるさと納税があると位置づけることができるわけです。

将来的な見通しを付け加えるならば、今後は「良いまち」の定義が少しずつ変わっていく可能性があります。

税収が多く行政サービスが充実し暮らしやすいという「中を向いた」ものから、まちの外に関係値を築いている人たちが見える化されていて、中と外とをかわるがわる複数の関係性の束が結んでいるまちこそゆたかであるというふうになるのではないのでしょうか。これがつまり、応援されるまちと言われる具体的な姿でしょう。

まちの中からの連携をどう作るかが鍵

そんな将来を見据えたときに、ふるさと納税という制度は、まちと人が直接的につながるコミュニケーションであるといえるわけです。現在は、行政が主体になり、外向けに活動しているものなので、まちの中からは制度についての認識不足や、興味関心が薄くなったりしがちです。

しかし一方で、まちの外から稼ぐ(=外貨を稼ぐ)ことを、観光やお土産はもちろん、様々な事業を行なっている方々がねらっている現状があります。つまり、行政も事業者も同じ方向性を志向しながら、連携ができていないという見方ができそうです。

いま求められるのは、個々の思惑をこえた連携であり、その結果、面での魅力発信や、「勢」をかたちづくることになるはずです。

関係人口の本質と、ふるさと納税という手段を活かすこと

まちづくりや広く言えば地方創生の分野で最注目ワードになっている「関係人口」、そしてそれを増やす取り組みとは、本質的には、まちの中と外をつなぐコミュニケーションの手段を多様にし、関係性の束を様々につくり、面化していくことだといえます。

その中のひとつの切り口として、「お得だから」という視点から一歩進んで、まちづくりとふるさと納税をつなげて考え、この手段をどのように活かすのかということを、企業や個人が考えることも、ひとつのスタートとなるでしょう。

「まちへの応援としてふるさと納税」というあり方が改めて示されたいま、どのように伝え、どう行動につなげていくのが良いのかを考え続けながら、試行錯誤することが求められています。

言い換えると、これまで注目されていなかったモノやコトにスポットライトを当てるチャンスでもあります。韮崎”勢”で、市内からさまざまな魅力を発信していきましょう。一緒にやってみたいという方は、ぜひ問い合わせをしてみてください。

そして韮崎市にゆかりのある方へ。ふるさと納税は、その地域に住んでいなくても、まちづくりに関われる方法のひとつです。韮崎市からの「ありがとう」の意味でもある返礼品には、さまざまな地域の魅力的なものがラインナップされています。ぜひ覗いてみて、ふるさと納税をしてみませんか?

韮崎市内の皆様へ
韮崎市では、ふるさと納税の返礼品となる品物や、取り組みを広く募集しています。今回ご紹介した電子感謝券の利用受付について等もお問い合わせください。

お問合せ先:
韮崎市総合政策課人口対策担当
ふるさと納税専用ダイヤル:0551-22-1990
【受付時間】平日:8:30〜17:15
【E-mail】furusato@citi.nirasaki.lg.jp
【URL】http://www.city.nirasaki.lg.jp/

韮崎市外の皆様へ
韮崎市では、ふるさと納税を広く募集しています。電子感謝券は、下記のページより申請することができます。
ふるさと納税をして山梨県韮崎市にいこう!(ふるさとチョイス)

取材協力:
韮崎市総合政策課

参考文献:
ふるさと納税に関する現況調査結果(総務省)