「みんなの本棚」2023年2月号|大村記念図書館

 【編集部のつぶやき】

2月と耳にして、パッと思いついたのは「節分」でした。そういえば、私がまだ幼稚園生の頃、通っている園に赤と青のカラフルな鬼が棍棒(たぶんダンボール)を片手にやって来ました。ひどく驚いた私は、他の園児たちと一緒に泣き叫びながら必死になって豆を投げつけた記憶があります。今となっては、いい思い出です。

なぜ、日本人は、節分に豆をまくのでしょうか。どうして鰯を柊とともに玄関に飾るのでしょうか。ご存知の方はいらっしゃいますか? お恥ずかしながら、私は知りませんでした。

ググってみると、①福豆に使われている大豆には穀物の霊が宿っていて悪霊を寄せ付けないため、②鬼の目を打つ「魔目」や魔物をやっつける「磨滅」の意味からまかれるようになった…など諸説あるようです。

このように、日本には古来から続く様々な伝統行事が残っていますが、行事の本来の意味を置き去りにしたまま形だけ行っている方も多いのではないでしょうか。

変わり続ける時代の中で、ずっと変わらないもの。時には、先人たちが残した歴史や文化、伝統に思いを馳せてみるのもいいものです。あなたの知的好奇心をくすぐる書籍たちもまた、図書館であなたが手に取ってくれるのを待っているかもしれません…。

さて、今月も韮崎市立大村記念図書館の皆様が厳選した、イチオシの書籍が勢揃いです!図書館を訪れて、ぜひ手にとってみてください。

加藤館長の今月のイチオシ!

公共図書館の冒険

編集:柳与志夫・田村俊作 出版社名:みすず書房

あらすじ

公共図書館の歴史を見直し、「もうひとつの」図書館の可能性について考えることを目的としたオルタナティブ図書館史研究会の成果をまとめた論集です。日本の図書館の成り立ちのほか、提供する資料とその整備について、また、出版業界との関連、図書館員についてなど、各々歴史を紐解きつつ論考しています。

とはいえ、単純に図書館のたどった歴史を編年形式で記述している訳ではなく、各章ごとに独自のトピックを設けて整理・考察されているため、図書館業界の背景についても深く知ることができます。日本の図書館の成り立ちから現状の課題までを一望し、図書館の役割と意義が俯瞰できる一冊です。

 

館長が語る「ここがすごい!」

カウンターでの印象からか、図書館は物静かな職場と思われがちですが、実は、様々なイベント開催や、市内保育園他で読み聞かせを行うなどアクティブな業務も多く、重たい本を扱う体力勝負の仕事なのです。

本書は、図書館の仕事を内側と外側からの視点で捉え、メディアで取り上げられる図書館関係のトピックにも触れられており、図書館の中の人も外の人も興味を持って読めるのではないでしょうか。

個人的に面白かったのは、図書館を描いた作品から図書館のイメージを論じている個所でした。また、図書館とそれを取り巻く環境が抱える様々な問題を取り上げているのですが、批判的な書き方ではなく、公平中立の立場が守られている印象です。

図書館と出版業界の両方に身を置いたことのある自分にとって一番興味深かったのは、両者の関係性に切り込んだ部分です。山梨県では、「やまなし読書活動促進事業」という取り組みがあり、私も関わっているのですが、公共図書館、書店、大学のいわゆる官・民・学が揃った他ではあまり見られない素晴らしい活動です。

書店に限らず、図書館と地元のお店が手を取り合って行う色々な取り組みが地域の更なる活性化に繋がることを願っています。

 

場所 背ラベル
一般 棚21 016.2コ

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

親子で読みたい絵本

まゆとおに

文:富安 陽子 絵:降矢 なな
出版社: 福音館書店

あらすじ

やまんばの娘まゆは、ある日つののはえた大きな人に会いました。まゆは鬼とは知らずについていきます。鬼はまゆを食べようと大きななべにお湯を沸かします。まゆは何も知らずにお手伝いをします。

なべのお湯はぐらぐらとわきかえります。鬼が「さあお嬢ちゃん、熱いお風呂にお入り」というと、まゆは、「親切な人にはいつも礼儀正しくしなさい」というお母さんの言葉を思い出して、「お先にどうぞ」といい、そして…。

 

赤松さんが語る「ここがすごい!」

知らない人について行ってしまうまゆにどきどきしますが、何とかまゆを食べようとする鬼と、無邪気なまゆのやりとりが愉快です。

情けない鬼の表情、勇敢なまゆ、悠然と構えるやまんば、どの場面にも登場するきつねや見開きいっぱいの絵も…是非細部までじっくりご覧ください。

鬼を背負って走るまゆと鬼の大きさの違いからまゆの怪力ぶりがわかります。また、やまんばの食事というと動物を丸ごと食べている様子を想像しますが、質素で家庭的な食事なのは意外でした。

文中、「きょうは ちっと、さむいんでな」という鬼のセリフがありますが、やまんばとまゆはまるで真夏の装いであるところもお見逃しなく!(他にもやまんばシリーズはあります)

 

場所 背ラベル
絵本創作日本 Eフ

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

10代で出会いたい本

かわいい古代

著者:譽田亜紀子 出版社名:光村推古書院

あらすじ

「人々が文字を使い、自分の気持ちを現すことができなかった時代だからこそ、ものに対して純粋にエネルギーを掛けることができたのかもしれないし、文字で残っていないからこそ、 私たちは彼らが作ったものに対して、心の赴くままに鑑賞し、感じ、受け入れることができるのかもしれない。」

この書籍では、歴史的な内容に加え、人々の生活を想像させるような著者の解説と一緒に、土器や土偶、石器、装飾品など様々なものが紹介されています。 土偶の可愛さや、美しさを通し、当時の人々の生活や時代に思いを馳せてみるのはいかがでしょうか。

 

有井さんが語る「ここがすごい!」

今から1万6千年前に、1万3千年間続いたと云われる縄文時代。日本人のDNAには縄文時代の記憶が根強く残っており、食生活などの急激な変化により現代病が生まれたとも言われています。

それはさておき、この韮崎からも愛称ミス石之坪と呼ばれる土偶が出土されています。縄文時代中期・紀元前3000〜2000年に造られたとされており、「縄文ドキドキ総選挙2022」では見事全国第1位に輝きました。

残念ながらこの本にはミス石之坪は掲載されていませんが、その他のかわいくてユーモア溢れる土器や土偶、石器や装飾品の数々が、著者のセンスある癒しの言葉と一緒に掲載されています。見ているだけで楽しい気分になること間違いなしです。

 

場所 背ラベル
旬の本&話題の本コーナー 210.2コ

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

大人が読みたい本

超図解「デザイン思考」でゼロから1をつくり出す

著者:中野明 出版社名:Gakken

あらすじ

自分の考えをデザインしていく観点で、思考を可視化していくテンプレートを紹介しています。 本書の目的は、創造をうながす思考力を培うことにあります。

様々なテンプレートを活用することで、実践的な着想が得られる構成になっています。また、取り組んでいる課題で煮詰まった頭の中をすっきり整理したい人にもおすすめの内容となっています。

 

篠原さんが語る「ここがすごい!」

多くのメディア等で、可視化して物事を考えるメリットが説かれている昨今。本書のすごいところは可視化するパターンの多様さにあります。読者は自分の思考にあった可視化のパターンを、本書から見つけることができます。

また、本書で参考になった考え方として、「失敗しながらでも、前へ進め」と述べているところです。つまり、可視化した思考がうまくいかなくても、思考を停滞させずに推し進める重要性が内容全体を通じて強調されているのです。

可視化した思考は、どんな状態であれ前進させ変化をうながしていく必要があります。それが「思考をデザインしていく」ことなのだと本書では述べられています。

本書で、考え方をデザインして推し進めていく癖を身に付け、まずは考えが変化していく思考過程を楽しんでみてはいかがでしょう。

 

場所 背ラベル
一般 棚26 336.1ナ

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

2月の季節展示から厳選!

林真理子の名作読本

著者:林真理子 出版社名:文藝春秋
※画像は刊行当時のものです。

あらすじ

作家の林真理子さんが、これまでに読んで感動した文学作品を中心に54冊の名著をエッセイ風に解説した一冊。

敷居が高い名作たちも、林さんがその本を読んでいた頃に起きていた実体験や世相などに触れることで、親しみ深く身近な作品となって読書欲を喚起させます。

また名作の文章を例に挙げた文章読本も収録され、名作を読むだけでなく、名作から書くことも学べる一冊になっています。

 

篠原さんが語る「ここがすごい!」

エッセイの名手でもある林真理子さんの軽妙な語り口が、名作を気軽にひも解かせます。各作品1冊あたり3ページほどの解説で、どのページから読んでも入っていける構成になっています。

ラフな読書案内に思えますが、林さんの作家としての観点の鋭さに圧倒されます。その作品が持つ特質と著者の心情まで推し量り、時代性まで浮き彫りにさせています。

本を読む行為は、読んでいた時の心の在り様まで記憶に残る場合があります。特に名作といわれる本を読んでいた時の自分は、後で振り返ってみると得難い貴重な時間を過ごしていたと実感できるものです。本書は、そんな時間の感覚を大切にした名作読本といえます。

2月の季節展示は「難しい本のやさしい読書案内
名著といわれる本の多くが、読むのが難しく時間が掛かるもの。そんな名著が、絵本や図解などで読みやすくなっているものを展示しました。また著名人がエッセイ風に書いた名作の読書案内も集めました。この機会に、難解な本の扉を開けてみてはいかがでしょう。

[展示期間:2月1日(水)~2月26日(日)まで]

 

にらレバ編集部のおすすめ

独立国家のつくりかた

著者:坂口恭平 出版社:講談社現代新書

あらすじ

現政府に文句があるなら勝手に独立国家をつくればいい。それは即ち、ゼロから自分の「生」をつくりあげることだ! 路上生活のエキスパートたちに教えを請いDIYで「国」をつくった男による、日本を揺さぶる実践的革命の書。

 

窪田が語る「ここがすごい!」

みなさんにとって、お金とはどのくらい大切なものですか?

多くの人は「お金がないと生きていけない」と思っていて、「お金がないから」と諦めていることもたくさんあるかと思います。

でも、本当にお金はたくさん必要なのでしょうか?求めているのは、お金がないと得られない幸せなのでしょうか?

20代半ばで「独立国家のつくりかた」を読んだ私は、自分の価値観が大きく変わるきっかけに出会ったような感覚になりました。

土地や建物にお金を払うのはおかしいという考えで0円ハウスをつくってしまった著者の考えに触れると、「何に囚われていたんだろう」「自分は一体何を大切にしたいんだろう」とどんどん思考が深まっていきます。そして最後には、とてもシンプルで前向きな気持ちになることができるのです。

作家であり、画家であり、ミュージシャンであり、躁鬱病を抱えてもいる著者は、それらを全部さらけ出すことで、多くの人の心を救ってきました。

なかなか真似はできないけれど、「こういう生き方や考え方もあるんだ」と知るだけでも、少し前向きになれたり、人に優しくできたりすると思います。

 

場所 背ラベル
一般 棚25 304サ

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

大村記念図書館からのお知らせ

\おはなし会/
図書館読聞かせコーナーにて季節の絵本の読み聞かせを行います。参加された方にはおりがみと折り方の解説をプレゼントします。
【開催期間】2月11日(土・祝)14:00〜14:20
※ 対象は、マスクの着用が可能な「2歳~小学校低学年」のお子さん(申込み不要)

\こころを癒すカウンセリング心理学/
ニコリ3階「多目的ホール」にて、放送大学・山梨大学・韮崎市立大村記念図書館共催の公開講座を行います。
山梨大学教育学部准教授の田中健史朗氏に、専門的なカウンセリングは何をするのか、日常の相談とは何が違うのか、カウンセリング心理学の観点から説明していただきます。
【開催期間】2月12日(日)13:30〜14:45
放送大学山梨学習センターにて電話で申込みを受付中(055-251-2238)。(無料/先着順/定員:40名程度)

\楽する図書館 /
インターネット上から韮崎市立大村記念図書館のご利用にお困りの方にむけて、図書館ホームページからの本の予約や貸出延長手続き、韮崎市電子図書館の利用の仕方などをお手伝いします。
韮崎市立大村記念図書館カウンターまたは電話(0551-22-4946)にて受付中。
(先着順/対象:韮崎市立大村記念図書館の利用登録をされている方、ご自身でインターネット接続可能なスマホ・タブレット・ノートパソコンなどをお持ちいただける方/定員:各回2名)
※韮崎市電子図書館は、韮崎市在住・在勤・在学の方が対象です。
【開催期間】2月15日(水)、22日(水)11:00〜(45分程度) 

\大人の為の朗読会・朗読のつどい/
ニコリ3階「多目的ホール」にて、市内3つの朗読ボランティアグループの方々にご出演いただき、成人一般、学生、目の不自由な方などに向けて朗読会を行います。(無料/申込み不要)
【開催期間】2月18日(土)14:00〜15:00

※コロナウイルス感染拡大防止に伴う利用規則として入場者は、氏名・連絡先・住所の記入が必要となります。予めご了承ください。 

上記イベントについての詳細は、チラシ、またはホームページをご覧ください。
最新情報は図書館まで、お問い合わせください。(韮崎市立大村記念図書館:0551-22-4946)

 

大村記念図書館の基本情報

所在地 : 〒407-0015 韮崎市若宮1丁⽬2番50号
営業時間: 平日・土日祝日 10:00~19:00
電話番号: 0551-22-4946 (FAX)0551-22-4950
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