リレー記事Vol.004『クボタイクミと韮崎と未来』


人は何歳で大人になるのか?
一年前のいまごろ、そんなことで悩んでいた。

27歳という年齢を迎えるには、なんだか覚悟が必要だった。

名だたるロックスターたちが死を遂げた27歳という年齢。
中途半端な数字ではあるが、大人と子どもの境目のような気がした。
糸井重里さんも本の中でそう言ってた。
平均寿命の伸びに伴って自立も遅れている現代、大人として何か考え出すのは27歳だと思う、と。
(正確な引用じゃなくてごめんなさい)

地域おこし協力隊の任期は3年間。
3年目にちょうど27歳になった私は、やりたいことがわからなかった。
だけどこの歳で「やりたいことがわからない」なんて言っていてはいけないような気がした。
任期が終わったら何をするのかと聞かれるたびに、罪悪感を感じながら、「わからないです」と答えていた。

そんな私がこの4月から新たなスタートを切った。
3月で協力隊を卒業し、フリーランスの編集者として独立したのだ。
そしてなんと、週に2、3日は憧れのBEEK designでアシスタントとして働けることになった。
にらレバの編集長も、引き続き任せてもらえる。

これは私にとって、何より喜ばしい展開であり、今はとても前向きな気持ちになれている。

このスタート地点に立つまでに、本当に多くの人に力を貸してもらったし、様々なことを考えたり感じたりした。このリレー記事ではそんな話を少し書いてみたいと思う。

価値観を変える場所

私が協力隊として一緒に働いてきた『NPO法人河原部社』という団体は、社会の常識やルールに縛られないチームだった。だけど、反社会というわけではなく、むしろ社会をよくするために本当に必要なことは何なのかを考えて、公共の事業の中でそれを実践していた。

韮崎市からの委託を受けて河原部社が運営する「青少年育成プラザMiacis(ミアキス)」は、中学・高校生が自由に過ごすことができて、様々な価値観に触れることのできる施設だ。
 

私はMiacisの立ち上げに携わって、「あなたは何に進化する?」というキャッチコピーとロゴマークをつくり、オープンからの2年半の間、広報担当のスタッフとして働かせてもらった。


ミアキスの面白いところは、中高生のうちから大人を観察できることだと思う。

この世界は大人になってもわからないことだらけだし、大人だって悩みは尽きない。そんな当たり前のことに私が気付いたのは、割と最近だった気がする。

今は、いつまでも悩みがあるのも悪くはないし、大人は自由で楽しいよということが中高生に伝わっていればいいなと思う。

人目を気にしていた自分の変化

何か答えを求めるように、私はよく本を読んでいた。どの本を読んでも、「人目を気にするな」「人と自分を比べるな」「やりたいことをやれ」と書かれているような気がした。

それらの言葉は知識として私の中に蓄積されていったが、自分が実践するのはなかなか難しかった。人目を気にする必要はないと言われても、気になるものは気になる。

だけど、世界は広い。
自分が知っている狭い範囲の中の”人の目”を気にすることに、果たしてどれくらいの意味があるのか。一つのコミニュティに依存しているとそこからはみ出るのが怖いけれど、色々なところに関係性を築いておくと、どこかに共感者はみつかるし、”正しさ”なんて不確かなものだということに気付けると思う。

私が少しずつそんな風に考えるようになったのは、側に魅力的な大人がたくさんいたからだ。いくつになっても新しいことに挑戦し続けて、時には悩んで、それでも人や自分のために行動し続ける30〜50代の姿を間近で見てきて、何でもできるんだなと思った。

やりたいことがわからなくても、できることはある

「やりたいことがわからない」と悩んでいたときに、励まされた記事がある。

やりたいことなんかないけど、しあわせでいたい人の話

これは研修で福井県鯖江市に行ったときに出会った森くんという同級生の男の子が書いた記事。

世の中には「やりたいこと」タイプの人間と、「ありたいすがた」タイプの人間がいるのではないかという提案に、すごく納得した。

やりたいことが思いつかなくても、前を向いていないわけじゃないんだ。

良い波がきそうな場所を開拓して、できるだけそこにいる時間を増やして、これはと思う波が来たら勢いで飛び込んでみる。やりたいことがよくわからかなった私は、そんな暮らし方をしていた気がする。

流されやすい私にとって環境はとても大切だということはわかっていたから、身を置く場所だけは意識していた。

そうしたら、想像以上に良い機会に恵まれた。
人生何があるかわからない。
5月には28歳になる。
やっと、大人だと言うことを受け入れられそうな気がしている。

「韮崎」というまちに来て、多くのことが変わった。
そしてこれからも、きっと多くのことが変わっていく。
私は引き続き、このまちで暮らし続ける。
私の未来も、このまちの未来も、まだまだこれからだ。

たのしく、前向きに、まだ見ぬ日々を進んでいきたい。