標高1,600m超に位置する甘利山グリーンロッジは、甘利山の登山口にある市営の簡易宿泊施設です。2023年には、敷地内に『雲の上のキャンプ場』をオープン。登山客やキャンプを楽しむ方でにぎわっています。
富士山と甲府盆地を一望できるこの『雲の上のキャンプ場』を運営するのは、歳森宗一郎(としもりそういちろう)さん。2021年8月〜2024年3月まで韮崎市の地域おこし協力隊として活動し、管理運営をされていました。同年、合同会社NIRAPS(二ラプス)を立ち上げ、現在もなお韮崎市を盛り上げる活動を続けています。
今回は、キャンプ場の運営をはじめ率先して韮崎の自然を守る歳森さんに、移住や韮崎市の魅力について伺いました。
大企業の営業マンからロッジの管理人へ
歳森さんは東京都のご出身。大手企業の営業マンとして、大阪や東京など主要都市で活躍されていました。
しかしコロナウイルスの蔓延もあり、転職を検討。そこで知ったのが『地域おこし協力隊』の存在でした。
営業マン時代から"後継者不足"の課題を問題視していた歳森さんは、対策につながる協力隊の活動に興味を持ちはじめます。
転職を考えた同時期に、協力隊の制度や募集している地域、活動内容など、各地のより詳しい情報を集め、本格的に検討したということです。
希望地とミッションが合致。韮崎へ
歳森さんは、総務省が主催する「地域おこし協力隊」として韮崎にいらっしゃいました。
地域おこし協力隊とは、都市地域から人口減少や高齢化等の進行が著しい地域に移住して、地域ブランドや地場産品の開発・販売・PR等を行い、地域おこし支援や、農林水産業への従事、住民支援などの「地域協力活動」をしながら、その地域への定住・定着を図る取り組みです。
つまり単純な移住とは異なり、"住みたいまち"に加えて、活動として"やりたいこと"が合致することが重要です。
多数ある地域おこし協力隊の募集の中から、「韮崎」を選んだ理由を伺いました。
ーー選ぶ“場所”も大切ですが、地域おこし協力隊としての“活動内容”も選択するうえで大切ですね。
はい。私の場合はキャンプが好きだったので、自然保護やキャンプ場建設などの活動を中心に調べました。
ーーキャンプや自然保護活動は韮崎以外の地域でも募集していそうですが、なぜ韮崎を選んだのですか?
おっしゃる通り、キャンプ場建設や自然保護などを活動内容としている地域は複数ありました。実は奈良県や岡山県も検討しましたよ。ただ、関東圏で探す必要も出てきて、地域を絞ったんですよね。そこで韮崎の募集を見つけ、最終的にご縁があり決まりました。
荒れた土地や施設と向き合う奮闘期
甘利山グリーンロッジは、昭和51年に開業し、今年48年目になる施設です(2024年現在)。
しかし歳森さんが来る前の直近の2年ほどは使用されておらず、建物も土地も荒れていました。営業を再開するには、設備の掃除をはじめ、やらなければならないことが山積みの状態であったといいます。
ーー土地や建物の整備からとなると、かなり大掛かりですね。修繕や整備などのご経験はあったのですか?
いえ、実は知識も技術もないです。初めて見た時は驚きましたが、「やるしかない!」という思いでやっていましたね。初めは知り合いもいなかったので、本当にひとりぼっちでコツコツやっていましたよ(笑)。
しかもここ(甘利山グリーンロッジ)は10月になると最低気温が一桁になる日も多く、凍えながら土地の整備をした日もありました。
ーーとなると、11月以降の作業は難しいんですね…。
はい。冬の時期は閉山するため、作業ができないんです。だから、その間にキャンプ場の運営に必要な知識を身につけようと資格取得に励みました!「キャンプインストラクター」や「甲種防火管理新規講習」など、協力隊の期間中に10個くらい取りましたね。
あとは市内外問わず顔を出して挨拶に伺っていました。冬以外はほとんど甘利山にいますから、この時期しかなくて……。冬場だけで300〜400枚ほど名刺を配ったと思います!
協力隊の活動はもちろんのこと、人とのつながりも大事にする歳森さん。営業経験で培ったコミュニケーション力やメンタルの強さを武器に、各地とのつながりを深めています。
韮崎だからこそ見られる景色に心を打たれた
ーー初めて韮崎に来た時の印象って覚えていますか?
覚えていますよ!やっぱり一番印象的だったのは景色の素晴らしさですね。南に富士山、北に八ヶ岳、東に偽ヤツと呼ばれる茅ヶ岳、西に南アルプス山系の鳳凰三山。四方をこんな壮大な山に囲まれ、一度に眺められるのは、山梨県内の中でも韮崎だけじゃないかな。韮崎のなかのどこからでも素晴らしい景色が見れるのは魅力です!
ーーたしかにひとつの場所でこれだけ壮大な山々を一度に眺められるのは、韮崎ならではかもしれませんね!
そうなんですよ。韮崎は本当にいい場所。もっと地元の人にも自信を持ってほしいですね。韮崎という地域が魅力的な場所であることを、もっとアピールすべきだと思います。そしてこの自然を大事にしていきたい。本当に素晴らしいですよ、この景色は。しかも市内から30分のところに避暑地の甘利山まであるんですから。贅沢な場所です。
移住を検討する方はもちろんのこと、韮崎市に住む方にもこの魅力を改めて伝えたい!と感動を言葉に乗せて話してくださいました。
程よい田舎。一通りそろっていてちょうどいい
韮崎市に来て4年目の歳森さんに、まちの住みやすさについて伺いました。
ーー韮崎市での生活はどうですか?
韮崎は便利ですよ!スーパーとか薬局、ホームセンターなどがそろっていて、周辺でほぼそろいます。田舎とはいえ便利です。温泉は3つもありますしね!
ーーイメージと違ったことは…?
思ったより賑やかでびっくりしましたね。もっと田舎かと思っていましたけれど、国道といった大通りもあるし古いお店も新しいお店もあるし。コンビニもないほどの田舎まちを過去に見てきていたので、そういう意味ではイメージと違って驚きました。不便なくちょうどいい田舎まちで、住みやすいです。
ーー韮崎に移住して困ったことはありますか?
ペットと一緒に住めるアパートがあまり多くないことですかね。我が家は愛犬がいるので、引っ越してくる時にペットOKの物件を探したのですが、なかなかなくて。なんとか入居はできましたが、今度は愛犬を遊ばせる場所に悩みました。市内の公園はペットがNGなので連れて行けません……。そんなこともあり、いつかドッグランのようなペットと遊べる施設も作りたいなぁなんて考えています。
ーー「ないなら作ろう!」という発想がかっこいいですね!
誰かがやらなきゃ始まらないですからね。協力隊として韮崎に来たので、まちがより良くなると思うことは、自ら進んで企画したり提案したりしています。時間はかかるかもしれませんが、“いい”と思うことは積極的に形にしていきたいです。
韮崎市に来て数年にもかかわらず歳森さんを慕う人は多く、インタビュー中にも「ちょっと顔を出したよ」とロッジを訪れる方も……。地域おこし協力隊として任務を果たす姿はもちろんのこと、韮崎への想いや溢れんばかりのバイタリティが周囲の人を動かしているのだと感じました。
これからは、登山道の整備を行う部隊を作り、今ある自然の中で山道を整える活動をしていきたいと語る歳森さん。韮崎の自然を守る先導者としてこれからも活躍してくれることでしょう。
甘利山グリーンロッジや敷地内にある『雲の上のキャンプ場』は、宿泊はもちろんのこと、日帰りバーベキューも可能。富士山や甲府盆地が一望できるほか、運がよければ雲海や満天の星空も見られる絶景スポットです。
定期的にピラティスや音楽祭などのイベントも開催しているので、ぜひ遊びに行ってみてくださいね。
※11月中旬から4月下旬までは冬季閉鎖となります。詳細は下記ホームページやInstagramをご確認ください。
『甘利山グリーンロッジ』の基本情報
- 住所:山梨県韮崎市旭町上條北割1-9
- 電話番号:090-8595-6141
※9:00~17:00 - 定休日:11月中旬~4月30日(冬季閉鎖)
- HP:https://amariyama.com/
- Instagram:hhttps://www.instagram.com/amariyama?igsh=MXhzeTk1cTFkbm84OQ==