「手ごろな価格で飲める良いお酒を家庭に」200年以上の歴史を持つ福徳長酒類の酒造りの様子を大公開!若手社員さんのインタビューも


以前より告知していた『ニラサキのシゴト』が今回から本格的にスタートします。

「地元には仕事がない」という先入観やイメージで韮崎を離れる人が多い中で、「実は韮崎にもこんなに魅力的な企業や働き方があるんだ」ということを知ってもらえるよう、企業や働く人を取材しながら、韮崎の仕事についてお伝えしていこうという企画です。

一回目となる今回は、穂坂町宮久保の地で1993年の操業開始から26年間お酒を造り続けている≪福徳長酒類ふくとくちょうしゅるい株式会社 韮崎工場≫さんにお邪魔してきました!

工場内をぐるっと回りながら、清酒が出来上がるまでの一連の流れを見せてもらった後、2名の若手社員の方に、会社や仕事のことと、これからの韮崎のことについて語っていただきました。

≪福徳長酒類株式会社 韮崎工場≫ってどんなところ?

豊富なラインアップの紙パック清酒が韮崎工場製の代表製品

【韮崎工場についての基本情報】
所在地:韮崎市穂坂町宮久保5228-1
韮崎工場の事業内容:清酒の製造
従業員数:41名(パート含む)

福徳長酒類株式会社は、酒類全般の製造・販売を手がけるオエノングループの事業会社で、本社は千葉県松戸市にあります。同社の主力工場で、福岡県にある久留米くるめ工場では「博多の華 むぎ」をはじめとした本格乙類焼酎を製造し、全国へ出荷しています。

今回お邪魔した韮崎工場では清酒を製造しており、「手ごろな価格で飲める良いお酒」をコンセプトにした酒造りが特長です。手軽に飲める紙パックの「米だけのす~っと飲めておいしいお酒 純米酒・純米吟醸酒」などが特に人気で、平成15年に特許を取得した独自の技術『瞬冷造しゅんれいづくり製法』を用いた製造方法が特徴的。仕込みの際にどうしても発生してしまう特有の臭いを急速かつ強制的に取り除くことによって、従来の製造方法よりも”さらにスッキリ”した風味の清酒を造ることができます。

≪福徳長酒類株式会社 韮崎工場≫はどんなところ?

工場長の阿部さんを先頭に、工場内をぐるっと一周案内していただきました。

工場長の阿部賢治さん

工場案内前に、あらかじめ製造工程を説明していただきました。難しい専門用語が多いですが、大まかに言うと、「蒸した酒米を麹菌によって発酵させたあと濾過する」というのが清酒製造の基本的な流れのようです。

早速出発ー!!(写真満載です。みなさんも、工場を歩いて回っているようなつもりで読み進めてみてください!)


ここが製造ラインのスタート地点。はじめは、『フレキシブルコンテナ』と呼ばれるこの大袋に酒米が詰められて運ばれてきます。運び込まれる酒米は玄米から白米に精米済みのもので、韮崎工場では、水で洗う『洗米』、米を水に浸ける『浸漬(しんせき)』の順に作業が行われていきます。

この横長の機械の中で熱を加えながら米を蒸す工程は『蒸米』と呼ばれています。

麹菌の種付け。取材当日は動いていませんでしたが、レーンで蒸し米を運びながら、発酵させるための麹菌を振りかけていきます。

次は『製麴』(せいぎく)と呼ばれる工程。蒸し米に付いた麹菌を繁殖させるため、スクリューでかき混ぜ続けます。『製麴』にはおよそ43~46時間もの時間がかかるそうです…!

いくつかのタンクを通過しながら短時間で温度が下げられていきます。この冷却の際に用いられる『瞬冷造しゅんれいづくり』というのが、平成15年に特許を取得した醸造技術。短時間で原料を処理し、強制的に冷却、脱臭することで、通常の製法よりもさらにスッキリした風味に仕上げることができます。


タンクの温度など機材の作動は、コントロールパネルを用いて一括管理されています。写真は、製造グループ原酒職場担当の秋山佳奈さん

ある程度発酵を終えた時点でのタンクの中を覗いてみると、こんな感じになっていました。


ぶくぶくと発酵したあとには、「もろみ」と呼ばれるこのようなドロッとしたものが出来上がります。これをサラサラとしたお酒にしていくのがこの先の工程です。


先ほどの状態のお酒を搾り出す機械(圧搾機)。蛇腹状に繋がっている板と板の間にお酒を流し込み、空気圧で搾りだす仕組み

サラサラになったお酒が流れ出てきました

その後、さらに何重にも重なったフィルターを通しながら『濾過』

この後、酵素の活動を止めてお酒の劣化を抑えるための『火入れ』をしたら、『瓶詰め(パック詰め)』をして完成です!おいしいお酒が出来上がるまであともう少し……!

次々とパック詰めされていき…

段ボールに梱包して…


箱詰めされ、パレットに載せられた製品は倉庫で出荷を待ちます

製品は総務グループの手配で各地へと出荷され、みなさんの元に届きます。写真は総務グループの星野未来みくさん

韮崎育ちの若手社員に聞く、≪福徳長酒類株式会社 韮崎工場≫で働く暮らし

工場を案内していただいた後は、若手の女性社員さん2名にお話をうかがいました。

お一人目は、星野未来みくさん。北杜市に生まれ、中学以降は韮崎に在住しています。韮崎東中学校→甲府商業高校を卒業したのち就職し、現在入社3年目。総務グループで経理と出荷を担当されています。

お二人目は、秋山佳奈さん。韮崎生まれ韮崎育ち。韮崎西中学校→農林高校を卒業したのち就職し、現在入社2年目。製造グループ原酒職場で製造機材の管理や貯蔵タンクの温度管理などを担当されています。

左が秋山さん、右が星野さん

どうやって働いてる?どうやって暮らしてる?

—————お二人の日ごろの働き方を教えてください

【総務グループとして事務所で勤務する星野さんのタイムスケジュール】

7:30過ぎに出勤
8:00までに着替えを済ませる
8:00~10:00出荷業務
10:00~11:50経理業務
11:50~12:40お昼休み
12:40~13:30出荷業務
13:30~16:30経理業務
16:30退勤

【製造グループ原酒職場で働く秋山佳奈さんのタイムスケジュール】

6:30過ぎに出勤
7:00までに着替えを済ませる
7:00~8:00機械の立ち上げ
8:00~11:00モニターを監視しながら製造作業
11:00~11:50お昼休憩
11:50~14:30午後も引き続き製造作業
14:30~15:30機械洗浄
15:30退勤

—————お休みの日はどうやって過ごされますか?

星野「秋山さんとは職場以外でも仲が良くて、休日も秋山さんと一緒にいる日が多いんです。月に2回くらいは一緒に過ごしてるかな?」

秋山「そうですね」

星野「一緒に遊びに行くときは、ショッピングや食事をしたりすることが多いです。甲府にあるショッピングモールまで行くこともありますね。あとほかには、友人と音楽ライブなどで、市外県外に出て都内などに行くことも結構多いです」

泉「ちょっと車を走らせれば甲府まで行けるし、都内までの電車も簡単だし、いろいろなところに気軽に行けるのが韮崎の便利なところですよね」

—————反対に、率直なところを聞きたいんですけど、韮崎で暮らす中でいわゆる「田舎的な不便さ」を感じることってありますか?

星野「田舎的な不便さ…。うーん。たしかに、他県に遊びに行ったりするときには電車が少なくてすこし不便かな?でも、日常生活の中で不便さは特にないですね。車さえあれば、職場までは近いし通勤もしやすいです」

泉「たしかに。僕は2か月前に移住してきたばかりなんですけど、車さえあれば便利だなというのは、僕も一番に感じました。乗り換えを気にしたり、電車代と駐車料金を比較したり、駐車場を前日から予約したりしなくて良くなったから、実は都会に住んでいたときよりも便利なくらいです」

秋山「暮らしの面で言えば、とりあえず韮崎駅前の『ライフガーデンにらさき』まで行けば何でも揃うし、ほかにもスーパーや専門店があちこちにあるので、田舎だから不便だなと感じることは特にないですね。韮崎の暮らしをおすすめしたいとかそういう話ではないけれど、韮崎で働くこと、暮らすことが私は単純に好きでここにいるというような感じです」

—————お二人の仕事の自慢のポイントを教えてください

星野「私個人というよりも韮崎工場全体の話になりますが、風通しの良いアットホームな雰囲気が魅力だと思っています。工場としてはそこまで規模が大きくないので、同僚間、上司・部下間で一人ひとりとのコミュニケーションの機会が多いんでよすね。あと、豊かな自然に囲まれた穂坂というロケーションも、韮崎工場ならではの自慢のポイントかなと思ってます」


工場タンク屋上からの景色

秋山「私は工場の技術力を自慢したいですね。特に、平成15年に特許を取得した『瞬冷造しゅんれいづくり製法』が自慢なんです。従来の製法と比べて短時間かつ大量に原料を処理できるので、品質にバラつきの少ない製品を大量に造ることができます。また、従来の一般的な製造方法の、わずか30%ほどのエネルギーで造ることができるため、良い製品を造ると同時に、環境にもとても優しいんです」

泉「なるほど!約70%ものエネルギーを削減できるってすごい!温度管理一つをとっても、お酒造りは奥が深そうですね…!」

—————進学や就職のタイミングで市外や県外に出る方も多いですが、お二人が韮崎で働くことを選んだ理由はありますか?

星野「家から近い職場の方が働きやすいし、わざわざ遠くで就職するということは考えていなかったですね。進学ではなく働くことにしたのは、育ててくれた家族に少しでも早く恩返しがしたいという思いがまず強くあったからです。高校まで9年間好きなバレーボールを続けさせてくれたので、今度は働いて恩返しをしようと思って。今の事務職を希望したのは、高校の商業科で学んだ簿記や情報処理の知識を活かした仕事がしたかったからです」

秋山「わたしは、単純に韮崎が好きだから韮崎で就職したという感じです。高校では食品科学科で微生物について学んでいたので、麹菌や発酵などに興味があって、酒造会社で働きたいと思い就職しました」

韮崎の魅力について

—————韮崎を一言でいうなら、お二人にとってはどんなまちですか?

星野「韮崎を一言でいうと…?うーん。『サッカーのまち』ですかね。今年の県予選で優勝して全国インターハイに進出した韮高の活躍にも注目しています!」

秋山「わたしにとっては『自然豊かでのどかなまち』ですね。小さなころから、近所にある田んぼや川など多くの自然に慣れ親しみながら育ってきました」

泉「素敵な幼少期ですね!それじゃあ、虫とかも全然平気…?」

秋山「全然平気です」
泉「たくましい…!(笑)豊かな自然が当たり前に身の回りにある環境の中で育つって、とっても豊かで素敵なことですね」

—————韮崎の好きなところを教えてください

星野「秋山さんも言ってましたが、私も、自然豊かな景色に溢れているところが好きです。家のリビングにある大きな窓からは富士山が見えるんですけど、わたしだけの自慢のスポットになってます。そんな眺めの良い景色があるのが、韮崎の好きなところですね」

泉「やっぱり、慣れ親しんだ自然豊かな環境がお二人とも好きなんですね」

秋山「一方で人気のお店も結構あって。大きくて有名なお店というわけではないけど、『知る人ぞ知る地元の名店』という感じのお店もありますよね。個人的には、円野町にある「みどりや食堂」という、ラーメンのおいしい行きつけのお店がおすすめです」

泉「へぇー!そうなんですね。おいしいお店情報は、個人的にもっともっとお尋ねしたいくらいです(笑)」

—————よく行くお気に入りの場所みたいなものってありますか?

星野「お気に入りスポットというか、行ってみたいなと思っているのは韮崎駅近くにある『アメリカヤ』ですね。おしゃれなお店で流行ってるというのは前々から聞いていて、ずっと行ってみたいなって思っています」

泉「建物も素敵だし、ニラサキ夜市みたいなイベントが開かれていたり、9/7からは近くに『アメリカヤ横丁』というのが完成したりと、活気があるエリアになっていますよね」

秋山「私のお気に入りスポットは、夜の甘利山です。星空や夜景を眺めるのが好きなんですよね」

泉「なるほど。同じように暮らしているまちの中にも、それぞれ違った『好き』があるんですね。韮崎ってこんなまちかなと思っていた僕にとっても新鮮な気づきがありました」

—————韮崎の中で変化を感じるところは?

星野「穂坂町の韮崎工場まで上ってくる途中の景色を見てみると、周りに企業が増えたなーと感じますね。前は正直「何もない」というような場所だったけど、工業団地もできて、全国や海外でも活躍するような大きな企業も増えたなと思います」

秋山「駅前のあたりもかなり景色が変わりましたね。子どものころは、「寂れたシャッター街」という感じだったけど、先ほど話題に出たアメリカヤも賑わってるし、シャッターアートなんかも増えて、明るい場所に変わったなと感じています。今は『学生や若者が多いシャッター街』という感じですね」

泉「シャッター街と言うと、一般的にはまちの衰退を連想させる言葉ですが、韮崎では反対に、そのシャッター街の中から多くの新鮮な変化が生まれてきていますよね」

—————反対に、これからこういう変化があるといいなと思うところは?

星野「『える』おしゃれなスポットがもっと増えてほしいとは思います」

秋山「私も同じですね。甲府とかの大きなまちと比べると、おしゃれなお店やカフェは圧倒的に少なくいので、やっぱり若者を呼び集めるには「おしゃれ」と思えるかどうかってすごく大切だと思います。そうやって若者が集まって活気づくような場所が、これから増えてくると良いなと期待しています」

「なるほど。若いお二人がおっしゃる分、現実的な説得力がありますね。そうやっていろいろな声を受けながら韮崎の中にさまざまな変化が生まれていくと素敵ですよね。それでは、本日はお忙しい中いくつもの質問に答えてくださりご協力ありがとうございました」

お土産に純米吟醸酒までいただいてしまいました…!!※後日、にらレバ編集部が、おいしくおいしくいただきました。笑

風通しの良いオープンな会社【最後に求人情報アリ!】

今回取材を受け入れてくださった福徳長酒類株式会社さん。電話で取材をお願いすると「それでは来週にでも」とすぐに受け入れてくださったり、当日も工場内の機材を一つ一つ丁寧に説明してくださったりと、とにかく終始親切にご対応いただきました。韮崎で長く続いている会社が韮崎の地域振興にも理解を示して力を貸してくださるということがとても頼もしく、同時に嬉しくもありました。

また、インタビューを受けてくださった星野さんと秋山さんは、仕事の昼休みに更衣室に集まって歓談するだけでなく、休日も頻繁に遊びに出かけるほどの仲良し。取材当日も顔を見合わせて笑い合う様子からは、従業員さん同士、気心の知れた関係であることがうかがい知れました。自身の仕事や会社を自慢に思い、活き活きと働く姿も、とても魅力的だなと思いました。

「韮崎にこんなに素敵な会社があるよ」という情報を伝えていく『ニラサキのシゴト』の第一弾として、大大大満足の取材をさせていただきました。福徳長酒類株式会社さん、あらためてありがとうございました。

福徳長酒類株式会社さんでは、随時求人情報も公開しています(取材した7月時点での募集は次の契約社員のみでしたが、毎年、高卒以上の正社員の定期新卒採用が行われています)興味を持った方は、ぜひぜひチェックしてみてくださいね!

(2019.8.31時点 ハローワーク掲載情報より抜粋)
所在地   :〒407-0175 韮崎市穂坂町宮久保5228-1
職種    :酒類の製造補助(契約社員)
仕事の内容 :〇清酒の製造
・清酒原酒の製造、酒粕を剥ぐ作業、機械の水洗浄、紙パックの充填機ラインでの包材の供給、資材の運搬、等の簡単な補助作業です。
必要な経験等:なし
就業時間  :⑴08:00~16:30 ⑵07:00~15:30
その他詳細 :https://www.hellowork.go.jp/servicef/130020.do