にらレバライター、BEEK DESIGN スタッフとして編集・デザイン業に勤しむ。元地域おこし協力隊・青少年育成プラザMiacisスタッフ。1991年生まれ。韮崎高校出身。音楽・サウナ・お寿司が大好き。
韮崎駅を出て右手側の高架下を抜けると、すぐに目に入ってくるトンカツ屋さんがあります。
昭和26年の創業以来、なつかしい味わいのトンカツを提供し続ける「一勝」は、地域と共に歴史を重ねてきた老舗。
紺色の暖簾の先では、店主の節子さんがいつもの明るい笑顔でお客さんを出迎えます。
「私の年齢は秘密。だって聞いたらびっくりしちゃうわよ、すんごいおばあちゃんなんだから」とおちゃめに笑う節子さんは、一勝のお店に立ち続けて60年。愛されキャラクターの元気いっぱいなお母さんです。
今回は「一勝」にお邪魔して、お店のこと、節子さんご自身のこと、そして節子さんがこんなに長い間、元気にお店を続けられている理由を教えてもらいました。
駅から徒歩1分!創業70年の老舗トンカツ屋
力強い文字で書かれた看板が印象的な「一勝」は、来年で70周年を迎えます。
いつも昼食時にはまちのおじいちゃんおばあちゃん、スーツを着たサラリーマンの姿などが見られ、おいしそうにとんかつを頬張りながら、仲間との会話を楽しんでいます。
駅からも近いので、電車を待つ間に腹ごしらえをしようと立ち寄るお客さんも多いです。
15時までの昼営業を終えた後は、17時に営業が再開。
テーブル席の他に、奥には座敷もあるので、夜はまちの人たちの無尽(※)の会場としても定番となっています。
柔らかいお肉が特徴!なつかしい味のとんかつ
※現在(取材日:5月27日)は、コロナ対策のため、テイクアウトのみの営業となっています。そのため写真に写っているメニューはテイクアウト仕様です。
一勝のとんかつは、昔ながらのなつかしい味わい。
衣はサクッとしていて、お肉は柔らかく簡単に噛み切ることができます。サクサクな衣の秘訣は油の温度をあまり高くしないこと。お肉は南アルプス市にある長い付き合いのお店から仕入れ、4.5日寝かせて柔らかくしてから使用しています。
卵でとじた「煮カツ丼」は、昔ながらのタレを使用していて、やさしい味わいです。
「これってカツ丼じゃないの?」と思った方もいるかもしれませんが、山梨では一般的なかつ丼を『煮カツ丼』と呼びます。注文の際はご注意ください。
トンカツだけでなく、カレーライスや定食など他のメニューが豊富なのも嬉しいポイント。
トンカツを食べるつもりで行っても、他のメニューに目移りして迷ってしまうこともしばしば。ぜひ何度も通って色々なメニューを食べてみてもらえたらと思います。
お店に立って60年!元気いっぱいでキュートな節子さん
店主の望月節子さんは、一勝のすぐ近所にある写真館の娘さん。
一勝の跡取りであったご主人と結婚し、お店が開店した10年後(昭和36年)からお店を手伝い続けて、今年で60年目になります。
33年前に旦那さんが病気で他界されてからは息子さんとお店を営んでいましたが、15年働いた後に息子さんも体調を崩してしまい、現在はパートさんと二人でお店を切り盛りしています。
自分でお店をやっていくのは、心身共にパワーのいること。
いつも明るい節子さんですが、今回のコロナウイルス然り、大変なことも多いと思います。
それでも元気にお店を続けていけるのには、2つの理由があるそうです。
常連さんの存在やお客さんの声が励みになる
本当にうちのカツが好きなお客さんがいるのよ。一度来た人はみんな「また来るね」って言ってくれるし、病気になっちゃった常連さんもよくなってから来てくれて、『また一勝さんのカツが食べられるようになってよかった』なんて言ってくれるものだからね。そういうのを思い出すと、できるだけ続けていきたいなって思うのよね
節子さんは、このコロナ期間でお店を続けるか迷ったこともあったそうですが、常連のお客さんに「おまん、やめちょ?(=甲州弁で「あなた、やめちゃだめだよ?」の意)」と言葉をかけられ、「うちのカツを好きって言ってくれる人たちがいるんだから、続けられるうちはがんばろう」とあらためて決意したそうです。
節子さんが揚げるトンカツがお客さんに元気を与え、お客さんの言葉が節子さんに元気を与える。
そのような心のやりとりを何度も繰り返しながら、一勝の創業70年の歴史はつくられてきたのでした。
健康な身体づくり。17年続く朝のルーティン
長年お店を続けるためには、気持ちだけでなく体力も必須です。
節子さんは毎朝5時に起きて、30分ウォーキングをした後にお店に来ます。
そのまま6時半から店内でラジオ体操。
体操が終わったら入り口側のロールカーテンを上げて朝の光を店内に取り込み、掃除や調理の準備に取り掛かかります。
これが節子さんの朝のルーティン。そんな生活を17年も続けているそうです。
そしてなんと、74歳から社交ダンスも始めたのだと言うのだから驚きです。
健康的な生活や日々の運動のおかげで、節子さんは元気そのもの。
「生涯現役が目標」と語る節子さんの、家族やお客さんと共につくりあげてきたここ「一勝」を舞台にした人生は、まだまだ続いていきます。
共に歩んできた韮崎のまちへの期待
一勝が開店した頃、韮崎のまちは宿場町として栄えていました。
当時の様子を節子さんに尋ねると、商店街にあった店舗を端から端まで教えてくれました。
お肉屋さんでしょ、その横がせともの屋さん、花屋さん、靴屋さん、金物屋さん、家具屋さん、、、子どもの頃からこの辺を飛び歩いていたからよく覚えてるよ。
とにかくお店がたくさんあって賑やかでね。その後は静かになっちゃって寂しかったけど、最近は若い人の通りも少しずつ増えてきたわよね。アメリカヤの人や宿の人たちも食べにきてくれるのよ。このまちも、また良くなっていくかもね
取材を終え、お礼を伝えてお店を出ようとしたときに、「また来てね。お喋りしよう。」と声をかけてくれるかわいらしい節子さん。
またおいしいとんかつを頬張りながら、明るいまちの話ができるように、私たち若者も元気いっぱいな節子さんに負けずに、これからもがんばっていきたいと思います
とんかつ屋「一勝」基本情報
- 所在地 :山梨県韮崎市中央町2−4
- 営業時間 :11:00~15:00 17:00~20:00※コロナウイルスが落ち着くまでは、昼のテイクアウトのみの営業
- 定休日 :日曜日・第2土曜日
- 問い合わせ:0551-22-0033