韮崎の人に喜んでいただけるお菓子を。『石田西洋菓子店』店主が語るケーキと街への想い

韮崎市本町通りに2024年3月、『石田西洋菓子店』がオープンしました。開店から間もないながら、すでに県内外からファンが集う注目の洋菓子店です。

大阪生まれの店主・石田恒平(いしだこうへい)さんは、ヨーロッパの国際大会で2位に輝いた実力派パティシエ。東京や大阪など国内の名店をはじめ、ヨーロッパのパティスリーで厳しい修業を重ねたのち、2023年に韮崎市へ移住しました。

今回は、石田さんの菓子づくりへの情熱と、韮崎での新たな挑戦についてお話を伺いました。

あえて"地方”を選んだ店主の想い

ゴールドのアンティークが店内の雰囲気を引き立てる

ゴールドのアンティークが店内の雰囲気を引き立てる

――おいしくて美しいケーキの裏に隠れた、これまでの経緯を教えてください。

大阪府北部にある池田市という田舎街で生まれ、洋菓子職人を目指して府内の専門学校に行きました。卒業後は東京や大阪、奈良、ルクセンブルク、ベルギーなど、いくつかのパティスリーで経験を積みました。経歴は豊富ですよ(笑)。

賞をいただいたのは、フランス・パティシエ全国連盟が主催する「トロフィー・インターナショナル・パティスリー・フランセーズ2019」という大会です。3日間におよぶ大会で、決められたケーキ、ルールの中で競う大会でした。

 

――ここまで経験や実績が豊富であれば、東京でも人気店になることは見込めたと思うのですが、移住を検討するきっかけはあったんですか?

「自分の店を持ちたい」と考えたときに、やはり東京は難しいと思ったんです。それは、パティシエとしての事業もそうですし、環境や費用など総合的に……。

あと、実は人の多さに少し疲れ始めた時期でもあったんですよね。東京の環境では、自分もお店も埋もれてしまうのではないかと考え、別の土地を見るようになりました。

 

――別の場所とはいえ、商売をするとなると人口が多いほうがよさそうですよね。

そうですね。でも、別の街を検討するようになってから「地方こそ可能性があるのではないか」と考えたんです。

今は昔と違ってSNSがあるので、都心も地方も認知される差がそれほどないかな、と。喜んでいただけて名が知られれば、その場所を目当てにでかけるようになるじゃないですか。都心から各地に人が流れる。そういった地方にとってのメリットもあるなぁと思いましたね

決め手は人!懐かしい街の雰囲気と人柄で決めた韮崎

美しくケーキが並ぶショーケース

美しくケーキが並ぶショーケース

――自分のお店を開くうえで地方に目を向けたとのことですが、なぜそこに「韮崎市」が浮上したのでしょうか

場所を決めるうえで、県ではなく市町村ベースで考えていたんです。あとは「東京から1〜2時間で行ける場所」「チャレンジしやすい雰囲気や感性がある」こと。この2つを見ていました。韮崎市に決める前は、熱海や軽井沢も考えていて現地にも行ったんですよ。

その時期にたまたま東京で働いていた時に知り合った方が、小淵沢でお店を出していて。その方から話を聞いたのが「韮崎市」を知ったきっかけです。

 

――韮崎市にも実際にいらっしゃったんですか?

はい、一度や二度ではありません。何度も来ましたね。

都内からの所要時間はクリアしていましたし、街の雰囲気も好きでした。どことなく生まれた街に似ていたり、ヨーロッパで働いていた時の感情がよみがえってきたり。自分に合う気がしました。

インテリアにもこだわった店内

インテリアにもこだわった店内

――韮崎にしよう!と気持ちが定まった決め手はありましたか?

なんとなく良いかも……と思ってはいたんですけど、そこからどうしていいか分からず、ふらりと移住相談窓口に寄ったんです。そこで対応してくれたスタッフさんが、ものすごく親切で。業務ではなく、韮崎に住む人として喜んでくれている印象が強かった気がします。

あの親身な対応でここに決めたようなものですよ。もし事業がうまくいかなくなってもこの人たちがいれば何とかなると思えました

苦難を乗り越え、再び韮崎へ。街の人の温かさに導かれる

ヨーロッパで買いそろえたアンティークも

ヨーロッパで買いそろえたアンティークも

――韮崎市に移住するにあたって、困ったことや印象の違いなどはありましたか?

実は、自信を持って東京を離れたわけではなかったんです。「せっかくキャリアを築いたのに……」と、親身になってくれる人からは反対されたり心配されたりしましたね。また、店舗の件もうまく話しが進まず振り出しに戻ったこともありました。

 

――そうだったんですね……。諦めずに韮崎にいらっしゃったきっかけはあったんですか?

そうですね。どうしようかな~と思っていた時に、以前相談していた移住相談員さんから「物件が空いた」と連絡があり、もう一度韮崎に来たんです。理想的な物件だったし、リノベーションをしてくれる業者さんも一緒にみてくれたので、イメージが湧いて。そこから話がトントン拍子に進みました。

空き店舗をリノベーションして作り上げたこだわりの店舗

空き店舗をリノベーションして作り上げたこだわりの店舗

――連絡からの進展が早いですね!

はい。あの時連絡をくれたのが大きかったと思います。相談員や関わる方みなさんが本当に親身になってくれたので、本当に感謝しています。

 

――韮崎市に住んでからの印象はどうですか?

住みやすいですよ。もう十分!

東京と違って車は必須ですけど、むしろ車があれば東京よりも便利だと思います。ホームセンターやスーパーもすぐ近くにあるので、大量にモノを買っても運ぶ負担が少ないですからね。店の準備の時は、車で良かったと思いました。

これからも街の人と共に、街の人のために

韮崎の新旧の融合を期待する石田さん

韮崎の新旧の融合を期待する石田さん

――これから韮崎でやりたいことなど、今後の希望はありますか?

とにかく韮崎市はいい人ばかりなので、街の人に喜んでくれるお菓子を作り続けたいと思っています。

現在も市内にあるマルス穂坂ワイナリーさんのワインを使ったパウンドケーキやコクテール堂さんのコーヒーを提供しているのですが、今後も韮崎の美味しいものを紹介する手助けをしたいですね。韮崎には素晴らしい老舗店も多いですから、街の役に立てる取り組みができたらと考えています。

 

「この店をきっかけに韮崎市に来る方が増えたら嬉しいし、地方を盛り上げるという意味では、来た意味を感じる。」

最後には、優しくもあり逞しくもある表情でそう語ってくれた石田さん。何度も人の良さについてお話をしてくださり、石田西洋菓子店を支えるスタッフもみんな人柄がよく、お客様に愛されていると嬉しそうでした。

 

 

石田西洋菓子店では、ケーキだけでなく焼き菓子も並んでいます。美しいケーキや営業情報などの詳細はInstagramから確認できますので、ぜひチェックしてくださいね。

「石田西洋菓子店」基本情報

  • 住所:〒407-0024 山梨県韮崎市本町2丁目10‐8
  • 電話番号:0551‐30‐9215
  • 営業時間:11:00~18:00
    ※売り切れ次第閉店
  • 定休日:月曜・火曜・水曜
    ※詳しくはInstagramをご確認ください
  • Instagram:https://www.instagram.com/ishida_seiyougashi/?hl=ja