西に鳳凰山と甲斐駒ヶ岳、南に富士山が望める韮崎市穂坂地区にたたずむ農家の食卓「あい山」。2023年9月にオープンした和創作料理を楽しめるレストランです。
店主が選ぶこだわりの食材と試作を重ねた上品な料理は、地元の方はもちろん、県外の方からの評価も高く、リピーターも多いとか。手作りにこだわり、味噌やお米も自家製だと言います。
今回お話を伺ったのは、店主の相山幸寛(あいやまゆきひろ)さん。一度山梨を離れたものの、韮崎の居心地の良さが忘れられず戻ってきた「Uターン」移住者です。50年以上続く家業の「フルーツ相山農園」の3代目として家業に専念する傍ら、レストランを経営しています。
農業を継ぎながら夢だったレストランを韮崎で始めたその想いや、韮崎の暮らしについてお話を伺いました。
レストランのオープンを引き寄せた店主の想い
ーー2023年にお店をオープンしたとのことですが、もともと料理がお好きだったのですか?
はい、小学生のころから料理が好きでよく作っていました。実家が農業であったため学校は農業系の専門学校を選択しましたが、料理への想いは消えなくて…。いつか自分のお店を持てたらいいなとずっと思っていたんです。
ーーどこかレストランなどで料理を勉強したのですか?
いえ、どこかで修業したことはありません。農業系の専門学校を卒業するものの、やっぱり料理への想いが消えず、食品関係の会社に就職したんです。そこで調理師免許を取得しました。ただ、レストランで提供するような料理を作っていたわけでなかったので、様々な飲食店に通い、プロの料理からヒントを集めたんです。そして自分なりに試作を重ね、形にしていったという感じです。
ーーほぼ独学ということですね…すごい!
とはいえ、近隣のレストランや尊敬する和食料理人など身近にプロがいたので、お客様に提供する料理としてさまざまなヒントを教わりました。今でも相談に乗ってくれるいい先輩です。
ーー農業をやりながらのレストラン経営は、かなり忙しいと思いますがいかがですか?
そうですね。めちゃくちゃ忙しいです(笑)。とくにぶどうの栽培期や収穫期は早朝に農業をやり、昼と夜はレストラン。さらに仕込みの時間もあるのでかなり追い込まれます。提供する料理は調味料などを含めてほぼ手作りなので、時間もかかりますしね…。ただ、ここは妥協したくなくて。手作りにこだわりたいんです。
ーー相山さんの「こだわり」ですね。レストランは最初から韮崎にオープンしようと考えていたのですか?
いえ、実は「店を開きたい」という想いはあったものの、始めたくて準備をしたわけではなくて。できそうな環境がそろってきたので始めた、と言うほうが近いです。そのタイミングで「レストランができるかも」と長年の想いが湧き上がって、父親に相談しました。父は私のやりたい想いを尊重してくれたのか、すぐに認めてくれました。手続きや建物などさまざまなタイミングが重なり、相談した翌年にはレストランをオープンできました。
ーーまるで「レストランをやりなさい」と言われているようなスムーズさですね!
そうですね。計画していたというよりは、まさに「レストランができる環境になっていった」という感じです。
ーーただ韮崎市の中でも「穂坂地区」は農園が多く、駅前と比べて人が少ないエリアですよね。この場所で飲食店を営むのはハードルが高く感じるのですがどうですか?
確かに人が集まる場所ではないのですが、だからこその価値もあるかなと感じます。このレストランに来る方は、ここからの景色も感動してくれていて。とくに県外からいらっしゃる方からの反応はいいですね。
料理だけでなく景色も楽しんでいただけるのは、この場所だからできること。お客様が景色を眺めている姿を見ると、私も嬉しくなります。
現在は農業をしながらレストランを経営する二刀流の相山さん。ぶどうの栽培期や収穫時は特に忙しいですが、夢であった料理人として奮闘する日々は充実していると、笑顔でお話くださいました。
地元の食材を活かした和食ベースの創作料理は県外のお客様からも好評
あい山は、地元の食材や旬の食材を使った和食をベースにした創作料理を提供しています。
ランチはメインを選べるカジュアルなコース料理(税込2,090円)。ディナーは税込3,300円・4,400円・5,500円の3種類から選べるちょっぴり贅沢なコース料理です(2024年8月現在)。
県内のお客様をはじめ、県外のお客様からも喜ばれていると言います。
ランチメニューは2カ月ごとにメニューを入れ替え、季節に応じた食材を使うため、リピーターにも喜ばれているそうです。
また、店内ではフルーツ相山農園で収穫したぶどうを使った「完熟干し葡萄」も販売しています。
砂糖を使わずそのままじっくり乾燥させた無添加の自家製干し葡萄は、うまみがギュッと凝縮した贅沢品。お土産にもおすすめです。
やっぱり韮崎が好き。離れて気づく居心地の良さ
相山さんは農園を初期から支えた祖母と両親、妻、子どもの6人で韮崎市に暮らしています。
一度離れた韮崎からUターンし、さらに新たな事業を始める相山さんに、改めて韮崎の環境について伺いました。
ーーそもそも韮崎にUターンしたきっかけは、農業を継ぐためだったのでしょうか?
はい、農園を継ぐためでもありましたが、韮崎を離れてからずっと戻りたい思いが強くて。一度離れて、地元の良さに気づいたんですよね。韮崎は自然が豊かでありながら、ちょうどいい感じで便利なので住みやすいです。あとは人がいい!帰ってきた時はもちろん、店をオープンする際も多くの人が助けてくれて、改めて人の温かさを感じました。
ーー相山さんは小学生のお子さんもいらっしゃるとのことですが、子育てをする環境として韮崎はどうですか?
やはり自然が豊かでのびのびと子育てができるのは、韮崎のメリットですね。娘が通っている小学校は児童の数が少ないので、先生の目が行き届く環境でありがたいなぁと感じています。
住みやすさだけでなく、韮崎ならではのこの景色や人の温かさが好き――。目の前に広がるぶどう畑を、優しいまなざしで眺める相山さんの姿が印象的でした。
韮崎の移住・起業は市のサポートも
韮崎市には、市内で新しく事業を営む方を対象とした「韮崎市起業支援補助金」制度があります。相山さんもこの制度を活用したひとり。移住者はもちろんのこと、市内に住む方全員が対象です。
ーーすでに知っている土地とはいえ、起業するとなると不安もありますよね。
そうですね。レストランを始める際は、商工会議所や市役所で多くの方にサポートしていただきました。わからないことを聞けるのはもちろん、活用できそうな制度や助けてくれそうな人を紹介してくれて、とても助かりました。韮崎は新しいことを始めたい人にも向いていると思います。
韮崎市では、起業支援の他にも移住に関するサポートや住宅の購入に関するサポートなど、さまざまな制度を設けています(参考:韮崎市ホームページ「移住・定住」)。
韮崎の飲食業を盛り上げていきたい。Uターンして募る想い
「今韮崎駅前は、新しい店舗が続々とオープンして賑わっています。ただ、駅から少し離れたこのような場所は、まだまだ発展途上。飲食店が増えてくれたらもっと面白い地域になるはず。」と相山さんは、話します。
生産量NO.1を誇る山梨県ならではのぶどう農園と、鳳凰三山や甲斐駒ヶ岳など壮大な山々の景色を望める韮崎市穂坂地区。空を仰ぎ深呼吸したくなるような開放感と、人々のつながりが強いのもこの街ならではの魅力です。
食へのこだわりと韮崎への優しい想いを語る相山さん。ご夫婦が織りなす感性豊かな創作料理は、これからも目が離せません。
レストランの予約は、電話もしくはInstagramのDMから可能です。農家の食卓「あい山」へ、ぜひ足を運んでみてくださいね。
「農家の食卓 あい山」基本情報
- 住所:山梨県韮崎市穂坂町三ツ澤273‐1
- 電話番号:070‐4433‐6566
- 営業時間:
ランチ11:30~14:30※食材がなくなり次第終了
ディナー18:30~22:00※前日までに要予約 - 定休日:月曜+不定休
- Instagram:https://www.instagram.com/aiyama.911/