発酵とエスニック酒場『ねこのスプン』|韮崎市富士見町にOPENした、タイ料理中心のお店


韮崎駅から徒歩5分、ローソンやワークマンがあるすぐ近くに、夕方になると照明がキラキラと光って魅惑的な雰囲気を放っているお店ができたのにお気づきでしょうか?

11月27日にオープンした「発酵とエスニック酒場 ねこのスプン」は、店主の中込彩香さんの「好き」をぎゅっと詰め込んだ、料理もお酒も楽しめるお店です。

「いま、すごく楽しいです」と笑顔で語る彩香さんですが、お店を始める前後は、不安でしょうがなかったそう。そんなときに彩香さんに元気を与えたのは、韮崎のまちの飲食店同士のつながりや、お店に来るおじいちゃんたちの存在でした。

今回の記事では、まず「発酵×エスニック」という不思議な組み合わせの料理についてご紹介したあとに、彩香さんにお聞きした、韮崎ならではの心温まるエピソードをお届けします。

発酵×創作エスニックの料理とは...?

(ガパオライス ¥1,200)

「ねこのスプン」のメニュー表には、「ガパオライス」や「トムヤムクンフォー」など、

タイ料理を中心としたエスニック料理のメニュー名が並びます。その中には「塩麹仕込み」「味噌粕漬」など、発酵食品を使った料理も豊富にあります。

「発酵×エスニック」とは不思議な組み合わせですが、実はこの二つは意外と相性が良いんです。

例えば、自家製ヨーグルトに自家製塩麹を混ぜ、最後にその場で砕いたクミンをのせた『塩ラッシー』は、発酵により味わい深さが増し、まるでチーズのような濃厚さ。子どももおかわりする人気のドリンクメニューです。

エスニック料理に欠かせない『魚醤』も発酵食品。ねこのスプンでは、タイのナンプラー、ベトナムのヌクマム、日本の北陸地方でつくられる魚醤と、料理によって3種類の魚醤を使い分けています。

納豆や味噌など、和食で多く用いられる発酵食品ですが、和食に限らずさまざまなジャンルの料理をおいしくする力があるそうです。免疫力を高める効果もあるので、おいしい上に健康にも良いなんて一石二鳥。香辛料のパワーも相まって、身体がポカポカと元気になってきます。

(トムヤムクンフォー ¥1,000)

(酒粕レーズンバターとマスカルポーネ甘納豆ラム酒風味 ¥600)

お酒のメニューの豊富さもうれしいポイント!

一般的なタイ料理店などでは、お酒はビールとウイスキー程度しか置いていないことが多いですが、ねこのスプンは「酒場」と謳っている通り、お酒のメニューも豊富に揃っています。

ビール、ワイン、日本酒、焼酎もあり、ボトルキープもできるんです。

駅から徒歩5分というアクセスの良い場所にあり電車も利用できるので、ぜひ料理と一緒にお酒も楽しんでみてください。味付けがしっかりとしたねこのスプンの料理は、お酒との相性抜群なんです。

オープン前は不安で泣きながらペンキ塗り...?

(カウンター席のお客さんとの会話を楽しむ彩香さん)

彩香さんは飲食業界で10年ほど働いた後に別の仕事を7年ほどしていましたが、「自分の土台は飲食にある。いつか自分のお店をやりたい」とずっと考えていたそうです。

ねこのスプンの店舗は、以前は『かまど』という居酒屋だった場所。かまどに通っていた彩香さんは、店主から75歳でお店を終わりにするという話を聞いて、「自分がこの場所を受け継いでがんばろう」と決意しました。

しかし、いざお店を始めるとなると、彩香さんの胸には不安が押し寄せてきました。

「店舗の改修は、業者を通さずに、知り合いに協力してもらって自分たちでしたんですけど、やることは山のようにあるし、初めての慣れない作業ばっかりで。改修を進めていたらメニューを考える方が全然進まなくて...。」

開店準備をしていた頃の不安な気持ちを、彩香さんは素直に話してくれます。


「そうしているうちにオープン日はどんどん近づいてくるし、『無事にオープンできたとしても、こんなコロナ禍で人は来てくれるのかな...』『本当に自分に料理なんてできるのかな...』ってどんどん不安になってきて、あの頃は一人で泣きながら外壁を塗ったりしていましたね。笑」

(何度も作り直したというこだわりの詰まったドア)

取材当日いただいた料理の味や店舗の完成度からそんな不安要素はまったく感じませんでしたが、やはりお店を始めるというのは誰にとっても勇気がいること。

しかしこの時期にいろいろな人が手伝いに来てくれたり、必要なものを譲ってくれたりと、人の優しさに支えられたことで、彩香さんは、「一人じゃないんだ」ということを強く実感したそうです。

地元のおじいちゃんたちもお店の強力なサポーター!

「お店をつくっているときからちょくちょく覗いてアドバイスをくれる地元のおじいちゃんもいて。改装に使っていた機械の刃が駄目になってしまったときに、『うちに替えがあるから』ってわざわざ持ってきてくれて、名前も言わずに去って行ったり(笑)他にも気にかけてくれる方がたくさんいて、本当にこのまちには優しい人が多いなって思います。」

開店前から地域の人の温かさを感じていたという彩香さん。無事にお店が開店してからも、おじいちゃんたちは何度も足を運んでくれているそうです。

「始めはこういう雰囲気のお店だからご高齢の方は入りにくいかなと思ったんですけど、16時から飲める場所ができたことがうれしいみたいで、気軽に入ってきてくれるんです。一度来たら気に入ってくれて、また次の日も来てくれたり。もうおじいちゃんたちがかわいくてしょうがないですね。そういう方のために、魚料理やお漬物もメニューに加えたんですよ。」

お客さんの中には、居酒屋かまどの常連だった方もいるそう。彩香さんは、かまどのお母さんから譲り受けたおちょこやワイングラスを大事にしながら、かまどの歴史も大切にしていきたいと考えています。

そのような目に見えない想いや心遣いが地域の人にも伝わって、誰にとっても居心地の良い空間になっているのかもしれません。

(かまどのお母さんから譲り受けたおちょこの数々)

韮崎の飲食店のみんなの優しさと向上心に感動

さらに彩香さんは、「韮崎のまちの飲食店の方々の優しさにも驚いているんです」と話を続けます。

「オープンしたら近くの飲食店の方々も大勢飲みに来てくれて、自分のお客さんにもこのお店を紹介してくれたり、お友だちを連れてきてくれたり。なんでそんなに優しいのって思うんですけど、『自分たちにもオープンしたての大変さはわかるから、韮崎にできた新しい店舗を応援したいんだ』って言ってくれて、それを聞いたら泣きそうになってしまいました。韮崎でお店を始めて本当によかったなって思っています。」

彩香さんの一生懸命な姿や接しやすい人柄が、多くの人を「応援したい」という気持ちにさせているのだと思いますが、この面倒見の良さはもしかしたらこのまちの地域性でもあるのかもしれません。

「韮崎は飲食店同士が仲良しで、みんなでまちを盛り上げていこうという雰囲気がありますよね。この間も『甲府の人が韮崎にわざわざ飲みに来るようなまちにしていきたいんだ』という熱いお話をされている方がいて、一緒にがんばっていこうっていう話をしたんです。向上心を持った仲間がたくさんいるのはとっても心強いです。一人で営業しているのでまだまだドタバタですが、おかげさまで、いまは毎日本当にたのしいです。」

ねこのスプンはオープンしてまだ1ヶ月ですが、おそらくこれからますます地域の人にとって、なくてはならない場所になっていくのだと思います。

今回の取材を通して、韮崎のまちの人の優しさや飲食店の方々の熱い気持ちに触れることができて、私たちもこのまちの情報発信をがんばっていこうと改めて思いました。

みなさまもぜひ、ねこのスプンでおいしい料理とお酒を嗜んでみてください。きっとまた誰かを連れていきたくなる、そんなお店だと思います。

「発酵とエスニック酒場 ねこのスプン」の基本情報