にらレバライター、BEEK DESIGN スタッフとして編集・デザイン業に勤しむ。元地域おこし協力隊・青少年育成プラザMiacisスタッフ。1991年生まれ。韮崎高校出身。音楽・サウナ・お寿司が大好き。
「本当のことが知りたいんです。当たり前になっていることも、もう一度じっくり考えてみることが大切かなって。」
そう語るのは、韮崎市藤井町に新しくOPENしたバルクショップ『仲沢商店』の店主、仲沢果奈さん。
“バルクショップ”とは、商品をグラム単位で販売するパッケージフリーの量り売りのお店のこと。プラスチックごみが削減でき、環境に優しいバルクショップの仕組みは、海外では定番のスタイルであり、日本でも少しずつ注目され始めています。しかし、その店舗数は全国的に見てもまだまだ少なく、山梨県内では仲沢商店が1店舗目となります。
果奈さんはなぜ、韮崎市でバルクショップを始めようと思ったのでしょうか?
「本当のことを知りたい。」その言葉に込められた意味とは...?
量り売りで環境に優しい“バルクショップ”の仕組み
『仲沢商店』の店内には、粉物、乾物、塩、砂糖、パスタなどの食品類や、布ナプキンなどのオーガニックコットン製品、シリコンスタッシャーなどのサスティナブル雑貨が並んでいます。
お客さんは食材や日用品などを必要な分だけグラム単位で購入し、持参したエコバックやマイ容器、プラスチックフリーで自然分解可能な布袋や紙袋に入れて持ち帰ります。
量り売りは余計なパッケージが必要ないので、プラスチックごみを削減することができます。また、必要な分だけ食材や日用品を購入できるので、無駄なく使い切ることができるという面でも、環境に優しく家庭にも嬉しい仕組みです。
築101年の蔵を改装!多くの人の支援が集まってOPENした仲沢商店
仲沢商店のお店として利用している建物は、果奈さんの旦那さんの実家で代々受け継がれてきた築101年の蔵。始めは「この蔵を使いたいけど、資金もかかるし無理だろう」と思っていたそうですが、建築士さんや旦那さんのご両親に背中を押され、果奈さんは蔵をリノベーションしてお店をつくることを決意しました。
しかし、崩れた土壁の補修や、照明の設置、水回りの整備など、お店として利用するためにはどうしても工事が必要で、多くの予算がかかります。
そこで果奈さんは、リノベーションの費用を募るクラウドファンディングに挑戦しました。果奈さんの熱い想いが多くの人の共感を呼び、目標金額の50万円はなんと2日間で達成!予想を遥かに上回る、100万円以上の寄付が集まりました。
この結果は「多くの人がこの取り組みに共感してくれている」「応援してくれる人がいる」という目に見える指標であり、果奈さんは、「これから県内初のバルクショップを運営していくことに、より自信を持つことができました」と嬉しそうに話してくれました。
果奈さんがバルクショップを始めるまで
果奈さんがバルクショップをOPENしようと思った経緯は、クラウドファンディングのページに詳しく書かれているので、ぜひ読んでみてください。大好きだった前職のアパレル業界で大量のゴミを目の当たりにして感じた違和感、東日本大震災をきっかけに立ち上げた「布ナプキン専門店 kanap」のこと、バルクショップという仕組みとの出会い...読めばこれまでの経緯や果奈さんがその時々で感じてきたことを詳しく知ることができます。
お店での取り組みの他にも、果奈さんは自宅のベランダにコンポストを設置し、日頃からできるだけゴミを出さないように心がけています。いずれは市にアプローチして、コンポストの普及活動もしていきたいのだと話してくれました。
なぜそこまで環境のことを考えて動いているのか。その真意を尋ねてみました。
「本当のことが知りたい。当たり前になっていることも、もう一度じっくり考えてみることが大切。」
「私は、『本当のこと』を知りたいという思いが強いんだと思います。口に入れるものが何からできているのか、身につけているものが本当に身体に適しているのか、身の回りにあるものは本当に必要なものなのか、、、そんなことを色々と考えていたら、自然と環境のことを考えるようになっていったんです。」
自分の発した言葉を一つ一つ確かめるように、ゆっくりと語る果奈さん。
「息子にアレルギーがあったことも、身の回りのものを見直す一つのきっかけになったと思います。食べるものによって、全然身体の様子が違うんですよね。子どもたちが100円を握って安心してお菓子を買いに来る、そんなお店にしていきたいです。」
果奈さんはお店を通して子どもたちに「ものを知ること」や「ものを永く大切にすること」を伝えていきたいと語ってくれました。
「当たり前になっていることも、『なぜ?』ともう一度考えてみることが大切だと思うんです。例えば、布ナプキンの販売を始めるまで、私も生理のときは使い捨てのナプキンを使っていました。生理痛がひどくて大変だったんですけど、布ナプキンにしてからは体も冷えないし、生理痛もすごく楽になって。身体にもいいし繰り返し使えるからゴミが出なくて環境にもいい。そうやって、当たり前になっていることを少し見直してみるだけで、自分の暮らしも環境も、変えられることがあると思うんです。」
「物が溢れているよりも、納得できるものを選んで永く大切に使っていく方が、暮らしがシンプルになって限りある人生の時間を有意義に使えるんじゃないかなと思います。このお店に来る子どもたちには、こういう考え方があるということを肌で感じてもらいたいです。」
韮崎から取り組みが広がっていくことを願って
全国でバルクショップを運営している方々は、そのノウハウを次にお店をやろうと思っている方に快く教えるのだそう。それは自分たちの利益をあげることを目標にしているのではなく、環境を変えることを意識しているから。お店ができることでその地域が変わっていけば少しずつ何かが変わっていくかもしれないという期待は、果奈さんの胸の中にもあるようです。
「結婚を機に暮らし始めた韮崎は、今となってはずっと暮らしていきたい大切な場所。街なのに自然が豊かで普通に虫がいたりするのもいいなと思うし、住んでいる人も優しいなって感じます。お店では地域でつくっているお米や野菜も販売するので、地産地消を進めていけたらと思いますし、お店での対話を通してこんな考え方や生活スタイルがあるんだよってことを、地域の人にも知ってもらいたいです。そうして韮崎から他の街へと、少しずつこの取り組みが広がっていったら嬉しいです。」
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山梨初のバルクショップ『仲沢商店』は、これから市内外の多くの人の注目を集める場所となっていくでしょう。
最近はコンビニのレジ袋も有料化し、環境のことを訴える声も増えていますが、いきなり環境問題を意識して生活するというのは少々ハードルが高いことのように感じます。
果奈さんのように、「本当のことを知りたい」「自分の時間を大切にしたい」という想いを持つことで、結果として環境に良い暮らしに行き着くという流れは、とても自然な気がしました。
- 仲沢商店は、楽しくて通っている内に、いつの間にか意識や行動が少しずつ変わっていくような場所だと思います。まだ環境への意識をそこまで持てていないという人も、店内のお洒落な雰囲気や量り売りという新しい仕組みにきっと胸が高鳴ると思うので、ぜひ気軽に足を運んでみてください。その際は、エコバックやマイ容器を持っていくのをお忘れなく!
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仲沢商店 - 407-0001 韮崎市藤井町駒井字宮ノ前2667-1
- 営業時間:10時〜16時
- 定休日:不定休
- SNS:Facebook、インスタグラム「仲沢商店」で検索してください