道の駅で見つけた、信楽焼の器に植えられた小さなモミジ。
雑貨屋で売られていた、もう少しで咲きそうな蕾をつけた夫婦桜。
「玄関の窓の所に置いたら可愛いな」「和の観葉植物も素敵だな~」なんて軽い気持ちで手を出しては、どうしてかしばらくすると枯らしてしまう。
日もあてているのに、水もあげているのに…なぜだろうか。
「これは一度きちんと学ぼう!」
そう決意し、韮崎市本町にある秋山盆栽園さんが開催する、手ぶらで参加できるという「盆栽教室」を体験することにした。
盆栽の魅力はもちろん、初心者でも育てやすいという「オリーブ盆栽」の作り方を、5つのSTEPで紹介する。
目次
いざ、盆栽教室に潜入!
今回、盆栽を「基本のキ」から学びたいということで、取材班がおじゃましたのは秋山盆栽園主催の「盆栽体験教室」。
講師である秋山実さんは、なんと3度も日本一に輝いたという、名うての盆栽芸術家。国内外で活躍する一流の職人技を直接みられる機会はそうそうない。ワクワクする気持ちを抑えつつ、秋山盆栽園の門をくぐった。
そもそも盆栽とは何だろうか。秋山さんに尋ねると、盆栽とは読んで字の如く「植物を鉢で育てること」を指すのだという。しかし、鉢で育てるだけでは、ただの鉢植えで終わってしまう。
…が、そこへ「作者の美意識」と「感性」を加えることにより、理想的な自然を表現する芸術品としての盆栽が完成されるのだという。なんとも、奥が深い。
秋山さん自身も地元山梨の自然はもちろん、日本各地の森や台湾やニュージーランドといった国外の山々を訪れ、自分の五感で得てきたものを元に、作品へと昇華しているそうだ。
また、盆栽ときくと、サザエさんの波平さんが大事に育てている「松」が思い浮かぶが、盆栽に使われる植物は、大きく分けると5種類もあるそうだ。
【 雑木盆栽 】
松、真柏、ヒノキなど、盆栽と聞くとまずイメージするようなもの。
以下の4つに分けられるもの。
・花もの(桜・サツキなど)
・実もの(姫リンゴ・梅もどきなど)
・葉もの(もみじ・楓など)
・草もの(ゼンマイ、ススキなど)
その中で、秋山盆栽園の体験教室で使用されているのは、オリーブの木(葉もの+実もの)。比較的、丈夫で初心者でも育てやすいところがポイントなんだとか。
では、実際にオリーブを使った盆栽を仕立ててみよう!
5STEPでおしゃれな「オリーブ盆栽」に
筆者は、これまで様々な植物を家にお迎えしては枯らしてしまっていた…。秋山さんに不安な気持ちをこぼすと、「オリーブなら環境の変化に強いし、暑い日が続いても…わりと元気に育つから平気だよ!」と笑い飛ばしてくれた。
さて、ここからは、秋山さんがイラストを描きながら丁寧に指導してくれた、作業の様子を「5つのSTEP」でお伝えしたい。
▶︎STEP1「苗を決める」
まずは、自分が育てたいと思う盆栽を選ぶところからスタート。今回は、体験教室ということで、秋山さんが「オリーブの盆栽」を用意してくれたぞ!
\ここが、Point!/
「なるべく葉の色が良くて丈夫そうなものを選ぶ」
秋山さんいわく、「丈夫に育てられていて、病気や害虫がついておらず枝ぶりがしっかりしたものを選ぶのが良いよ!」とのこと。
▶︎STEP2「樹形を構想する」
そもそも盆栽は、「根張り・受け枝・差し枝・樹冠」と呼ばれる部分をバランスよく作り、大きな木を想像しながら鑑賞して楽しむものだという。つまり、いかに「理想の盆栽の形(樹形)を想像しながらカタチ作れるか…」が重要なのである。
ちなみに、どんな樹形に整えていくのかは、木を見てから決めるのが流儀。(木が本来もっているものを活かすため。)
まずは、鉢を手に持ち斜め下からのぞき「枝ぶり」をチェックして今の状態をチェックするところからはじめよう。
盆栽には、一番の見どころとなる「きき枝」(長くて、薄く)、その反対側で木を倒れないようにしつつバランスをとる「受け枝」(短くて、太い)、上に向かって伸びる細い枝の集まりである「樹冠」と呼ばれるパーツがある。
そして、これら「3つの要素」が最低限揃うことで、盆栽と呼べるのだという。(あくまでも基本であり、そうではない型もたくさんあるらしい…!)
しかし、それだけでは少し寂しく物足りない。そこで、その間に枝を作ったり、長短や厚みをつけたりして「枝棚」を作っていく。これをどこに、どのように配置するのかで、盆栽の雰囲気がガラリと変わるという。
もともとある枝を曲げたり、伸ばしたり切ったりして、最終的にどんな形に仕上げていくのか思考するのが、盆栽の面白さであり、醍醐味ですね。
秋山さんにどんな形にしたいのかを相談し、話し合った結果…
今回は、枝が少なく、細く、曲がっていて通っぽい?「文人樹形」に挑戦することになった。
▶︎STEP3「剪定(枝切・刈り込み)」
鉢を作業台に固定し、手にハサミを持ち…いよいよ剪定開始!(わくわく)
まずは、根張りが良くて、枝順や幹が美しく見えるよう正面を決める。そして、イメージした樹形になるように枝を切り整えていく。
それを、切ればまた出ててくる…剪定はその繰り返しで小枝を増やしていきます。
切ることによって、木は枯れちゃうと思って新しい芽を出す。すると、何もなかったところからも新しい葉が出てきたりするので、それを利用し、活かしつつ樹形を整えいくんですよ。
いらない枝も積極的に切っていく。しかし、何をどう切ればいいのかわからず、手が止まってしまう…。
秋山さんから「この短い距離に枝が4つもついてる…こんなにいらないよね?」など、アドバイスを受けながら、思い切ってハサミを入れていく。最初の一太刀にとても勇気がいる。
ちなみに、枝を切るときは、コブが残らないよう根元からきれいに切るのがコツなんだとか。
\ここが、Point!/
・1つの枝は長く作りすぎない。
・枝は切ったところの外側から新しい葉っぱが生えてくる。
・三つ又になっているものは、基本的に真ん中を切っていく。
・思い切りも大事!でも慎重に。
▶︎STEP4「針金掛け(曲げる)」
剪定だけで枝や幹の細かい流れを作ることは難しく、かなりの時間がかかってしまうという。
針金掛けを行うことで、枝や幹を屈曲誘引したり、矯正したりして、時短で理想の樹形へと仕立てていくことができるのである。
\ここが、Point!/
・針金を幹に添わせてぐるぐると巻いていき、そのまま針金ごと曲げる。
・枝になるべく負担がかからないように、そして葉っぱを挟まないように注意する。
・針金は枝の先端まで巻く。
▶︎STEP5「鉢植え」
盆栽では、樹形だけではなく「どんな鉢に植えるのか…」も重要なのだという。
盆栽の高さに応じて鉢の深さを選んだり、樹形の個性をみて盆栽の味をより引き立てるためのデザインを選んだり…。ここでも、その人の感性を問われるようだ。植物と組み合わせの妙(調和)。
今回は、秋山さんが、いい感じの鉢を用意してくださったので、そちらへ植え替えていくぞ。
① 土が流れてしまわないように底に網を貼っておく
② 根が良くはるように、根をほぐす
③ 抜けたり倒れたりしないように鉢に根ごと固定する
④土を入れ、苔を生やす
▶︎オンリーワンな、オリーブ盆栽が完成!
最後に、水をたっぷりとあげて…ついに完成。
ここまでの作業時間は、およそ2時間程度。秋山さんとの会話を楽しみながら作業していたので、あっという間だった…。
\こんな感じ!/
どうでしょう?今回は、針金掛けの練習のため、少し多めに枝を残してみた。
盆栽体験を終えて…
いつかはやってみたいと思っていた盆栽。
実際にやってみると、原理を理解すれば作業自体はそこまで難しくなく、1本の木と向き合い、剪定や針金掛けなど黙々と作業を行う体験は、集中力が高まりいい充実感があった。
しかも、作ったらその日にそのまま自宅へ持ち帰ることができるのも嬉しいポイント。
そして、教えてくださる秋山さんの穏やかでどこまでも自然体な話し方や姿勢が、とにかく素敵なので、きっとどなたでも楽しく体験ができると感じた。
体験場所となる秋山盆栽園には、秋山さんが手がけ育てている立派な盆栽もたくさんあるので、体験の前後に、ぜひチェックしてもらいたい!
▶︎3ヶ月後…
家に持ち帰りせっせと水やりをして育てること3ヶ月。
剪定したところから新たな葉が生えてきて、もりもりとしてきた。
ちなみに、手入れは、なるべく朝日にあてて、毎日朝夕に水やりをすることと、月に1度ほど栄養(油かす)を与えるだけ。(とってもお手軽だ)
盆栽体験教室の概要
- 時 間:9:00〜17:00の間に自由参加
- 素 材:基本的にはお客様の盆栽を持ち込む。
※持ち込む素材がない場合は、秋山盆栽園で用意。 - 参加費:3,000円(材料費がかかる場合もあり)
5,500円(オリーブ盆栽素材・鉢代込み) - 備 考:自由参加のため、日時・時間を連絡して予約する。
ご希望の日時に開催。
オリーブ盆栽の場合は、教室終了後そのままお持ち帰りいただける。
※詳細は、秋山盆栽園HP「盆栽体験教室」まで。
「秋山盆栽園」の基本情報
- 所在地:山梨県韮崎市本町3-1-50
- 開園時間:9時〜17時
- 休館日:なし(園主が留守の場合あり)
- 電話:090-4832-8668
- メール:minorua424@gmail.com
- HP:http://www.akiyama-en.com/
全体を見て、富士山のように裾野が広がっている形が美しいと言われていますね。