にらレバライター、BEEK DESIGN スタッフとして編集・デザイン業に勤しむ。元地域おこし協力隊・青少年育成プラザMiacisスタッフ。1991年生まれ。韮崎高校出身。音楽・サウナ・お寿司が大好き。
休日の朝、「最近ちょっと切羽詰まってたなぁ」と思うときに頭の中に浮かんでくる場所があります。
それはうちから車を走らせ10分ほどで見えてくる、『韮崎旭温泉 韮崎旭の湯』です。
「ああ、あのお湯にぼんやりと浸かりたい・・・」
定期的にそう思うのは、単に私が温泉好きだからというわけではなく、他の温泉では入ることの出来ない、とっておきのお湯がそこにはあるから。
そのお湯は、全国の温泉マニアもわざわざ遠方から足を運んでくるほど。
駐車場には県外ナンバーの車やツーリングのバイクなどがいつでも停まり、ある温泉エッセイストによる著書『一度は行きたい名湯・秘湯・極湯』では、全国3位にも選ばれました。
しかし、韮崎の人に聞いてみると、意外と行ったことがないという人が多いように感じます。
全国の温泉マニアが絶賛し人気を集める旭温泉の魅力は、どこにあるのか。それをしっかりと地元の人にも届けたいと思い、今回、”名物おじさん”と名高い管理人の沼田道夫さん(76)にお話を伺ってきました。
温泉マニア必見!!
思わず明日にも行きたくなってしまう、「贅沢な100%源泉かけ流し」で浸かれる極上の泉質の秘密や、沼田さんの溢れんばかりの「温泉愛」についても語ってもらいました。
全国でもトップクラスの温泉
取材の挨拶を交わすやいなや、沼田さんはすごい勢いで温泉について話してくれました。
この温泉は全国でもトップクラスの温泉だから。窪田さんも入ったことあるならわかると思うけど、こんな温泉、他じゃ入ったこんないら。
俺も色んな温泉に入ったけど、このレベルの温泉にはまず出会ったことがないね。
まるで湯口から源泉が溢れ出るかのように、沼田さんの言葉からは旭温泉への愛と誇りがザバザバと溢れ出します。
沼田さんはバス会社を退職後、17年間にわたり、旭温泉の様子を見守ってきました。
当初、旭温泉はまだ建てられたばかりだったのだと言います。
このあたりは昔、桑畑で養蚕が盛んだったんだよ。そこに初代のオーナーが老人ホームを建てて、ホーム内のお風呂のために温泉を掘ってね。
だけど、水質もいいし湯量も多いからまちの人にも楽しんでもらいたいと思って、その後にこの旭温泉を建てたんだよね。たいしたもんだよ。
現在は、すぐ向かいで歯医者を経営する息子さんが、二代目オーナーをされているそうです。
本業で忙しいオーナーに変わり、沼田さんは温泉の管理人として受付に立ち、お客さんにこの温泉の魅力を伝え続けています。
天然の源泉を100%かけ流し!自慢の『炭酸泉』
浴槽は一つだけ、露天風呂もサウナもなく、一見至って普通の小さな温泉に見えますが、この温泉のすごいところは、地下1200メートルの岩盤から湧き出てくる天然の炭酸泉をザバザバと掛け流しているという贅沢さにあります。
加水・加熱・循環なしの100%源泉の炭酸泉に入れる温泉は全国でも珍しく、中でもここまで気泡が細かい炭酸泉に入れるところはほとんどないのだそうです。
細かい気泡により、お湯が白く濁って見えます。
5分も入っていると指で身体に文字を書けるほど、肌が泡で覆われていきます。
温度は38〜39℃とぬるめですが、炭酸の効果ですぐにポカポカしてくるので、物足りないということはないと思います。
水分をしっかり取りながら、一時間ほどかけてじっくりと入るのがオススメです。
個人的にツボだったポイント
「こういうものが浮いていることがあるけれど、それは汚れではないのでお気になさらず」という張り紙は全国のほかの温泉でも見かけますが、こんな風に「お願いしてくる」張り紙には出会ったことがありません。とってもロマンに溢れている・・・!
この張り紙を見るたびに「確かになぁ」と深い地中に想いを巡らせるのです。
この文を書いたオーナーにたまたまお会いできたので話を聞いてみると、そこにはやはり強い想いが込められていました。
人間も動物なのだから自然に触れたときの感覚を大切にしてほしいんです。頭ばかり使っていると疲れてしまうから、自然に触れることで自分と対峙するのがいいと思うんです。
自然って、手を加えて人間の思い通りにしていいものではないと思うんですよね。
炭酸泉は、放っておくと酸化鉄で黄色っぽくなってしまうし、レジオネラ菌の予防なども行わないといけない。大体の温泉が予防などのために塩素を入れているんですけど、うちでは毎日3時間かけて湯抜き清掃を行うことで綺麗なお湯を保つことができているんです。
本物の温泉というのは手がかかるんです。職員には、本当に感謝しています。
旭温泉では毎朝6:00から3時間かけて湯抜き清掃が行われています。
そのおかげで、100%かけ流しの源泉から伝わってくる地中の恵みを、そのまま肌で感じることができるのです。
肌をツルツルにしてくれる源泉
お湯から出た後はシャワーで洗い流さない方が、美肌効果が持続するそうです。
そしてなんと、旭温泉の源泉は飲むこともできます。
毎回清掃終わりにザブンとこのお湯に浸かり、このお湯をゴクゴクと17年間飲み続けてきた沼田さんは、ツルツルのお腹を自慢げに見せてくれました。
とても76歳とは思えぬ美肌(美腹)。
ストックがある場合には、受付で沼田さんにお願いすると冷蔵庫で冷やした源泉を飲ませてくれるので、声をかけてみるといいと思います。
(おそらく熱い語り付きなので、時間に余裕があるときがオススメです(笑)
温泉エッセイや全国紙にも紹介。口コミで全国から温泉マニアが集まる
温泉エッセイスト高橋一喜さんの著書の中で全国3位に選ばれたのみならず、全国紙などのメディアでも紹介されています。
メディア効果に加えて口コミも広がり、遠くは京都などから温泉好きのお客さんが来るそうです。
この日も上野原から来たお客さんが「遠くて来るのをためらったけど、来てみて本当によかった!予想以上の泉質の良さだったから絶対にまた来たい!」と絶賛してくれているところに沼田さんは、「上野原は遠いうちに入らないよ」とバッサリ(笑)
そのくらい遠方からのお客さんが多く来ているということなのでしょう。
県外からのお客さんが8割。「地元の人の方が来ねぇんだ(泣)」
旭温泉では、地元の小学校の社会科見学の受け入れもしています。
「やっぱり嬉しいもんだねぇ」と沼田さんは子どもたちの感想を大切そうに眺めます。
地域に密着した温泉である一方で、お客さんの8割は県外の方なのだそうです。
せっかく全国トップクラスの温泉があるのだから、地元の人にももっと入りに来て欲しいし、もっと宣伝して伝えていってほしい
と沼田さんは言います。
以前ご紹介した新府の共選場も然り、県外の人には注目されているのに、韮崎に住んでいる人は気が付いていない韮崎の魅了的なスポットが色々あるのだと思います。
にらレバでは、これからも、こうして地域に密着して地道に頑張っている地域の人やスポットの力になっていけたら嬉しく思います。SNSなどを通じて情報発信に慣れている私たち若い世代が、もっともっと地元の情報発信に一役買ってもいいのではないかと感じました。
それにはまず地元のいいところを体感するところから。
思わず人に伝えたくなる、とっておきのお湯が、ここ旭町にありますよ。
基本情報
韮崎旭温泉 韮崎旭の湯
- 住所 :山梨県韮崎市旭町上条中割391
- 電話番号:0551-23-6311
- 開館時間:10:00~20:00(火曜定休)※火曜日が祝日の場合は翌日が休み
- 料金 :大人600円/子供300円(3歳以下無料)