【編集部のつぶやき】
先日、とある集まりで、あらゆる分野で活躍している「本好き」の方々と話す機会がありました。参加者は初めましての方ばかり。若干の緊張感と空気の読み合いが繰り広げられる中、会は進行していきます。
終盤に差し掛かり、ひょんなことから、話題は「私の推しを語る!」へと変わりました。すると、その場の空気がガラッと変わり、それまでただ相槌を打つだけだった無口な方も含め、みんながみんな目を輝かせながら、推し作品のおもしろさや心を打たれた場面について流暢に語り始めたのです。
その姿がとても素敵で魅力的で…数分前に初めて耳にした作品が「次に読みたい作品」へと昇格していました。おそるべし、ファンの熱量とプレゼン力です…。
作品自体の素晴らしさもさることながら、こうやって自分の「好き」を伝えてくださる方々がいるからこそ、私たちは自分の琴線に触れる作品を探し出すことができるんだな〜と感じた瞬間でもありました。皆さんの「推しの一冊」は、どんな作品ですか?
さて、今月も大村記念図書館の皆さまが厳選したとびっきりの一冊が勢揃いです。あなたの心へと語りかけてくる一冊に出会えますように。
目次
加藤館長の今月のイチオシ!
一千一秒物語
著者:稲垣足穂 出版社名:新潮社
佐藤春夫に師事し、大正時代末期から昭和50年頃にかけて飛行機や機械、天体、エロティシズムについての著作を多く発表した作家・稲垣足穂のデビュー作。約50ページの中に70編の作品を詰め込んだ非常に独創的な構成で、あらすじと言えるようなものはなく、ショートショートの元祖とも評されています。
月や星にまつわるエピソードをメインに、人と天体がやり取りを行うといった奇想天外で独特なユーモアにあふれた内容。「物語」と題していますが、非常に詩的で不条理に満ちた独創性は、短編の名手・芥川龍之介からも認められていました。
館長が語る「ここがすごい!」
日本文学に詳しい人を除くと、「稲垣足穂」を知る人はほとんどいないかもしれません。私も、三島由紀夫や澁澤龍彦のエッセイ等でその存在を知り、初めてこの作品を読んだ時、その特異な表現に衝撃を受けました。
大正時代の作品ですが、とてもモダンでお洒落な内容。文章表現は多少古びているものの、新鮮な感覚は現代でも十分通用するように思われます。
ほとんどが、星や月に突き飛ばされたり、取っ組み合いをしたりという内容で、ドタバタが続くスラップスティック・コメディのような味わいが感じられます。沢山ある話の中で、一番好きなのは「星を食べた話」です。
たった5行の文章ですが、口の中の狭小な空間から広大な宇宙空間までの広がりがみられ、“星の味”という表現がシュールで気に入っています。はたして、星はどんな味がするのでしょうか…?
甘すぎずシニカルで、硬質な美しい表現のヘンテコリンな内容が続くユニークな世界観はタルホ(足穂)だけのもの。
とはいえ、タルホの世界に深く分け入ってみると、容貌魁偉、褌一丁で坊主頭の写真の印象があまりにも強すぎ、今では、飛行機とお尻が好きな変なおじさんというイメージになってしまっています…。
場所 | 背ラベル |
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一般 棚20 | BFイ |
親子で読みたい絵本
かめれおんせん
作:林木林 絵:喜湯本のづみ
出版社名:ひさかたチャイルド
読み聞かせがだんぜん楽しい、脱力系ユーモア絵本です。 森の中にひっそりと温泉が湧いています。そこに白いウサギが飛び込むとお湯が白くなり、サルが入ると茶色に、カラスが入ると真っ黒になりました。
いろいろな動物やお日様までが入ってきて、お湯はカラフル。すると、お湯がぐらぐら、ざばざば。中から現れたのは巨大なカメレオンで、その色は……?
内藤さんが語る「ここがすごい!」
森の中にある温泉に動物たちが興味津々!次は何色のお湯になるのかなぁ?その次は?いろいろな動物たちが温泉に入っていきます。子供と一緒につぎは何色になるかな?と話しながら読んでみると面白いと思います。
お話の最後にはカメレオンがでてきて…? 作者の林木林さんの遊び心いっぱいの言葉遊びと喜湯本のづみさんのカラフルなイラストにも注目です!
場所 | 背ラベル |
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展示ハウス1 | Eキ |
10代で出会いたい本
「ハーフ」ってなんだろう?
著者:下地ローレンス吉孝 出版社名:平凡社
「中学生の質問箱」シリーズの1冊。「ハーフ」ということばから人々が想像するイメージとはどんなものだろう?「ハーフ」であるそれぞれの方はどのような経験をして、どのような思いを抱えているのでしょうか?
歴史を振り返り、様々なルーツを持つ人にインタビューをして、私たち一人ひとりが考え、社会全体で見つめるべき課題を浮き彫りにします。
日向さんが語る「ここがすごい!」
無意識のうちに、外見や何らかの特性からその人に対してのイメージを持っていることはありませんか?
例えば、「図書館で働いている人はまじめで静かそう」「日焼けしていて、スポーツマンに違いない」など。それらは、自分の勝手な推測に過ぎないということを、本書を読んで痛感しました。「ハーフ」ということばでくくられていても、背景は人それぞれ。
「1年1組の子どもたち」というグループであっても、誰一人同じ子どもがいないのと同じです。 そして、数多くのインタビューの中には目を疑うようなことも書かれていました。
学校生活やアルバイト、就職活動の中で心ない言葉を投げられる、あからさまな偏見の目で見られる…。決して過去の話ではありません。
振り返って考えてみました。自分が何気なく発することばや行動が、誰かを傷つけてはいないだろうかと。100年前・50年前と比べると、はるかに人や情報の行き来が増している現代。
我々にできるのは、まず「知る」ことです。自分の世界を広げ、他者を理解してともに生きていくため、本を手がかりとしてみませんか。
場所 | 背ラベル |
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こどもにすすめたい本2022 | 361シ |
大人が読みたい本
最初の質問
詩:長田弘 絵:いせひでこ
出版社名:講談社
詩人長田弘氏の代表作のひとつであり、中学3年生の国語の教科書(学校図書)にも掲載されている「最初の質問」を、『ルリユールおじさん』などで人気の画家のいせひでこさんが、絵本にした一冊です。
詩の言葉を表面的に捉えて絵をつけるのではなく、いせ氏が自分の中で一度消化し、新たな作品として表現した力作。 卒業や結婚等、新しい道を歩む人へ贈る言葉としても引用されることの多い詩が収録されています。
宮川さんが語る「ここがすごい!」
こちらの本は絵本で一見子ども向けに思えるかもしれませんが、絵本の中には大人が読んでも感情を動かされるものがたくさんあります。
むしろこの「最初の質問」という詩は大人になってからの方がいろいろな物事に考えを巡らせることができるのではと私は感じています。
”質問”というタイトルの通り、多くの問いかけで構成されているこの詩ですが、小さな子どもにも理解しやすい問いかけにも関わらず、私にとってはしばらく忘れていたことを思い出させてくれるような、そんなはっとする質問ばかりでした。
例えば、1日に1回空を見上げたか、その空は遠かったのか近かったのか。美しいと思うものは何か、好きな花の名をあげられるか……。
読み進める度、世界はこんなにも広く、自分が考えているよりももっともっと豊かだと気づかされ、胸が苦しくなりました。様々な物事が起きている今だからこそ、読んでほしいという思いもあります。
読んだ貴方は何を感じるでしょうか。読む人それぞれに答えのある、そんな1冊だと思います。
場所 | 背ラベル |
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絵本知育コーナー | XEイ |
5月の季節展示から厳選!
夜フクロウとドッグフィッシュ
著者:ホリー・ゴールドバーグ・スローン
メグ・ウォリッツァー
訳:三辺律子 出版社名:小学館
突然知らない人から「そっちのお父さんは、うちのお父さんと付き合っているんだよ」というメールが届きます。ある女の子がお父さんのメールを盗み見すると、ある男性とお付き合いをしていて、娘たちを同じサマーキャンプに行かせようとしていることを知り、お父さんの恋人の娘のメールアドレスを調べたのでした。
12歳同士という以外、性格も好みも正反対な二人が父親たちの魂胆に抗いますが、次第に仲良くなっていきます。
赤松さんが語る「ここがすごい!」
ほぼメールのやりとりだけで話が進んでいく、現代ならではの書簡体小説です。おばあちゃんからは手紙というのもうなずけます。
2人の少女のやりとりが軽快で、「!」や「?」の数に感情が溢れています。意外な展開が次々に巻き起こりますが、最後はハッピーエンドです。
今回の展示では「友情」の本として取り上げましたが、家族、同性婚などいろいろな要素を含んでいます。
児童書ではありますが、現代的な家族のあり方と二人の少女の友情、あっと驚くドラマチックなラストをお楽しみください。
スタッフが腕によりをかけて選んだワンテーマ5冊のフルコース。おすすめ本を料理に見立て、読みやすい入門書=前菜からはじまり、スープ、メインの魚・肉料理、最後はデザートで締めくくります。
3冊のプチコースや単品ア・ラ・カルトもあります。
[展示期間:4月29日(祝・金)~5月29日(日)まで]
大村記念図書館からのお知らせ
みなさんから募集した本のエピソードを本と一緒に展示します。(所蔵がない場合もあります。)
十人十色のエピソードをぜひお楽しみください。
●開催期間:4月29日(金)〜 5月29日(日)図書館内に展示
図書館読聞かせコーナーにて季節の絵本の読み聞かせを行います。
また、おはなし会に参加された方にはおりがみと折り方の解説をプレゼントします。おうちでおりがみを楽しんでください。
●開催期間:5月14日(土)14:00〜14:20
※対象は、マスクの着用が可能な「2歳~小学校低学年」のお子さん(無料)
上記イベントについての詳細は、チラシ、またはホームページをご覧ください。
※新型コロナウイルス感染拡大の影響により内容が変更になる可能性があります。
最新情報は図書館まで、お問い合わせください。(韮崎市立大村記念図書館:0551-22-4946)
大村記念図書館の基本情報
所在地 : 〒407-0015 韮崎市若宮1丁⽬2番50号
営業時間: 平日 10:00~19:00、土日祝日 10:00~17:00
電話番号: 0551-22-4946 (FAX)0551-22-4950
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