「みんなの本棚」2022年6月号|大村記念図書館

 【編集部のつぶやき】 

6月ときくと「梅雨」という言葉が真っ先に浮かび、次に国民の休日が「1日も登場しない月」というイメージが続きます。大型連休のある賑やかな5月との落差からか、少し暗いイメージを持たれがちですが、6月は自然にとっても、人間にとっても大事な月なのだと私は感じています。

梅雨は農業、中でも「稲の栽培」に欠かせないものであり、この時期にまとまった雨が降るからこそ、田畑に水を貯蔵することができるのです。まさに、恵みの雨ですね。

また、6月21日には1年の中で最も昼の時間が長くなる「夏至」が訪れ、6月末になると各地の神社で「夏越の祓」が執り行われますよね。茅の輪をくぐったり、人型でお祓いしたり、年明けからの半年間で溜まった罪穢れを落とし、無病息災を願う…結構、重要な行事だったりします。

6月は、暑さ厳しく体力を必要とする夏に向けて「整える月」。そう考えると、ちょっぴりワクワクしてきませんか?

雨の日も多く、おうち時間が増える季節だからこそ、家族と過ごす時間、読書に触れる時間を楽しんでみてはいかがでしょうか。

 

加藤館長の今月のイチオシ!

安藤忠雄 建築を生きる

著者:三宅理一 出版社名:みすず書房

あらすじ

建築界のノーベル賞と言われるプリツカー賞受賞者で、世界的に活躍している建築家・安藤忠雄の評伝。その生い立ちから、人生に影響を与えた周囲の人々との関わりを丹念に描くとともに、代表となる建築作品についても取り上げています。
建築史家である三宅理一が、膨大な資料を基に、その人となりや思想だけではなく作品までを深く掘り下げて論じており、安藤建築の作品論としても読むことができる稀有な内容の書籍です。

 

館長が語る「ここがすごい!」

“安藤建築”に注目しています。

建築物を見るためには基本的に現地に足を運ばなければなりません。安藤氏は主に関西で活躍されているため、なかなかその機会に恵まれませんが、2017年国立新美術館で開催の展覧会では原寸大の「光の教会」が展示され、実際にスリットから光が入る様子を体感できたのは貴重な経験でした。

ちなみに、山梨県内では竜王駅舎と清春芸術村の光の美術館を手掛けられ、気軽に見られます。 特異なスタイルの建築が多いため、熱烈なファンがいる一方、多くの批判があることも事実です。

私も、すべての安藤建築が大好き!という訳ではありませんが…例えば、表参道ヒルズや上野の国際子ども図書館は、既存の建物にご自身の思想を組み込み、土地の記憶や建物の歴史を活かしている点に強く共感しています。

本書を読むと、「都市ゲリラ」を標榜し現在まで第一線で活動を続ける安藤氏の姿勢が良く分かります。

今の日本社会は快適さや効率性ばかり追求し、それに慣れ過ぎてしまっているように感じています。もちろん配慮が必要な方への支援は重要ですが、多少不便でも人間本来の感性に刺激を与える建築がもう少し増えても良いのかなと思うこのごろです。

 

場所 背ラベル
一般 棚31 523.1ミ

 

親子で読みたい絵本

かさどろぼう

作・絵:シビル・ウェッタシンハ 絵:いのくまようこ
出版社名:徳間書店

あらすじ

スリランカのお話です。はじめて町にでかけ、はじめてかさというものを見たおじさんは 「なんてきれいで、便利なものだろう」と思い、かさを買って村に帰ります。
村に帰ったおじさんは、かさを物陰に隠して、コーヒー店で話をしていると 何とかさがなくなっていました。こんなことが何度も続き、遂におじさんは かさどろぼうの正体を突き止めようとします。さて犯人はだれなのでしょう?

 

赤松さんが語る「ここがすごい!」

沖縄の紅型を彷彿させるような色づかいの表紙は、思わず手にとらずにはいられませんでした。

小さな村で自然豊かに暮らすおじさんの姿や、何度もかさがなくなってしまうおおらかな展開に肩の力が抜けて、さらに意外な犯人の姿に安堵することでしょう。見開きいっぱいに描かれた絵はおじさんの暮らす村の様子が伝わってきます。

梅雨は外遊びができず体力を持て余すお子さんにイライラしたり、洗濯物が乾かず何となく気分がすっきりしないこの時期におすすめしたい一冊です。

 

場所 背ラベル
絵本創作外国 棚5 Eウ

 

10代で出会いたい本

10代のための疲れた心がラクになる本 「敏感すぎる」「傷つきやすい」自分を好きになる方法

著者:長沼睦雄 出版社名:誠文堂新光社

あらすじ

「敏感気質(HSP/HSC)」の第一人者でもある児童精神科医・長沼睦雄先生が、友だち関係、勉強、家族、容姿…
生きづらさを抱えている10代に向けて、ストレスの正体や「超敏感気質(HSP)」についての知識を紹介。どうすれば気持ちを変え、行動を変えられるか具体的な方法を知ることができます。 

 

笹島さんが語る「ここがすごい!」

不登校、出社拒否、中高年の引きこもりなどが珍しくなくなった世の中になりました。

この本のすごいところは、どうすれば気持ちを変え、行動を変えられるかの具体的な方法が書いてあるところです。読んでみて「なんだ、当り前じゃないか」と思われるかもしれませんが、当たり前のことができないから困っている人もいるのです。小さな単行本ですが内容は盛りだくさんです。

そして、この本は電子書籍版もご用意しております。

韮崎在住・在勤・在学の方なら韮崎大村記念図書館の電子図書で、音声読み上げで聞くこともできます。ゆったり寝ころびながら、音声で聞くのは、いかがでしょう。

10代に限らず興味のある方、どなたにもおすすめです。

 

場所 背ラベル
ヤングアダルト 棚37 146.8 ナ

 

大人が読みたい本

一九八四年

著者:ジョージ・オーウェル 訳:高橋和久
出版社名:早川書房

あらすじ

作品の舞台はオセアニア。ビッグ・ブラザーと呼ばれる独裁者に支配された全体主義国家。街中に貼られた巨大なポスターと、至る所に設置されたテレスクリーンによって人々の暮らしは監視され、思想も言動も厳しく規制されている。
真理省で、過去の歴史の改ざんを担当する主人公は、あることをきっかけに、テレスクリーンから唯一見えない場所で日記を付け始めた。それはここでは“重大な犯罪行為”となるのだが…。

 

鈴木さんが語る「ここがすごい!」

あまり耳馴染みのない“全体主義”という言葉。作中に登場する国では、政府の機構が、平和省・愛情省・潤沢省、そして主人公が勤務する真理省の4つに分割されています。

この字面を見ただけでは何とも平和そうな世界を想像してしまうのですが、ところがどっこい!な、全体主義体制の恐怖を描いたディストピア小説です。

この「一九八四年」が刊行されたのは1949年、イギリスの作家ジョージ・オーウェル45歳の時。刊行から70年以上が経った今でも、「現代の寓話」として世界中で多くの人々に読み継がれています。

そして、21世紀になった今、情報技術の急速な発展と表裏一体の監視社会。それが現実となり世界のどこかではこんな国が存在する(かも知れない?)ことを、オーウェルは果たして想像していたのでしょうか…。読みごたえ充分な一作です。

 

場所 背ラベル
文庫 棚37 933.7オ

 

6月の季節展示から厳選!

素顔の文士たち

著者:田沼茂 出版社名:河出書房新社

あらすじ

本書は、写真家の田村茂さんが30年の長きに渡って撮影してきた人物写真の中から、特に文筆を生業にしてきた81人を厳選して掲載した写真集です。昭和の文豪といわれる佐藤春夫、太宰治、坂口安吾、三島由紀夫など、名立たる作家の日常をとらえた写真が収められています。
それらの写真には、田村さんが撮影時に相対した文豪たちの印象に関する文章も、田村さんの過去の著書の中から抜粋するかたちで添えられています。 写真家としての矜持、圧倒的な仕事振りが伝わってくる一冊です。

 

篠原さんが語る「ここがすごい!」

本書で、おすすめの点は2点あります。まず、「太宰治の最期の27枚」が収録されていることです。

太宰治には、生前の肉声や動画などが存在しません。「太宰治の最期の27枚」には、様々なアングルから撮影された太宰治の表情を見ることができます。これまで見たことがない貴重なショットの数々に、太宰治の人間的魅力を感じとることができます。

もうひとつのおすすめポイントは、この写真集から昭和が感じられることです。

昭和初期の舗装されていない道路、木造の本屋や居酒屋などの店内、手巻きたばこや万年筆、座敷の襖や障子といった生活空間が捉えられていて、当時の空気に触れることができます。

本書は、歴史的な文学者たちの姿をとらえただけでなく、時代の生きた資料としての価値がある一冊です。

 

6月の季節展示は「太宰治 ~人と文学~」
6月は、太宰治の命日である桜桃忌の季節です。また、太宰治の小説『斜陽』を題材に山梨で撮影された映画『鳩のごとく 蛇のごとく 斜陽』が、10月に全国上映されます。

そこで、太宰治の小説は勿論、関係者の証言などを集めた資料などから、人間・太宰治の魅力に迫る特集を組みました。

特に、太宰治が甲府に住んでいた頃の写真が掲載されている郷土資料、太宰が初めて出版した処女短編集『晩年』の初版本(復刻版)も展示します。 この機会に、ぜひご覧ください。
[展示期間:6月1日(水)~6月29日(水)まで]

 

にらレバ編集部のおすすめ

松下幸之助 成功の金言365

著者:松下幸之助 編:PHP研究所
出版社名:PHP研究所

あらすじ

「成功するためには、成功するまで続けることである」
松下幸之助は、日々自問自答を繰り返し、あるべき姿を思い描いて、その実現に邁進する“実践する哲学者”でした。
そんな松下幸之助が残した膨大な言葉の中から、人生・仕事・経営の著述内容を中心にすくい上げ、計365+1項に凝縮した一冊です。

 

松野が語る「ここがすごい!」

はじめて松下幸之助さんの本に触れたのは大学生の頃。数多の著名人やビジネスマンが愛読書にしているというベストセラー本「道をひらく」がきっかけでした。

松下さんが紡いだ言葉ひとつ一つが、進路や部活に人間関係と、思い悩んでいた私の心をやさしく包み込み、軽くしてくれたのです。一瞬で松下幸之助さんのファンになったことは言うまでもありませんね(笑)。

社会人になってからは、経営者向けのものや、人間哲学について書かれたものなど、様々な松下さんの著書を読みました。中には、難しい内容のものもありましたが、いずれも「琴線に触れる言葉」が必ず書かれていて、本を通して「忘れてはいけない大切なこと」「あるべき姿」を教えてもらったように思います。

さて、この本は、そんな松下さんの数ある著書の中から、人気の言葉を「365日分」抜粋し、まとめられた良いとこどりの1冊です。今日の日付のページを読んでもよし。なんとなく開いたページを読んでもよし。いつでも読める手軽さがポイントなのです。

もしかしたら、松下さんの言葉を借りて、今の自分に必要なメッセージが見つかるかもしれませんよ。

※ 巻末に付録として「10分でわかる松下幸之助の生涯」がついているので、松下さんのことをよく知らない、という方にもオススメです。

場所 背ラベル
一般 棚22 159マ

 

大村記念図書館からのお知らせ

\おはなし会/
図書館読聞かせコーナーにて季節の絵本の読み聞かせを行います。
また、おはなし会に参加された方にはおりがみと折り方の解説をプレゼントします。おうちでおりがみを楽しんでください。

開催期間:6月11日(土)14:00〜14:20
※対象は、マスクの着用が可能な「2歳~小学校低学年」のお子さん(無料)

 

上記イベントについての詳細は、チラシ、またはホームページをご覧ください。

※新型コロナウイルス感染拡大の影響により内容が変更になる可能性があります。
最新情報は図書館まで、お問い合わせください。(韮崎市立大村記念図書館:0551-22-4946)

 

大村記念図書館の基本情報

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