【編集部のつぶやき】
出会いと別れの季節といわれるように、3月は日常でも社会でも学校でも…様々な場面で大きな変化を迎える時期かと思います。
非常に残念ではございますが、「みんなの本棚」もまた、今月号で最終回を迎えることとなりました。
2022年1月から始まり15回にわたる連載の中で合計90冊の書籍をご紹介してきました。大村記念図書館の館長&司書の皆様の選書はどれも興味深いタイトルばかりで、活字に対する愛に触れながら記事の編集を担当させていただきました。
私自身も、この連載を通して「知らないだけで世の中は、こんなにも素敵な本で溢れているのか」と感激し、おすすめ本を手に取っては新たな知の扉を開くきっかけもいただいておりました。この連載を目にされた皆様にとっても「みんなの本棚」がそうであったら嬉しい限りです。
これまで応援してくださった皆様ありがとうございました。また、この企画に多大なるご助力をいただいた大村記念図書館の皆様にも心から感謝しております。
引き続き「みんなの本棚」として、大村記念図書館をご利用いただけましたら幸いでございます。(松野)
目次
加藤館長の今月のイチオシ!
源氏物語(瀬戸内寂聴訳)
作者:紫式部 訳:瀬戸内寂聴
出版社名:講談社
11世紀初め、平安時代中期に紫式部によって書かれた世界最古の長編小説で、54の帖で構成されています。主人公は、言わずと知れた超イケメンでプレイボーイの光源氏。
彼の華麗な女性遍歴を中心に、栄華を極めたのちの苦悩と、光源氏の没後、子や孫まで至る当時の貴族社会の様々な人間模様が描かれています。
多くの現代語訳が出ていますが、瀬戸内寂聴訳は、敬語を使った美しい日本語を特徴としつつ、分かりやすく読みやすく書かれています。
原文にも忠実で、文中の和歌に丁寧な解説がつけられているほか、各巻末に「源氏のしおり」として用語解説や登場人物の相関図等が付され、初心者でも源氏の世界を堪能できるようになっています。
館長が語る「ここがすごい!」
「みんなの本棚」最終回は、自分が一番好きな小説と言っても過言ではない『源氏物語』をご紹介します。 過去、田辺聖子の『新源氏物語』を皮切りに、円地文子、谷崎潤一郎、与謝野晶子、大和和紀の漫画『あさきゆめみし』と、色々な現代語訳を読んできました。
他に、橋本治の『窯変源氏物語』から、最近では林望や角田光代が現代語訳を手がけ、変わり種では、アーサー・ウェイリーの英訳『The Tale of Genji』の日本語訳まで刊行されています。
それぞれに特徴があり、読み比べるのも楽しいのですが、一番のお気に入りは、谷崎潤一郎訳です。美しい日本語が使われているだけでなく、原典に忠実であることから、高校の定期テストや大学受験では随分助けられました。ただ、谷崎源氏は近寄りがたい印象があるように思われ、今回は多くの方に親しまれている瀬戸内寂聴訳を選びました。
寂聴訳も美しい日本語が特徴的ですが、瀬戸内晴美としての情熱的な恋愛経験と、寂聴として出家したのちの仏教的な観点から物語を読み解く2つの視点がうまく重ねられ、登場人物の感情の機微が一層強く心に迫ります。いつの時代も人々の想いは変わらないことがよく分かる作品です。
みんなの本棚の企画として、1年間にわたり様々なジャンルの本を取り上げてきました。みなさんがなかなか手に取らないであろう本を積極的に紹介してきましたが、これらお薦めの本が少しでも皆さんの心に留まることになればと期待しています。これまで「みんなの本棚」をお読みいただき、ありがとうございました。
場所 | 背ラベル |
---|---|
一般 棚10 | 913.3ム |
※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。
親子で読みたい絵本
ぶくぶくざばあ
作: 新井洋行 絵:田中 六大
出版社:講談社
水面にぶくぶく、ぶくぶくと泡があがってくると・・・・・・。
綺麗な鯉が飛び上がってきました。その後も、水面には泡がぶくぶくと・・・・・・。この後にはどんなものが飛び上がってくるのか開いて確かめてみましょう。
望月さんが語る「ここがすごい!」
大人になると、水面に泡がぶくぶくとなっていても見過ごしていることの方が多いと思います。でも、子どものときなら「この泡なんだろう」と興味津々で見ていたような気がします。
"ぶくぶく"と出る泡に“ドキドキ”させてもらい、その後に飛び上がる何かに楽しさを感じさせてもらえるます。 臨場感のある色彩が、より私たちを楽しませてくれるそんな一冊です。
場所 | 背ラベル |
---|---|
読聞かせコーナー | Eタ |
※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。
10代で出会いたい本
かがみの孤城
著者:辻村深月 出版社名:ポプラ社
学校での居場所をなくし、閉じこもっていた"こころ"の目の前で、ある日突然部屋の鏡が光り始めます。輝く鏡をくぐり抜けた先にあったのは、城のような不思議な建物。そこには“こころ”を含め、似た境遇の7人が集められていました…。
本屋大賞受賞ほか、圧倒的支持を受け堂々8冠のベストセラーで、2022年冬には劇場アニメ化されました。
笹島さんが語る「ここがすごい!」
家族から薦められたのと、昨年映画化されたこともあり読んでみました。 ストーリーの中で、私が意表を突かれたところが3つあり、ぐんぐんと読み進むことができました。
作者の辻村氏は、学校事情に詳しいと感じました。例えば、担任が人を傷つける側の生徒に翻弄され核心をつく指導ができない場面や、傷つけられた生徒が言い出せない心情の描き方。心理カウンセラーの行動。主人公の"こころ"に対して腫れ物に触るような扱いをする両親など…。どのシーンでも作者は人物像を見事に描いています。
中でも特に私の心に残った台詞は、オオカミの仮面をかぶった少女の 「あんたたち、自意識過剰なんじゃないの?」 という言葉です(先日公開の映画では芦田愛菜さんが声優を担当されています)。
そしてスクールカウンセラーの「勉強が一番ローリスクで結果がでるもの」「どこへいっても傷つける人はいる」という言葉も心に残りました。
この本から私は、「傷つけられた人は一人で戦わなくていいよ。大人や仲間に頼っていいんだよ」というメッセージを感じます。10代の人に限らず、その上の世代にも是非読んでみてほしい1冊です。
場所 | 背ラベル |
---|---|
一般 棚13 | Fツ |
※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。
大人が読みたい本
都会と犬ども
著者:マリオ・バルガス=リョサ
訳:杉山晃 出版社名:新潮社
厳格な規律の裏では腕力と狡猾がものを言う、弱肉強食の寄宿生活。首都リマの士官学校を舞台に、ペルー各地から入学してきた白人、黒人、混血児、都会っ子、山育ち、人種も階層もさまざまな一群の少年たち(=犬っころども)の抵抗と挫折を重層的に描き、残酷で偽善的な現代社会の堕落と腐敗を圧倒的な筆力で告発します。
松原さんが語る「ここがすごい!」
読みたいと思いながら、ずっと読めていなかった作品でした。ようやく重い腰を上げて読み始めると、衝撃。その面白さにページをめくる手が止まりません。
その文章量に一瞬怯みますが、内容は短く区切られ、フォーカスされる人物が次々と移っていきます。過去の話。家族の話。特定の人物による語り。読み進めるごとに掘り下げられていく感覚と、暴力的な現実の動向と、ある謎が読者を物語に没頭させます。
正直すっきりする読後感ではありませんが、しばらく頭から離れません。個人的にはガンボア中尉"推し"です。軍律に忠実で、規則を守り、良心に恥じない生き方をする彼の厳しさが好ましいですし、妻のことを気遣い、手紙を財布に入れて持ち歩く姿に普段では見られない人間性を感じます。
登場人物の全員に救いがあるような話ではないですが、「フリアカの駐屯地だろうと、この士官学校だろうと、私にはおなじことです」と言える彼に今後救いがあることを強く望みます。
2010年にノーベル文学賞を受賞したマリオ・バルガス=リョサの出世作です。ぜひ、ご堪能ください。
場所 | 背ラベル |
---|---|
一般 棚20 | 963バ |
※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。
3月の季節展示から厳選!
ざんねんないきもの事典
著者:今泉忠明 出版社名:高橋書店
イラスト:下間文恵、徳永明子、かわむらふゆみ
ざんねんないきものとは一生けんめいなのに、どこかざんねんないきものたちのことである。地球には、すごい能力をもつ生き物がたくさんいます。
でも一方で、思わず 「どうしてそうなった!?」 とつっこみたくなる「ざんねん」な生き物も存在するのです。この本では、進化の結果、なぜかちょっとざんねんな感じになってしまった122種の生き物たちをご紹介します。
佐久間さんが語る「ここがすごい!」
本書は生き物の意外な一面をあえて「ざんねんな」と表現して紹介しています。コアラやゴリラなど私たちになじみのある生き物から本書を読むまで知らなかった珍しい生き物まで幅広く取り上げられています。
1ページに1種類の生き物の情報がコンパクトに収められているので、好きなところで開いて読んでも楽しめます。
実はこの本、私にとっては以前勤めていた職場の先輩から「あなた、こういうの好きそうだから」と頂いた思い出の1冊でもあります。
もらった当人は意外に思ったのですが、読んでみると「どうしてそうなった!?」と思う生き物の特徴や習性が盛りだくさんで一気に読んでしまいました。各章にパラパラ漫画もついており隅々まで楽しめる1冊です。
本のタイトルには、その時々の流行をみることができます。例えば、「○○の壁」や「○○の子」、「ざんねんな○○」などです。
皆さんも、きっと目にしたことのある本を集めました。この機会に、手に取ってみても楽しいのではないでしょうか?
[展示期間:3月1日(水)~3月30日(木)まで]
にらレバ編集部のおすすめ
養老先生のさかさま人間学
著者:養老孟司 イラスト:さとうまなぶ
出版社:ぞうさん出版
「考えないと楽だけど、楽をするとあとで損しますよ」ーーー解剖学者の養老孟司先生が、自分の頭で考えるために必要な85個の視点を伝授。身の回りの風景、社会のありかた、心の持ちかた…いろんなことを「さかさま」に見てみよう。
子どもから大人まで楽しめる優しい1冊で、各章の導入にフルカラーのマンガ、2ページ見開きで完結するエピソードが85編収録。7章には被災地での特別講演を完全収録。
松野が語る「ここがすごい!」
少年時代に戦争体験をし、解剖学者として様々な「生と死」に向き合ってきた養老先生が語る言葉ひとつ一つには重みがあり、「物事の本質」を掴むことの大切さを痛感させられます。
多くの著書を出版されている先生ですが、「内容が難しそう」「敷居が高い」と感じ、なかなか手に取りづらいと感じる方も少なくないはず…。そこで、先生の思考に触れる入門書としてご紹介したいのが、この1冊です。
内容は、編集者が適当に選んだ「漢字1文字」をテーマに先生が思ったことをただ書くという、とてもシンプルなもの。しかし、85のテーマの中に養老先生が何度も訴え続けいている"言葉"や"エッセンス"が凝縮されていて、読了後に日常の見え方にじんわりと変化が現れてきます。
かわいいイラストと共に、見開き2ページでわかりやすくまとめられているので、普段あまり本を読まない方にも安心です。
先頭から読んでもよし、気になった言葉から読んでもよし、適当に開いたページから読んでもよしのお得な1冊です。
場所 | 背ラベル |
---|---|
一般 棚17 | 914.6ヨ |
※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。
大村記念図書館からのお知らせ
図書館読聞かせコーナーにて季節の絵本の読み聞かせを行います。参加された方にはおりがみと折り方の解説をプレゼントします。
【開催日】3月11日(土・祝)14:00〜14:20
※ 対象は、マスクの着用が可能な「2歳~小学校低学年」のお子さん(申込み不要)
ニコリ3階「多目的ホール」にて、市内3つの朗読ボランティアグループの方々にご出演いただき、成人一般、学生、目の不自由な方などに向けて朗読会を行います。(無料/申込み不要)
【開催日】3月18日(土)14:00〜15:00
※コロナウイルス感染拡大防止に伴う利用規則として入場者は、氏名・連絡先・住所の記入が必要となります。予めご了承ください。
【上映作品】グーグーだって猫である
【開催日】3月19日(日)14:00〜16:00
ニコリ3階「多目的ホール」にて、字幕・音声ガイド付きの映画を上映します。視覚や聴覚に障がいのある皆さんはもちろん、健常者の方もご覧頂けます。
3月4日(土)から韮崎市立大村記念図書館カウンターまたは電話(0551-22-4946)にて受付。(無料/先着順 /定員40名程度)※協力:住友商事
インターネット上から韮崎市立大村記念図書館のご利用にお困りの方にむけて、図書館ホームページからの本の予約や貸出延長手続き、韮崎市電子図書館の利用の仕方などをお手伝いします。
韮崎市立大村記念図書館カウンターまたは電話(0551-22-4946)にて受付中。
(先着順/対象:韮崎市立大村記念図書館の利用登録をされている方、ご自身でインターネット接続可能なスマホ・タブレット・ノートパソコンなどをお持ちいただける方/定員:2名)
※韮崎市電子図書館は、韮崎市在住・在勤・在学の方が対象です。
【開催期間】3月22日(水)11:00〜(45分程度)
「暮らしに溶け込むワインの愉しみ方」
【開催日】3月26日(日)15:00〜16:30
ニコリ3階「多目的ホール」にて、韮崎市のワイン生産者・保坂香子さんに、ご自身のご職業やこれまでの食のお仕事での経験を生かしたワインのお話をしていただきます。
※試飲の有無を選択できます。当日試飲を希望される方には飲酒に関する誓約書にご署名をいただきます。なお、状況により試飲を中止する場合もあります。
3月11日(土)から3月24日(金)まで韮崎市立大村記念図書館カウンターまたは電話(0551-22-4946)にて受付。(無料/先着順 /定員40名程度)
上記イベントについての詳細は、チラシ、またはホームページをご覧ください。
最新情報は図書館まで、お問い合わせください。(韮崎市立大村記念図書館:0551-22-4946)
大村記念図書館の基本情報
所在地 : 〒407-0015 韮崎市若宮1丁⽬2番50号
営業時間: 平日・土日祝日 10:00~19:00
電話番号: 0551-22-4946 (FAX)0551-22-4950
休館日 : カレンダーはコチラ
Twitter :@NirasakiOmuraL
Instagram:@nirasakiomural
YouTube :公式チャンネルはコチラ