「みんなの本棚」2022年12月号|大村記念図書館

 【編集部のつぶやき】

ふと、カレンダーに視線を移すと「師走」の2文字が目に飛び込み、あと少しで2022年が終わるという事実に驚き、気持ちがざわついた。なぜか、歳を重ねるごとに体感速度が加速し、毎年ベスト記録を叩き出しているような気がするのだ。

そういえば、流行語大賞トップ10入りもした某バラエティ番組のキャラクターは、その理由について「人生にトキメキがなくなったからだ」と答えていたことを思い出す。予想の斜め上を行く回答に面食らったが、「それが、大人になるということなのか…」と半ば強引に納得し、それ以上深く考えることを諦めた。

12月といえば「今年の汚れ、今年の内に!」を至る所で耳にするようになり、気持ちよく新年を迎える為、家中を掃除したり、目の前の仕事を必死で片付けたり…と、忙しない日常が先に控えている人も多いことだろう。

例にもれず、私もそうである。しかし、何事もONとOFFが大事なことも知っているぞ。今年が終わるその前までに図書館で気になる書籍を借りて「年初めはゆっくり活字に浸る時間を作る!」と自分を奮い立たせながら、ラストスパートをかけているのだ…。

最後に、読者の皆様、この連載に1年間お付き合いいただき誠にありがとうございました。少々フライング気味ですが、良いお年を〜。皆様にとって2023年が「毎日、トキメキだらけの一年」となりますように。

加藤館長の今月のイチオシ!

ソロモンの指環 動物行動学入門

著:コンラート ローレンツ 訳:日高敏隆
出版社名:早川書房

あらすじ

有名な動物の「刷り込み」行動を発見したオーストリアの動物行動学者、コンラート・ローレンツがユーモアを交えて著した動物行動学の入門書。「ソロモンの指環」とは、イスラエルの王・ソロモンが魔法の指環の力により動物や植物と会話をしたという伝説によるもので、ローレンツ自身は、指環を持たなくても動物と話すことができ、自然の美しい真実の物語を知ることができる、と説明しています。
本書に登場する動物は、彼の近くにいた親しみやすい生き物ばかり。数々の楽しいエピソードの中に、生き物に対する深い愛情が読み取れます。ローレンツは、動物行動学を確立した業績により、1973年にノーベル医学生理学賞を受賞しています。

 

館長が語る「ここがすごい!」

みんなの本棚2022年1月号の『ロウソクの科学』と同様、中学時代、理科の先生に薦められた本です。

当時はコクマルガラスやハイイロガンなど、余り身近ではありませんでしたが、数年前、新婚旅行でウィーンを訪れた際、奥さんが体調を崩して病院に一日入院し、付き添っていた時に病院の中庭に飛んできた鳥が日本のカラスと違った感じで、この鳥がコクマルガラスなのか!と感慨深く思い出しました。

また、本書の影響でアクアリウムに憧れを持ち、10年ほど前にはメダカやドジョウを飼っていました。今回読み返して一番印象的だったのは、最後の「モラルと武器」の章で、肉食性と草食性の動物の社会的抑制システムの有無について。

肉食獣は残忍な印象とは違い同族の争いでは抑制が効くが、ハトやウサギなど優しいイメージの動物では、その争いは恐ろしいほど苛烈になるとのこと。人間はいずれの道を選ぶのか?という問いで結ばれます。

この本が書かれた1949年当時から70年以上を経ても人の争いは繰り返されています。ソロモン王の伝説では、王が神から知恵を授けられた逸話が最も有名です。人々が知恵を結集し、豊かな心を持って暮らせる社会が実現することを願ってやみません。

 

場所 背ラベル
文庫 棚34 B481.7 ロ

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

親子で読みたい絵本

さむがりやのサンタ

作/絵:レイモンド・ブリッグズ
訳:すがはら ひろくに 出版社名:福音館書店

あらすじ

「やれやれまたクリスマスか! 」面倒くさそうに目を覚ましたのは、サンタクロース。寒さに愚痴をいい、煙突に文句をいいながら町の子どもたちにプレゼントを配ります。南の島に憧れながら、一日の仕事をおえると、お風呂にはいり、ビールを一杯飲んで、ごちそうを楽しみます。
皮肉屋だけど実はやさしい、人間味あふれるサンタクロースを描いたクリスマスにぴったりの絵本です。

 

望月さんが語る「ここがすごい!」

あの、「スノーマン」でも知られる、レイモンド・ブリッグズの作品。

漫画のようなコマ割りに、吹き出しのセリフ。 幼児には少し読みにくいかもしれません。 それでも、サンタさんの見てはいけない日常をこっそり覗いてしまったようなドキドキと、ワクワク嬉しい気持ちで、胸がくすぐったくなります。

子どものころ、すみからすみまで眺めた大好きな絵本です。 ぶつぶつ文句を言いながらも、その仕事ぶりや暮らしは実に丁寧。こんなに親近感の沸くサンタさんなら本当に居るのでは?!と、24日の夜は期待せずにはいられません。

街がキラめきだす季節に、ふと読みたくなる。あたたかいココアでも飲みながら・・・大切なひととくっつきながら・・・枕元にはおっきい靴下を用意して・・・さむがりやのサンタさんには大好きなお酒の差し入れも忘れず添えて・・・(笑)

今年のクリスマスは、親子でこんなサンタさんが来るのを信じて待ってみませんか。 「まっおまえさんもたのしいクリスマスをむかえるこったね」 ラストのメッセージが絵本をとび出して聴こえてきそうです。

♪ハッピーメリークリスマス♪

 

場所 背ラベル
絵本創作外国 Eブ

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

10代で出会いたい本

星降プラネタリウム

著者:美奈川 護
出版社名:KADOKAWA/角川文庫

あらすじ

星が生まれる場所を知っているか――それは星の魔女の指先からだ 新入社員の昴が配属された先――それは、渋谷のプラネタリウム施設だった。
希望とは違う所で働くことになった昴が「人は何のために星を見るのか」その答えを知るために、故郷を捨てた己と向き合っていく。

 

小野さんが語る「ここがすごい!」

自然のプラネタリウムと呼ばれるほど星空が美しく見える島で育った主人公・昴は、故郷を出て東京で就職します。

しかし、大手企業に就職するも配属されたのは、なんの因果か渋谷のプラネタリウム施設。星空にまつわる思い出や、故郷にトラウマを抱えつつも、昴はそこで星空解説員を目指すことになります。

仕事を、人を、星を通して成長する姿を描いた心温かいヒューマンドラマです。  物語の舞台がプラネタリウムということもあり、施設ならではのお仕事描写や、本文に出てくる四季折々の星座解説を読んでいると、本当にプラネタリウムに行ってみたくなります。

また度々描写される、昴の故郷の雄大な美しい星空を思い浮かべると、私は地元・山梨の冬の星空を思い出してしまいました。主人公の昴が育った島とは場所は違えど、見えている星たちは一緒。

冬の澄んだ空気、刺すような寒さのなか、その時期だからこそよく見える星空を見ながら、自分のことを考える…そんな経験を誰もがしたことがあるのではないでしょうか。

そんな、自分を凛と見つめることを思い出せてくれる優しい物語になっています。  この冬、悩みながらも頑張って前へ進んでいる方に、おすすめの一冊です。

 

場所 背ラベル
文庫 棚36 BFミ

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

大人が読みたい本

仕事は楽しいかね?

著者:デイル・ドーテン 訳:野津智子
出版社名:きこ書房

あらすじ

大雪で閉鎖になった空港のロビーに居合わせた、老人と35歳の男性。そこで2人は色々な話をします。そのうち、老人から「仕事は楽しいかね?」と質問され、男性は「はい」と答えられません。
実は、仕事を続けていくことに悩んでいる最中だったのです。そんな男性に、老人は仕事における楽しさとは何かを語り始めます。

 

篠原さんが語る「ここがすごい!」

「目標を最初に考えることよりも、とにかく試して様子をみることを楽しめ」 この姿勢が仕事では大切であると述べられています。

その例として、本書ではアップルコンピューターとコカ・コーラの誕生に至る経緯が紹介されています。 アップルコンピューターの共同設立者、スティーブ・ジョブズとゲイリー・ウォズニアックは、大学時代、起業という目標はなく、ただ自作のパソコンを作ることを楽しんでいました。

それが計算機能だけではないパソコンの可能性を見つけるきっかけになります。コカ・コーラの創業も飲料品の開発という目標はなく、薬剤師として働いていたときに、ある薬のシロップに炭酸を混ぜて飲んでみたら美味しかったことがきっかけです。

ものを試すことを楽しむ中で、これまでにない可能性を見つけ出し、それを世間に広めていくことが最後に目標になっていく。この順番で仕事をしていけば、仕事がつまらないと感じることはないと本書では説かれています。また、この順番で仕事ができる環境を求めていくことも必要であると述べられています。

年末のこの時期、自分の仕事の姿勢について、本書で再考してみてはいかがでしょう。

 

場所 背ラベル
一般 棚37 933.7ド

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

12月の季節展示から厳選!

ねずみさんのパンツ

作:tupera tupera 出版社名:ブロンズ新社

あらすじ

パンツが見当たらないねずみさんと、ねずみさんのパンツを一緒に探してくれるしろくまさんのおはなし。パンツ探しのなかで、いろいろなパンツに出会います。
あんなパンツやこんなパンツ、どんなパンツ!?ねずみさんは自分のパンツを見つけることができるのでしょうか。

 

望月さんが語る「ここがすごい!」

今回行う展示は、店頭などで本が販売される際に巻かれている本の帯について注目した展示です。帯に書かれているキーワードが目立つものをチョイスする中で、この本だけは本の内容だけでなく、帯の見た目からも一際目立っていました。

なんと、帯がパンツの形をしていたのです。そして本がパンツを履いている・・・・・・。まさか、これがねずみさんのパンツなのか!?と読む前から読者の気持ちを掴んできます。(図書館の本には帯パンツを履かせておけないのが残念ですが。)

どんな素敵なパンツが出てくるのか、その目でお確かめください。

12月の季節展示は「本帯~帯から本を選んでみてませんか~
帯には目を引くキャッチコピーや有名人の推薦文、受賞歴など多くの情報が込められています。書店で本を手に取る際に、帯をチェックする方も多いのではないでしょうか。 今回はそんな帯をドドンと集めました!ぜひ、図書館でも帯の魅力を味わってみてください。

[展示期間:12月1日(木)~12月27日(火)まで]

 

にらレバ編集部のおすすめ

森に暮らし、鳥になった人。

著:柳生博
発売:東京ニュース通信 発売:講談社

あらすじ

今年4月に85歳で没した俳優・柳生博は、1970年代に、まだ八ヶ岳エリアが開発途上のころから東京との2拠点生活を始めた、田舎暮らしのパイオニア的存在。自ら森を切り拓き、地域の拠点となるギャラリー&レストラン「八ヶ岳倶楽部」を創設し、自然に寄り添った生活の実践者としても知られる。
本書では小社刊「八ヶ岳デイズ」の連載コラムを含め、過去に出版した著書3作品を再録し、故人の自然と共生した人生を辿っていく。

 

松野が語る「ここがすごい!」

別の書籍を探すため館内を歩き回っていた時、特設コーナーで圧倒的な存在感を放って、こちらを見ていたのが、この書籍でした(厚さ3.3cmです笑)。

正直に話すと、私はこの作品を手にするまで、俳優・柳生博という存在を知りませんでした。だからこそ、柳生氏が自然をこよなく愛し、心を痛めながら人と自然との共存を模索している姿に感動し、その真っ直ぐで純粋な思いを色眼鏡なしに受け止めることができたのかもしれません。

「自然へ敬意を払い、共に生きる」とはこのことなのか…と心が熱くなる内容です。

私たちは、無意識に自由や便利さを追求してしまい、欲望に従い、深く考えないままに欲しいものを必要以上に消費しています。その一方で、今手元にあるものがどのように作られ、どのような経路を辿って私たちの元まで届いているのかについて思考を巡らせる機会は、ほとんどないかと思います。

自然の存在もそうだと思うのです。私たちが気づかぬところで、自然が惜しみなく与えてくれているモノ・コト。数え切れないほどの愛(恵み)を手渡してくれているという事実に、心を向ける必要があるのではないか…と。

八ヶ岳という馴染みのある地域が舞台で、とても読みやすい文章で書かれているので、普段本を読み慣れていない人でも楽しめるかと思います。ぜひ手に取って、山梨の自然の美しさを感じてみてください。

 

場所 背ラベル
郷土山梨 棚41 Y650.4ヤ

※ 上記のエリアもしくは、「みんなの本棚」特別ブースに展示されています。

 

大村記念図書館からのお知らせ

\大人の為の朗読会・朗読のつどい/
ニコリ3階「多目的ホール」にて、韮崎高校放送部と市内の朗読ボランティアグループの方々にご出演いただき、成人一般、学生、目の不自由な方などに向けて朗読会を行います。(無料/申込み不要)
【開催期間】12月17日(土)14:00〜15:00

※コロナウイルス感染拡大防止に伴う利用規則として入場者は、氏名・連絡先・住所の記入が必要となります。予めご了承ください。 

\楽する図書館 /
インターネット上から韮崎市立大村記念図書館のご利用にお困りの方にむけて、図書館ホームページからの本の予約や貸出延長手続き、韮崎市電子図書館の利用の仕方などをお手伝いします。当館カウンターまたは電話にて受付中。
(先着順/対象:韮崎市立大村記念図書館の利用登録をされている方、ご自身でインターネット接続可能なスマホ・タブレット・ノートパソコンなどをお持ちいただける方/定員:各回2名)
※韮崎市電子図書館は、韮崎市在住・在勤・在学の方が対象です。
【開催期間】12月14日(水)、21日(水)13:30〜(45分程度) 

上記イベントについての詳細は、チラシ、またはホームページをご覧ください。

※新型コロナウイルス感染拡大の影響により内容が変更になる可能性があります。
最新情報は図書館まで、お問い合わせください。(韮崎市立大村記念図書館:0551-22-4946)

\年末年始の休館のお知らせ/
12月28日(水)~年明け1月3日(火)まで年末年始の休館となります。
12月28日(水)は館内整理日により休館。
12月28日(水)17:00までは館外の「本の返却口」及び「返却ボックス」をご利用いただけますが、同日17:00以降から1月3日(火)の間は、ご返却が一切できませんのでお気をつけください。
※ なお、DVD、他の図書館から借り受けている資料は「本の返却口」及び「返却ボックス」へは入れないでください。1月4日(水)以降に韮崎市立大村記念図書館カウンターにご返却ください。

 

大村記念図書館の基本情報

所在地 : 〒407-0015 韮崎市若宮1丁⽬2番50号
営業時間: 平日・土日祝日 10:00~19:00
電話番号: 0551-22-4946 (FAX)0551-22-4950
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