日本で韮崎だけ!コーヒーマニア絶賛の「オールド・ビーンズ・コーヒー」とは?|コクテール堂 韮崎工場


私がお手伝いしているBEEK DESIGNでは、毎朝ベランダの植物に水をあげた後、ハンドドリップでコーヒーを淹れるところから1日が始まる。

冷蔵庫から豆が入った缶を取り出し、蓋を開け、まずは鼻を近づけて芳醇な豆の香りをたっぷりと吸い込む。そして手動のミルで豆を挽き、フィルターに移した粉に、ゆっくりと円を描くようにお湯を注いでいく。

その際、粉がモコモコと膨れ上がるのを見るのがたまらなく好きだ。

モコモコの正体は、粉から排出される炭酸ガスであり、焙煎したての豆には炭酸ガスが多く残っているので、しっかりと粉が膨れ上がる。『おいしさの証拠』とも呼ばれるこの膨らみを見ていると、良い1日の始まりを感じることができる。

私のおすすめは、『コクテール堂 韮崎工場』のコーヒーショップで販売している豆を使うこと。焙煎したばかりの豆を購入することができるので、必ずこの膨らみを見ることができるし、古くから全国のコーヒー通に愛されているコーヒーなだけあって、味もおいしい。

この喜びをより多くの人と共有するために、今回は『コクテール堂 韮崎工場』を見学したときの話を書こうと思う。

そもそも『コクテール堂』ってどんなお店?

『コクテール堂』は、1949年に日本で唯一のオールド・ビーンズ・コーヒー(生豆を数年寝かせて作るコーヒー)焙煎メーカーとして、東京・虎ノ門に誕生した。

創業者の林玄氏は、ロシア人宅に滞在していた際に毎朝飲んでいたオールド・ビーンズ・コーヒーの味がどうしても忘れられず、コーヒーを飲む文化が浸透していなかった日本にその味を広めていこうと決意し、コクテール堂を創業したそうだ。

その後、高度経済成長期を経て日本人の生活様式も代わり、コーヒーを楽しむ人たちも増えていく。手間暇かけたコクテール堂のコーヒーは、コーヒー通に高く評価され、全国のカフェやレストラン、ホテルなどでも使われるようになっていった

そんな日本のコーヒー文化の先駆けとなったコクテール堂のコーヒー豆は、30年前に建設された韮崎市穂坂町の工場で焙煎され、全国のコーヒー愛好家の元へ届けられているのだ。

焙煎したての豆を購入できる工場併設のショップ

ショップの写真

韮崎工場にはコーヒーショップが併設されており、職人たちの手で丁寧に焙煎されたコーヒー豆を、いち早く購入することができる。

ブレンドもストレートも中深煎りから深煎りまでバリエーションに富んでおり、好みやその日の気分に合わせて選べるのが嬉しいところ。

そして、工場直営だからか、価格がびっくりするほど良心的なのだ。一般的な平均額はわからないけれど、コーヒー豆の価格にはさまざまな理由があるため店によって差があるのは当然のこと。
でも、1日に何杯も飲んでしまうほど「コーヒー好きな」私にとって、コクテール堂の豆はお手頃かつ、馴染みの味なのだ。

コーヒー豆の価格表

深煎り好きの私のおすすめは、“甘みを含んだコクと苦味”と紹介されている『オールド5ブレンド』。しっかりと苦味があるのに重くなくて、朝昼晩いつ飲んでもしっくりくる。

ちなみに、「今月のおすすめの豆」は、20%OFFで購入することができる。毎月いろいろな味を試してみるのも楽しみ方の一つ。

ギフトセットの写真

また、店頭ではギフトセットの販売もしていて、その場で郵送手続きをすることも可能だ。普段お世話になっている人へプレゼントしてみては?

韮崎はコーヒーにとって「日本一」居心地のいい場所?

韮崎工場の外観

コクテール堂のホームページに韮崎は、「コーヒーにとって、日本でいちばんいごこちのいい場所」と書かれている。

標高約500メートルに位置し、適度に風が吹き、日照時間が長く、年間を通して降水量が少ない穂坂町は、生豆のエイジング(熟成・乾燥)に最も適した環境なのだそうだ。

現在はコロナ禍のため、見学の受け入れをストップしているが、通常であれば工場の中に入って焙煎の様子や生豆が保存されている様子を見ることができる。(※要予約)

私はコロナ禍以前に工場見学をしたことがあり、そこからコーヒーにより興味を持つようになった。コーヒーをこよなく愛するスタッフの方から詳しい説明を聞いて、さまざまな驚きや発見があった。その中でも特にコクテール堂ならではの魅力的なポイントだと感じた2つの特徴を紹介したい。

特徴1:熟成倉庫で生豆を最長2年『エイジング』する

豆入りの麻袋が熟成倉庫に並ぶ写真

四季を通しての風向き、風速を計算に入れ、各方角に大きな窓を設けたという韮崎工場の生豆熟成倉庫には、生豆が入った大量の麻袋が並んでいる。

生豆の状態でエイジング(熟成・乾燥)させることで、余分な苦味を飛ばし、豆が持つ旨みやコクを引き出しているそうだ。

他のメーカーの焙煎所では、生豆の状態で豆を保存するのは長くても一週間程度なのに対し、コクテール堂では最長2年ほど保存するというから驚きだ。

喫茶店の卸としてスタートしたコクテール堂は、喫茶店に来るお客さんたちが何杯飲んでも飽きたり疲れたりすることのないコーヒーを目指していて、そのためには柔らかい味わいを引き出すこの工程が必要だったそう。

長期間生豆を保存するためには、他の植物の種や虫、石の混入を取り除くためのクリーニングなどの工程も増える。時間も保管スペースも要し、決して効率のよい方法とは言えないが、コクテール堂では70年以上この方法を変えることなく、伝統の味を守っている

特徴2:熟練の職人による手作業の焙煎

釜の中を覗く職人の写真

全国に安定した品質の豆を滞りなく届けていることを考えると、豆は機械によって大量かつ均一に焙煎できると想像する人も多いのではないだろうか。

私もその一人だったが、実際に工場を訪れて、熟練の焙煎職人たちが豆の状態を目で確認しながら、手作業で火力を操っていることを知って驚いた。

職人たちは、その日の生豆の状態や天気、湿度などの条件を考慮しながら、7本の火力を一本一本操っているらしい。火力が7本ある手動の焙煎機は珍しく、その分調整も難しい。
変わらぬ味を守り続けることができるかどうかは、職人たちの腕にかかっているのだ。

一つのことを極めてそこに命を燃やすのは、本当にすごいことだと思う。ひらすらに釜の中を見つめる職人たちの真剣な眼差しが、とても印象的だった。

よりみちの帰り道

韮崎工場の看板

コクテール堂からの帰り道はいつも、豆が入った茶色い紙袋を車の助手席に載せて、穂坂の坂道を下る。

私たちが日常生活を送っている間、熟成倉庫に並ぶ麻袋に入った生豆は、窓から入ってくる気持ちのいい風を浴びながら、ゆっくりと変化を続け、焙煎所では職人たちが真剣な顔つきで、釜の中の豆と向かい合っている。

そんな様子を想像しながら、じっくりとお湯を注ぎ、粉の膨らみを愛でながら淹れるコクテール堂のコーヒーは、本当に美味しい。

全国のプロフェッショナルたちに愛される豆を日常使いできる贅沢に感謝して、これからもこの店のコーヒーを味わっていきたい。

『コクテール堂韮崎工場 直営SHOP』の基本情報