穂坂のブドウ収穫体験!知って、食べ比べて“推しの品種”を見つけよう|フルーツランド平賀


茅ヶ岳山麓に広がる韮崎市穂坂町は、日照時間の長さ、昼夜の寒暖差、水はけの良さ等の恵まれた自然環境により、ぶどうの名産地として知られています。

標高約600mに位置するなだらかな丘陵地帯で生食用とワインの醸造用のぶどうの両方が栽培されており、甘みが凝縮されたおいしいぶどうが夏から秋にかけて直売所に並びます。

今回のよりみちでは、穂坂町で40年以上もの間ぶどうを栽培をしてきた「フルーツランド平賀」を編集部3名(窪田・松野・片上)で訪れ、ぶどうの収穫と手入れ作業を体験し、収穫したてのぶどう6種類の食べ比べも楽しみました。

穂坂町のぶどうの魅力をたっぷりと堪能した1日の様子をお届けします。

 

フルーツのことならおまかせ!「フルーツランド平賀」

社長の中山さんと5名のスタッフでつくるおいしい果物

フルーツランド平賀の外観

「フルーツランド平賀」は、平成20年にぶどう農家として穂坂町に開業しました。現在は約2.7ヘクタールの畑で約30種類のぶどうを栽培している他、別の畑で桃やりんごの栽培もおこなっています。

20年程前から、フルーツの店頭販売も開始。毎年フルーツの出来を楽しみにしてくれている常連のお客さんが多く、中には3世代に渡って来ているお客さんもいるのだそう。長く地域の人に愛されてきた農園であることがうかがえます。

社長の中山透さん

2代目社長の中山透さんは、大学時代にフルーツランド平賀でアルバイトをしていました。果物の収穫に大きな喜びを感じたことから、そのまま就職。果物栽培への熱意が認められ、2016年には2代目として会社を任されました。

中山さんの他には、従業員が2名とアルバイトが3名。ぶどうの繁忙期を迎えた今は人手が足りず、猫の手も借りたいくらい大忙しなのだそうです。(そんな中、取材の対応をしていただき本当にありがとうございました!)

 

家用も贈答用もここで!新鮮なぶどうがお得に買える直売所

直売所に並ぶぶどう

韮崎インター北の信号を東側に曲がると左手に見えてくるフルーツランド平賀の直売所には、その時期の旬の穫れたてぶどうが並んでいます。品種の違いはスタッフの方が丁寧に説明してくれるので安心です。発送手配もその場でお願いできるので、贈答用のぶどうの購入もオススメ。

また、変色や玉割れしたぶどうを間引いて房の形が少しいびつになった、いわゆる「ハネだし」と呼ばれるぶどうも格安で販売しています。

取材日(9月上旬)には、シャインマスカット(通常であれば1房1,500円〜1,600円)が1,000円で販売していました。実際に食べてみると贈答用と同じく、甘くてとってもジューシー。

とってもお買い得ですが、少し不揃いなだけでハネだし扱いになってしまうと考えると農家さんは大変だなと感慨深い気持ちになりました。

 

醸造用ぶどうを原料としたワインも販売!

フルーツランド平賀では、マスカット・ベリーA、メルロー、甲州等ワインの醸造用ぶどうも栽培しています。それらのぶどうは山梨県内の複数のワイナリーに送られ、ワインづくりの原料となっています。

ワイン「穂坂収穫」

店頭には、同じ町内にある「マルス穂坂ワイナリー本坊酒造」の穂坂町で栽培されたぶどうを主体として醸造されたワイン「穂坂収穫」の他、近隣のぶどう農家で原料を持ち寄りワインメーカーに製造を依頼してつくったという自家製ワイン、ぶどうジュース等も並んでいます。

山梨ぶどうサイダー

私たちは、「山梨ぶどうサイダー」を購入して飲んでみました。濃いぶどうの味が濃縮されていて、甘すぎずとってもおいしかったです!

 

農家の小林正裕さんが語るぶどうづくり

フルーツランド平賀では、新型コロナウイルス流行前はぶどう狩りの体験を実施していたそうです。現在は、停止中で再開の目処はまだ立っていないそうですが、今回は、地元メディアの取材ということで特別に受け入れを許可していただきました。

体験を案内してくださった小林さん

私たちにぶどうの収穫の仕方を教えてくれたのは、従業員の小林正裕さん。中山さんとは学生時代の同期で、この辺りでは一番若手のぶどう農家なのだそうです。

小林さん「ぶどう狩りの受け入れをしていたときは、「食べ残し無し」というルールで、60分の間にお好みのぶどうを好きなだけ収穫して食べてもらっていました。今日はお試しということで、5種類のぶどうを収穫してもらいたいと思っています」

編集部一同「5種類も!?たのしみです!どうぞよろしくおねがいします!」

 

おいしいぶどうをつくるための工夫

小林さん「まずは、簡単に畑の説明をさせてください。ぶどうの枝が太いのは、栄養がしっかりと行き渡っている証拠です。太い枝が茶色くなっていたら、収穫に適した時期を迎えていると思ってください。

木を植えて最初の5年間ほどは実をつける前に側枝を切り落とし、栄養を主枝に集中させるようにします。その後は、枝同士が成長したときに混雑しないようにすることも考えながら、何度も剪定を繰り返していきます」

窪田「収穫がはじまるまでに5年もかかるんですね。実にかけてある袋には、どのような意味があるんですか?」

小林さん「袋は雨除けと病気対策です。これをしておかないと、強い雨で実が割れてしまったり、晩腐病などの病気になってしまったりする確率が高くなります。最近は気温が40°近くまで上がることもあるので、干しぶどうのようになってしまうのを防ぐ日傘の効果もあります」

松野「これだけ多くのぶどうがあると、一つひとつの房に袋をかけるのも大変そうですね」

小林さん「ぶどうの色付きが悪い場合は、上の葉っぱを取ったり、袋を取って透明なビニール傘のようなものをつけて全体に日があたるようにすることもあります」

片上ぶどうの様子に合わせた細かい作業が必要なんですね」

小林さん「気温も降水量も毎年違うので、正解がないのがむずかしいところです。大変ではありますが、収穫の喜びは何にも変えることができません」

 

ぶどう狩りを体験!品種ごとの味の違いの解説付き!

穂坂の日をいっぱいに浴びて大きく育った「ピオーネ」

ピオーネの写真

小林さん「それでは、まずはピオーネを収穫してみましょう。ピオーネは、甘みの中に酸味があってさっぱりとした味です。ジベレリンという植物ホルモンが入った液に房を一つひとつ浸ける『ジベレリン処理』を行っているので、種の無いぶどうになっています。房の上を手で持って、その上の辺りをハサミで切ってみてください。」

ピオーネを収穫する片上

片上「えっと…こうかな?初めは緊張しますね。それにしても、色の濃い丸い実がびっしりと詰まっていて、すごくきれいですね。」

小林さん「穂坂町は西日がよく当たる斜面に畑があるので、黒系のぶどうの色付きが良いと言われています。色が濃い方が糖度も増すので、甘くておいしいぶどうになります。」

 

ぼこぼこした粒の形と甘さが特徴「瀬戸ジャイアンツ」

小林さん「次は、瀬戸ジャイアンツを収穫してみましょう。こちらも種が無く、皮ごと食べられる品種です。ぼこぼことした形の粒になるのが特徴で、糖度が高く酸味の少ないぶどうです。」

瀬戸ジャイアンツを収穫する松野

松野「確かに丸が3つ合体したような、特徴的な粒の形をしていますね。

常識だったら申し訳ないのですが、『緑のぶどう=マスカット』という認識で良いのでしょうか?

小林さん「マスカットは品種名になります。ただ、ぶどうの品種は2つの品種を交配させてつくられているので、どれがマスカットでどれがマスカットではないと決めるのはむずかしいんです。例えば、巨峰とカノンホール・マスカットを交配させてできたのがピオーネという品種になります。」

松野「マスカットのハーフやクォーターみたいなものがたくさんあるんですね。勉強になります!」

 

まろやかな甘さの果汁が滴る「ロザリオ・ビアンコ」

小林さん「それでは、次はロザリオ・ビアンコを収穫してみましょう。ロザリオ・ビアンコは透明感のある果肉で、実が締まっていて噛むと甘い果汁が滴るように溢れます。種はありますが、皮ごと食べられる品種です。」

ロザリオ・ビアンコを収穫する窪田

窪田「大粒できれいな黄緑色ですね。この形が人工的なものではなく、自然の中から生まれてくるなんて不思議です」

 

ぶどうの王様と名高い!大人気「シャインマスカット」

小林さん「それでは、続いてダントツの人気を誇るシャインマスカットを収穫してみましょう。ご存知の通り、皮ごと食べても渋みはほとんどない、糖度の高いぶどうです。さっぱりとしたマスカットの香りで後味も爽やかです」

シャインマスカットの写真

片上「光り輝いていて『シャイン』という名前がぴったり!神々しいですね」

小林さん「9月に収穫する品種ですが、8月から問い合わせが入るほど大人気です。すっきり甘くて誰にでも食べやすいのが人気の理由だと思います」

 

生食も可能!酸っぱさがおいしい「マスカット・ベリーA」

小林さん「最後は醸造用の畑に移動して、マスカット・ベリーAを収穫してみましょう。袋に包まれているのが生食用、包まれていないのが醸造用のぶどうです」

マスカット・ベリーAの畑

松野「ベリーAって、そのまま食べられるんですか!?醸造用ぶどうは生食できないと思っていました」

小林さん「少し酸っぱいですが、生食でも食べられます。暑い時はこのくらいの酸味があってもおいしいと思います。皮離れが良いので、果肉を押し出すと簡単に果肉だけを食べられますよ」

窪田「ぶどうの味とワインになってからの味を比べてみても面白いかもしれませんね!」

 

状態の良いぶどうを届けるための手入れ作業を体験!

小林さん「せっかくなので、ぜひ直売所横の作業スペースでおこなっている手入れ作業も体験していってください。

ぶどうの手入れの説明をする小林さん

朝のうちに2台の軽トラで、荷台いっぱいにぶどうを収穫をしてきて、昼にここで手入れ作業を行っています。まずはこうして枝の部分を掴んで持ち上げ、ぶどうの粒を一つひとつチェックします。玉割れや変色した粒がある場合は、枝の根元から切り落とします。

ぶどうを箱に入れる様子

きれいなぶどうのみになったら、ぶどうの表面についた白い粉のようなもの(ブルームという鮮度を保つ天然成分)が取れないように優しく手の上に乗せて枝の部分を短くカットします。全体の形が良いものはA品の箱へ、間引いたことで隙間ができてしまったものはB品の箱へ入れます。B品は送ることはできないので、直売所で安く販売します。」

ぶどうの手入れをする片上

片上「お客さんとの信頼を守るための大切な作業ですね。見落としがないか不安です…」

ぶどうの手入れをする松野

松野「ハサミを入れると大切なぶどうに傷を付けてしまいそうで心配です。ぶどうの世話や収穫の他に、こんな作業もあったんですね」

小林さん「知られていない作業はたくさんあると思います。今の時期は収穫や出荷で忙しいのですが、それが終わってからも剪定、肥料撒き、ぶどう棚の修復等、やることは盛りだくさんです」

窪田「ぶどうが私たちの口に入るまでには、本当に多くの手間がかかっているんですね。
今日は知らなかったことをたくさん知れて、さらにぶどうが好きになったような気がします。ありがとうございました!」

小林さん「それは良かったです。こちらこそありがとうございました!ぜひ、うちのぶどうを召し上がってみてください!」

 

食べ比べがオススメ!6種類のぶどうの味の違いは?

フルーツランド平賀のみなさまにお礼を告げた後に移動し、私たちは収穫したぶどう5種類+巨峰の計6種類の食べ比べをしてみました。

食べ比べ用にぶどうを並べた様子

贅沢な食べ比べ。シールがないものがピオーネです

以下は、食べ比べ中の会話の一部です。

ピオーネおいしい!強い甘みの中にやさしい酸味がある!」
「瀬戸ジャイアンツ、良いパツパツ具合〜!シャキシャキしてておいしい!」
「ロザリオの透明感がすごい!酸味がなくてまろやかな甘さだね」
「シャインマスカットって案外クセがなくて何個でも食べられちゃう」
「甘いの食べてる途中でベリーA挟むの良い!酸味を口が喜んでる!」
「巨峰が一番甘いかな?山梨県民が子どもの頃から食べてきた馴染みある味だよね」
「食べてるうちに心変わりして、どれが一番か決められない!」
「両手に持って、交互に食べ比べてみよう…あぁ、幸せ〜!」

ぶどう生産量全国No.1の山梨県に住んでいても、こうして改めて複数の種類を食べ比べる機会はなかったので、ぶどう大好きな編集部メンバーは大盛り上がり。

最近では、シャインマスカットの人気がとても高いですが、山梨では巨峰をはじめたくさんの個性豊かでおいしいぶどうが生産されています。あまり知られていない品種でも、食べてみると「これ、おいしい!」という新たな発見があるかもしれません。

また、今回は味を比べたことで品種ごとのより細かな特徴を感じながら深く味わうことができたので、みなさまにもぜひ食べ比べを試してみてほしいです。きっと、自分の好みにぴったりの子が見つかり、ぶどうへの愛がさらに深まってしまうこと間違いなし!

 

よりみちのかえりみち

見晴らしがよく開放感のある穂坂町のぶどう畑で、日の光を浴びてのびのびと育っているぶどうは、どれも宝石のようにキラキラと輝いて見えました。

実際に畑でお話をうかがったことで、おいしいぶどうをつくるには多くの手間と愛情が必要だということを実感することができ、より一粒一粒にありがたみを感じるようになりました。

この頃、山梨県でもフルーツ泥棒の被害に合う農家が続出していることがニュースで取り上げられています。農家さんが長い月日をかけて大切に育てたフルーツがいよいよ収穫の時期を迎えるというときに盗んで販売することなど、決して許されることではありません。

農家さんの努力がしっかりと報われ、これからもおいしいぶどうが正しいルートで多くの人の元に届きますように。

韮崎に来たらぜひ、フルーツランド平賀や穂坂町の直売所をのぞいて、おいしいぶどうをGETしてみてください。

 

「フルーツランド平賀」の基本情報

  • 所在地:山梨県韮崎市穂坂町192−1
  • 営業時間:9時〜17時30分
  • 開店期間:8月初旬〜11月初旬
  • 定休日:火曜日(収穫時期に合わせて変更あり)
  • 電話番号:0551234660