韮崎市の中心に位置する「七里岩(しちりいわ)」と呼ばれる高さ150m、長さ7里(約28km)にも及ぶ断崖絶壁の台地の上に、「ヴィラグリファーム七里岩(以下:グリファーム)」という、観光、体験、歴史探索などを複合した新しい取り組みを進める農泊施設があります。
富士山や南アルプスなど周囲の山々の姿や雄大な景色に癒されながら、ゆっくりと滞在することができる"隠れ家"のような一棟貸しの施設であり、今年6月にはなんと、宿泊者限定の「貸切サウナ」も新設されました。
サウナをこよなく愛する私は、韮崎に新しいサウナができたことが嬉しくて、「一体どんな
サウナなんだろう?」とずっと気になっていました。
その想いをグリファームオーナーの遠藤さんにぶつけ、今回は特別に取材の許可をいただけたので、サウナー(サウナを愛する人の通称)ならではの目線で体験レポートを書いてみたいと思います!
サウナ体験レポートの後には、宿泊施設の紹介もあるので、サウナ〜ではない方も、ぜひ最後まで読んでみてください。
目次
贅沢なプライベート空間!まずはサウナ環境をチェック!
2つの宿泊棟の間に置かれたグリファームのサウナスペースは、1日1組限定の完全なるプライベート空間。
周囲は薪棚に囲まれており、富士山、南アルプス、八ヶ岳、茅ヶ岳と四方に山々を望む絶景の中、家族や友人と人目を気にせず思いっきりサウナを楽しむことができます。
「バレルサウナ」と呼ばれる樽型のサウナは、サウナの本場フィンランドでつくられているもの。幅2m、奥行き4mという大きなサイズ感と、おとぎ話に出てきそうな丸くて可愛らしいフォルムに、入る前から気分が上がります。
サウナの外には水風呂用のバレルバスと、地面から突き出た無骨な佇まいがお洒落なシャワー、休憩用の椅子もばっちり完備。
地面が芝生のため、直接寝転んだり、子どもたちが遊んだりしやすい環境なのも魅力的です。
フィンランドブランドのサウナグッズを無料貸出
宿泊にサウナオプションを加えると、サウナ利用に必要なものを貸してもらえます。(※水着とサウナハットは持参する必要があります)
貸出用のサウナマットやガウン、アロマオイルなどの備品は全てフィンランドのサウナブランド「rento」のもの。上質な素材感とシンプルなデザインで全世界のサウナーたちに愛されるブランドです。
Bluetoothスピーカー機能のついたランタンも貸し出しているので、サウナ内で好きな音楽をかけるという、貸切サウナならではの楽しみ方もできちゃいます。
いざ、バレルサウナを体験!「ととのい」ました…!
サウナ環境の素晴らしさに感動したところで、いよいよ実際にバレルサウナを体験!今回は友人と3人でサウナタイムを満喫してきました。
気になるバレルサウナの中をご紹介!
サウナ小屋のドアを開けるとまず目に飛び込んでくるのはタオルやスマホなどの荷物を置いておける小さな前室。その先にあるガラスの内扉の先に、6人で満員になるサイズ感のサウナルームが広がっています。
内扉があることで温まった空気が外に逃げにくい仕様になっているそうで、一緒に入っている人に遠慮することなく自分のタイミングでサウナに出入りすることができます。
自然の景色や火の揺らめきに癒される極上のひととき
木の良い香りに包まれたサウナ室の奥の壁は、上部半分がガラス窓になっていて開放感たっぷり。
晴れていたら富士山が見えるのですが、この日はあいにくの雨模様。はじめは残念に思っていましたが、木々を眺め雨の音を聴きながら入るサウナもまた良き。リラックス効果があり、「むしろ雨の日がおすすめかも?」と思いました。
サウナ室を温めるのは、フィンランドのサウナヒーターメーカーで、世界シェア率No.1のHARVIA社の薪ストーブ。薪はサウナ小屋前方のベンチに置かれていて、自分で自由に足すことができます。
火の揺らめきや薪が燃えるパチパチという音が、最高に心を癒してくれます。
貸切サウナの醍醐味!自由にロウリュして蒸気を堪能しよう!
フィンランドサウナと言えば、温まったサウナストーンに水をかけて蒸気を発生させる「ロウリュ」がお楽しみ。
熱々のサウナストーンにバーチ(初夏の白樺の葉)の香りのアロマオイルを垂らしたアロマ水をかければ、直ちにジュワ〜っと蒸発し、蒸気が天井の丸みを伝わって柔らかな温かさになり降りてきて、全身を優しく包み込みます。
公共のサウナはロウリュ禁止のところが多いですが、貸切サウナでは好きなタイミングで好きなだけアロマ水をかけられるので、ノンストレス。
体感温度が一気に上がるので、様子を見ながら数回に分けてアロマ水をかけるのがおすすめです。ロウリュの蒸気に全身を包まれるのは至福の感覚なので、未体験の方にはぜひ一度体験していただきたいです。
「ゆっくりおしゃべり」にちょうど良い中温サウナ
公共施設のドライサウナは90℃前後のことが多いのですが、この日のバレルサウナは、薪を足してロウリュで温めても最高温度が50℃ほどでした。
最初は「熱いサウナに慣れているから物足りないかも…?」と思いましたが、ロウリュによって体感温度が上がるので、じっくりと温まれば十分に発汗することができました。
ゆっくりと汗をかいていくため、その合間に仲間との会話を楽しめるところも良いなぁと思いました。フィンランドでは相談事や会議などもサウナで行うことが多いそうですが、心身共にリラックスした状態で会話をすることで、本音が話しやすいのだろうなと思います。
冬場はシングル間違いなし!キンキンに冷えた水風呂でスッキリ!
水風呂も屋外にあるので、水温は外気の温度に影響を受けます。この日は秋の雨日だったため、一瞬入るのがやっとというくらいのキンキンの冷たさ。水風呂は冷たければ冷たいほど嬉しい私にとっては最高の環境でした。
温かいサウナと冷たい水風呂に入るのを繰り返すことで血行が促進され、身体がポカポカと温まってくるので、冷たく感じても思い切って水風呂に入ってみることを個人的にはおすすめします。
とは言え、慣れていない方や子ども連れの方などは、まずは水風呂をプール感覚で使える夏場に利用してみると良いと思います。
最高の「ととのい」へと誘う、絶景の中での外気浴タイム
水風呂を出た後は、よく身体を拭いて水分を摂ってから外気浴(休憩)をするのがおすすめ。好みの角度でリクライニング調整可能なインフィニティチェアに寄りかかり、目を閉じてリラックスすれば、そこはもう「ととのい(※)」の世界の入口です。
(※)サウナ、水風呂、外気浴を繰り返すことで訪れる快感、トランス状態のことをサウナーたちの間では「ととのう」と言います。
この日は雪化粧した南アルプスと手前の山々の紅葉が美しく、周囲の木々から枯れ葉が舞う様子も趣きがありました。心身共にスッキリとして感覚が研ぎ澄まされているので、大自然から受ける感動もより大きく感じられます。
天気がよければ夜は星空もきれいに見えるそうで、このサウナの魅力は1回の体験ではとても味わい尽くすことができません。
「まだ帰りたくない…」「このままここに住みたい…」と言いながら至福のサウナタイムを泣く泣く終了。プライベートでも訪れたいと本気で思う、素晴らしいサウナ体験でした。
そもそも、グリファームってどんな施設なの?
韮崎市穴山町の魅力をたっぷりと感じられる「農泊施設」
ヴィラグリファーム七里岩は、1棟貸の建物2棟からなる施設であり、周囲の山々の景色や宿の目の前に広がる農園で育った自家栽培の野菜を使った食事、特産のワインなど、この地域の魅力をたっぷりと堪能することができる「農泊施設」です。
「農泊施設」とは、農林水産省が推奨している農山村滞在型旅行を提供する場のことであり、農山村において日本ならではの伝統的な生活体験と農村地域の人々との交流を楽しみ、多様な宿泊手段により旅行者に地域の魅力を味わってもらうことを目的としています。
この農泊の考え方に基づき、グリファームでは穴山町を中心とした韮崎市の魅力をお客さんに届けています。
有名建築家が手がけた建物とホスピタリティ溢れる空間
グリファームの建物は、世界的建築家の河口佳介+K2-DESIGNが基本設計を行い、実施設計と施工を韮崎の設計事務所・アトリエいろは一級建築士事務所(通称イロハクラフト)が行いました。
意匠で張られた高い天井が深い軒と一続きになっている美しさ、無垢材・漆喰などの自然素材で仕上げられた空間、どの窓からも周囲の山々が眺められるつくりなど、細部にこだわりがたくさん詰まっています。
洗面&バスルームは海外のホテルのような洗練された雰囲気。外の景色を眺めながら浸かるジャグジーは、間違いなく最高だと思います。身体に優しいオーガニックのアメニティが揃えられているところにも、細かな気遣いが感じられます。
笛吹市の造園屋YARD WORKSによる植栽が見事な庭には、のんびり寛げるウッドデッキを完備。オプションの焚き火やバーベキューはもちろん、朝のコーヒーをここで楽しむのも良さそうです。
夏場は宿の目の前の農園で、色とりどりの野菜が栽培されています。収穫したての新鮮な野菜はバーベキューでも提供しており、今後は農業体験もオプションプランに加える予定とのことです。
芝生が敷かれた庭では、富士山を眺めながらブランコや芝滑りなどの遊びも体験できちゃいます。
このような魅力溢れる施設にサウナ体験まで加われば、記憶に残る素敵な時間を過ごせること間違いなし。リピーターが多いというのにも大きく頷けます。
この施設を通してオーナーの遠藤さんが伝えたいこと
グリファームオーナーの遠藤貴士さんは、韮崎市中田町出身。以前は東京の大手企業でサラリーマンをしていましたが、東日本大震災をきっかけに人々が集中している都会での生活にリスクを感じるようになったそうです。そして、リタイア後に暮らすための土地を韮崎で探しはじめ、七里岩上のこの土地に出会います。
そこで、遠藤さんは会社を早期退職して農泊をはじめることを決意。家族を連れて韮崎にUターンし、グリファームを設立しました。
遠藤さん「山梨県は台風の影響も少ないですし、七里岩の上のエリアは地盤がしっかりしていて地震に強く、水害の心配もほとんどありません。そして高台にあるので景色が開けていて、富士山がきれいに見えます。暮らしていく上でこんなに良い環境は他にないのではないでしょうか。
それに戦国時代後期には、武田勝頼公が『新府城』を築城し、府中の移転を試みた歴史もあり、歴史好きの私にはたまらない場所です。新規のお客さまには、そういった土地の歴史や自然環境の説明、近くの観光スポットやお店情報などを毎回お伝えするようにしています」
遠藤さんの丁寧な説明を受け、グリファームで1日ゆったりと過ごしたお客さんたちの多くは、『韮崎ってすごく良いところですね』『私も移住したいです』などと言ってくれるのだそうです。
遠藤さん「この辺りに住む人は『何もないところだよ』と言いますが、私は十分に観光エリアとして成り立つ場所だと思っています。パワースポットと呼ばれる場所もたくさんありますし、良い飲食店やワイナリー等も多いですよね。宿を通して、この土地の魅力をもっと多くの人に伝えていきたいです。サウナもそのきっかけの一つになってくれたら嬉しいです」
土木作業などを自ら行い、どんどん施設を進化させていく遠藤さんの姿を見ていると、数年前まで東京でスーツを着て働いていたとは想像も付きません。
そんな遠藤さんが想いを込めて運営するグリファームは、これからも韮崎の重要な情報発信の拠点として機能し、多くの人々に心地よい時間を届けていくのでしょう。
よりみちのかえりみち
これまで数々のサウナに入ってきましたが、グリファームのサウナ環境は特別なものでした。
今回は秋の日の昼の体験でしたが、季節や時間帯によってまた違った良さが感じられるのだろうなと想像したら、「絶対にまた来たい!」と強く思いました。
みなさんも家族や恋人、友人等と訪れて、サウナの中でゆっくりと語り合う時間を取ってみてはいかがでしょうか?
そして、遠藤さんのお話を聞いていると、「確かにこの辺りは素晴らしい場所なのかもしれない…」と感じました。同じまちの中でもこういった非日常的な空間に足を運ぶことで、新たに見つかるまちの魅力がまだまだあるのかもしれません。
「ヴィラグリファーム七里岩」の基本情報
所在地:山梨県韮崎市穴山町2509-1
電話番号:0551-30-9481
定員:「VILLA森と風」大人5名、「VILLA山と空」大人6名
サウナオプション金額:サウナ+水風呂¥19,800
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