にらレバライター、BEEK DESIGN スタッフとして編集・デザイン業に勤しむ。元地域おこし協力隊・青少年育成プラザMiacisスタッフ。1991年生まれ。韮崎高校出身。音楽・サウナ・お寿司が大好き。
2021年3月6日、今年で第2回の『ニラサキオープンファクトリー』が開催されました。
普段はなかなか入ることのできない市内の工場に潜入し見学やものづくり体験ができるこのイベントは、第1回から大好評であり、「また開催して欲しい」という声が多く寄せられていました。
そんな声に応えようと第2回の開催を2020年の夏に予定していましたが、新型コロナウイルスの流行により延期せざるを得ず、実行委員会で何度も開催の是非や感染症対策の方法を話し合い、ようやく3月に開催されました。
どの企業も事業内容や製品のことを分かりやすく伝えるための工夫と見学を楽しんでもらうための心遣いがいっぱいで、参加された皆さんは大変満足している様子でした。
今回の記事では、ニラサキオープンファクトリー実行委員会の一員である窪田が、このイベントの趣旨や当日回った4社の工場見学の様子をご紹介したいと思います。
8社が工場を公開、約160名が参加!
ニラサキオープンファクトリーは、「韮崎がものづくりのまちだということをもっと多くの人に知ってもらいたい」という想いで、韮崎市商工会を中心とした有志の実行委員メンバーにより企画がスタートしたイベントです。
第一回が開催されたのは2019年7月。2日間にわたって開催され、22社の企業と2校の学校の協力を得て、約200名の方に工場巡りを楽しんでいただきました。
今年は、実施は1日のみ、完全予約制で対象は市内在住または市内の学校に通う学生に限定するなど、新型コロナウイルスの感染拡大防止に配慮し規模を縮小しての開催となりました。
直前まで本当に開催できるのかわからないような厳しい状況下ではありましたが、ありがたいことに8社が受け入れを承諾してくださり、延べ166名の方に韮崎のものづくりに触れていただくことができました。
オープンファクトリー当日の様子
イベント当日、私は撮影係として山梨日日新聞 新聞印刷工場、キンキ製工㈱、㈱茂呂製作所、本坊酒造㈱マルス穂坂ワイナリーの4社を回りました。
8社全ての様子をご紹介できず残念ですが、私が見学した企業の様子をご紹介します。
山梨日日新聞 新聞印刷工場
山梨日日新聞の新聞印刷工場では、始めに会議室で新聞ができるまでの流れや印刷の方法、災害があって用紙の運搬がストップした場合も途切れることなく新聞を発行し続けるための仕組みなどについての説明を受けた後に、実際に新聞が大型の機械によって印刷される様子を見学しました。
刷り上がった新聞がすごいスピードで頭上のレールに流れていく様子は圧巻!
用紙がなくなりそうになると自動で動いてロール紙を運んでくるロボットもあり、子どもも大人も釘付けとなっていました。
来年で創刊150年を迎える山日新聞は、日本で二番目に歴史のある新聞社なのだそう。
上ノ山という身近なところで刷られた新聞が毎日欠かすことなく手元に届いていると思うと、新聞に触れるのが少し嬉しくなるような気がしました。
キンキ製工㈱
自動機械や工場設備の設計・製作・施工の全てを一貫して行っているキンキ製工では、鉄を刃物で切断したり、バーナーの熱の力で溶断したりする体験をしました。また、レーザーでカットされた『鬼滅の刃』のキャラクターの形をした鉄板に「穴空け」や「溶接の追加工」をして、機械製作のプロセスを体験しました。
光、音、振動、熱、臭いを感じられる体験であり、日頃から触れている硬い鉄が変化していく様子に、子どもたちは釘付けになっていました。
少し意外でしたが、この日に体験にきた子のほとんどが女の子でした。市内の韮崎工業高校では、溶接部をはじめ女子生徒も活躍していますので、この“ものづくり”の原体験をきっかけに、ものづくりに興味を持つ子が増えたらいいなと思いました。
㈱茂呂製作所
金属部品の設計製造から機械修理・メンテナンスまで、さまざまな事業を手掛ける茂呂製作所では、工場内にある大型の機械の動く様子を見学しながら、機械を使うことによって効率的にできる作業の内容を教えてもらいました。
そもそも機械を思い通りに動かすためには、機械にインプットさせるシステムをつくることが必要であり、そのような普段なかなか聞くことのできない専門的な話を社員の方々がいきいきと楽しそうに説明してくれたので、子どもも大人も興味津々になって話に耳を傾けていました。
また、木板に自分の名前を印字したり、社員食堂では、茂呂製作所で修理・メンテナンスをしている製麺機でつくられた麺を使ったアジアン麺がふるまわれたりと、至れり尽くせりの社内ツアーでした。
本坊酒造㈱マルス穂坂ワイナリー
マルス穂坂ワイナリーでは、ワイン製造棟の見学をしながら、穂坂という地域で獲れるワイン用ぶどうの特色や、土地の高低差を利用したワインづくりの工夫、赤白それぞれのワインの製造過程など、マルス穂坂ワイナリーのワインづくりについて一連の説明を受けました。
晴れの日には富士山と韮崎のまちが見渡せるビジター棟の屋上に上がってリフレッシュした後は、参加者全員にワインやぶどうジュースが無料でサービスされました。製造過程を知った上で飲むワインはさらに味わい深いようで、参加者のみなさんは大変満足している様子でした。
「近くにこんなに良いところがあったなんて知らなかった」という声も多く聞こえました。こちらはいつでも見学やショップでの買い物をすることができるので、知ってもらうきっかけをつくることができてよかったなと思いました。
ガイドブック掲載協力も
第2回オープンファクトリーは、コロナ対策を考慮し、工場に人を招くことはできないという企業が多かったのですが、工場見学を開催できない企業についても参加者のみなさんにぜひ知って欲しいと思い、ガイドブックへの掲載のみの協力も受け付けました。
㈱菊島と㈱タンガロイ製品事業本部の2つの事業所が協力してくださり、合わせて10社の情報をガイドブックを通してまちの方に届けることができました。
今年は社員の方へのインタビュー欄も追加し、実際に働いている人が感じていることや、その仕事をするために必要なことなども教えていただきました。
このガイドブックは市内の図書館や学校の図書館に置いてもらう予定なので、イベントに参加できなかった方もぜひご覧ください。
「僕らのまちは想像以上。」
当日参加者に書いていただいたアンケートには、
「コロナでイベントが減っている中で開催してくれたことがまず嬉しい」
「韮崎に技術のある会社があることが知れて頼もしいと思った。ここでつくられたものがいろいろな場所で活躍していると思うと嬉しい」
「子どもたちの将来の選択肢の幅を広げることができたと思う」
など、満足した様子が感じられるコメントが多く寄せられました。
企業側からも、
「自分たちの仕事が社会に役立っていることを実感できた」
「普段機械の音しかしない工場から子どもたちのたのしそうな声が聞こえてきてうれしかった」
など、ありがたい感想をいただきました。
見学や体験の内容はすべて各企業にお任せで決めていただきました。その中で満足度の高いイベントとなったのは、各企業が日々当たり前のように行っていることやつくっているものが胸を張って誇れるものであり、それをわかりやすく伝えるためのさまざまな工夫を凝らしてくれたからだと思います。
このまちには、普段見えていないだけで本当に多くのものづくり企業があります。
土地の広さ、交通の便の良さ、景観の良さ、他社との協力体制の築きやすさなどの理由から、この地に工場を構えている企業がいくつもあるのです。
日頃は工場を外からしか見ることができないので、だれがどんなものをつくっているのか、なかなか知ることができません。
今回のオープンファクトリーのような機会を通して、工場や製品について知ってもらったり、企業の方とのコミュニケーションを通じて社員の方を身近に感じてもらったりすることで、地域の企業についての理解が深まり、応援したいという気持ちが高まったのではないかと思います。
ニラサキオープンファクトリーのテーマは、「ぼくらのまちは、想像以上。」
このイベントを通して、少しでもそう感じていただけたら嬉しいです。
このオープンファクトリーは今後も更にバージョンアップさせながら続けていく予定なので、次回もぜひ楽しみにしていてください。
ニラサキオープンファクトリー2020
【主催】韮崎市商工会、オープンファクトリー実行委員会、韮崎市商工会製造業部会
【共催】韮崎市