アメリカヤ並びの老舗店!昭和45年から続く手づくりおにぎり屋さん|味の店ほさか

「住んでいるまちに“あったらうれしいもの”って何だろう?」

ここ数年で次々とお店が増えている韮崎のまちに住んでいると、友人とそんな会話になることがある。

まちの人と裸の付き合いができる銭湯、夜遅くまで営業する古本屋、少しマイナーな作品を上映する小さな映画館...「あったらいいな」をひとつひとつ挙げていくと、妄想トークは止まらない。

そうやって新しいお店を考えることもワクワクするけれど、“このまちにすでにあるもの”も見落としてはいけない。

その中の一つ、駅前商店街でおにぎりを販売する「味の店ほさか」は、私が理想のまちを思い描くときに、必ずあってほしいと思うお店だ。

今回のよりみちでは、私にとっての“韮崎の母の味”である、『味の店ほさか』について紹介しようと思う。

愛情たっぷり!夫婦で握るおにぎりがおいしい

昭和45年から続く『味の店ほさか』は、2代目店主の保坂守さんとみな子さん夫妻が営んでいる、手づくりおにぎりのお店。
朝4時(!)に仕事を開始し、1日約170個(休日はそれ以上)のおにぎりを2人でせっせとにぎり、朝7時からお店を開けている

清哲町の武川米を使ったおにぎりは、保存料を一切使っていないので、安心して食べることができる。そのやさしい味を求めて、子どもを連れて買いに来るお母さんや、毎朝出勤前に立ち寄る常連さんもいるそう。

『なくなり次第終了』なので、早い日は午前中で「売り切れました」という看板が出ている。
同じ曜日でも週ごとムラがあるので「この日ならたくさんあります」と言い切るのはむずかしいそうだが、最近は土曜日にお客さんが多い傾向にあるとのこと。

確実に購入したい場合は、土曜日に限らず早い時間帯に訪れるのがおすすめだ。

バリエーション豊富な具材がポイント

おにぎりが並んでいる写真

おにぎりの具は、梅、昆布、鮭、おかか、富士山(ツナマヨ)、葉唐きゅうり、味付けの定番7種類。そこに、梅シバと生姜のどちらかが日替わりで並んでいる。

どれも110円というリーズナブルな価格で、コロンとした食べやすいサイズなところも魅力の一つ。女性でもお腹が空いていたら、3個くらい余裕でパクパクと食べられると思う。(私基準)

奥さんのみな子さんにこだわりを尋ねてみると、少し考えてから「そうねぇ...特にこだわりがなくて...ごめんなさいね(笑)」と困ったように笑顔を返してくれた。そんな「ふつうのおにぎり」こそ、いまの時代に買おうと思っても、なかなか見つかるものではない。

“お母さんが家でにぎってくれたおにぎり”のような、素朴な味わいこそが、このお店の良さなのだと私は思っている。

おにぎりの他にも、いなりや太巻寿司、ペットボトルのお茶類とカップ味噌汁なども売っている。私は、このいなりも大好物で、おにぎりと合わせて購入することが多い。

大袈裟かもしれないけれど、ほさかのおにぎりや寿司類とお茶の組み合わせを味わうと、「ああ、日本人でよかった」とついつい思ってしまうのだ。

私のおすすめベスト3

どれを食べてもおいしくて選ぶのはとてもむずかしいけれど、ここで私のおすすめベスト3を紹介したいと思う。どれも魅力的で迷って決められないときの参考になれば嬉しい。

第3位:『おかか』

おかかおにぎり

『おかかおにぎり』は、私が最も“なつかしさ”を感じるおにぎりだ。食材の違いが出にくいからか、母がにぎってくれたおにぎりと似た味がして安心する。そして、私のおにぎりの原点はこの味にあるような気さえもする。

ほさかのおにぎりに出会うまでは、コンビニに並ぶバラエティに富んだおにぎりにすっかり慣れてしまっていたけれど、このおにぎりの味が再び「おかか」のおいしさに気付かせてくれた。

第2位:『生姜』

しょうがおにぎり

梅シバと日替わりで店頭に現れる『生姜おにぎり』は、生姜のカリッとした食感と爽やかな香りがくせになる“大人のおにぎり”という感じ。
ここ数年で登場したメニューだが、すでに大人気。日替わりということもあって他のおにぎりに比べてレアな印象があるのも◎

何を隠そう、店頭に並んでいるのを見つけた時、私のテンションが最も上がるのは、このおにぎりだ。

第1位:『富士山(シーチキン)』

シーチキンおにぎり

『富士山(シーチキン)おにぎり』は、マヨネーズが少なめで、酸っぱさの少ない、やさしい味わいが特徴

富士山の形をした海苔がかわいらしいこのおにぎりは、今から15年以上前に、地元の小学生が総合学習の中で考えたアイデアを実現したもの。

みな子さんは、「潮時がわからなくてねぇ」と冗談めかして言うが、せっかく子どもたちが考えたメニューを残してあげたいという優しさがなければ、他より手間のかかるこの海苔の形を長年続けることはできないはずだ。

その小学生たちは現在30歳くらいになっていて、ほとんどが県外に出ているそうだが、その子たちの親御さんが今でも買いにくるのだとか。
そんな地元ならではのエピソードがたっぷり詰まったおにぎりは、私のお腹も心も同時に満たしてくれる。

ちなみに、お店の一番人気はさまざまな具材が入っている炊き込みご飯をにぎった「味付け」なんだとか。結局のところ、ほさかのおにぎりはどの味を選んでもおいしいのだ。

この記事で目にしたおすすめ情報は頭の片隅に置く程度にして、自身の好みと、その日の気分で決めてもらうのが、ベストチョイスなのかもしれない。

さまざまなシーンに寄り添うおにぎり

(ある日の昼食)

アメリカヤに通勤している私は、朝ごはんや昼ごはんにおにぎりを購入することが多い。休みの日におでかけするときにも、ほさかで朝ご飯をゲットして、目的地に向かう道中で食べたりする。

また、持ち寄りの飲み会やイベントのときに持っていくと必ず喜ばれるので、まとめて購入しておみやげにすることもある。

ほどよい塩加減で飽きることなく、気軽に食べることができるほさかのおにぎりは、さまざまなシーンで大活躍すること間違いなし。近くを通りかかった際は、ぜひお店に寄って、このかわいらしい佇まいのおにぎりを日常に迎えてみてほしい。

よりみちのかえりみち

商店街の写真

私は韮崎に住むようになって、何回ここでおにぎりを買ったのかわからないくらいこの店の常連だ。
仕事の忙しいときは特に、気軽に買ってパクッと片手で食べられる「ほさかのおにぎり」に何度も助けられてきた。

今回の取材で、いつもおいしいおにぎりを食べることができるのは、早朝4時から保坂さん夫妻が一生懸命準備をしてくれているおかげなのだということを実感した。

冬場にお店のシャッターを開けるのは、まち全体が寝静まるまだ星が見えるような時間。夫婦で吐く息も白い寒い中、おにぎりを握っている姿を想像すると、より感謝の気持ちが芽生えてくる。

みな子さんは「年配のお客さんが多いけど、アメリカヤが復活してからは、若いお客さんも増えた」と教えてくれた。

これからもまちが発展して、ほさかのおにぎりの魅力が老若男女を問わず、より多くの人に伝わることを願っている

『味の店ほさか』の基本情報

  • 所在地:山梨県韮崎市中央町10-12
  • 営業時間:7時〜なくなり次第終了(予約可)
  • 定休日:月曜日
  • 電話:0551-22-3404