2022年4月3日、韮崎中央商店街にあるアメリカヤの向かいのビルの2階に、『TAP8』というクラフトビールと自家製燻製料理のお店がOPENした。
店主が全国各地から厳選する8種類の樽生クラフトビールは、コアなクラフトビールファンからも「韮崎でこのラインナップが飲めるとは…」と驚かれるほどバラエティ豊富。
燻製料理は言わずもがな…クラフトビールとの相性も抜群で、ランチ限定のメニューも大人気だ。すでに市外からも多くの人が訪れる人気店となっている。
今回のよりみちでは、さっそくTAP8のランチもディナーも両方堪能してきた私が感じた、このお店の魅力をたっぷりお届けしたいと思う。
ぜひ、店主が語るクラフトビールの魅力やまちづくりの考え方にも注目して読んでほしい。
目次
飲んだビールは500種類以上!クラフトビールマニアの店主のお店
TAP8を営んでいるのは、長野県出身の柳澤和也さん。以前は東京の有名店「クラフトビアマーケット」の虎ノ門店で店長を務めていた柳澤さんは、これまでになんと500種類以上のクラフトビールを飲んできたという生粋のクラフトビールマニア。
「奥深いクラフトビールの魅力をより多くの人に伝えていきたい」という想いから独立し、パートナーのめぐみさんの地元である山梨でお店をスタートした。
DIY仕上げのセンスあふれる空間でゆったりと
柳澤さん自身が DIYで仕上げたという店内は、入った瞬間「わぁ…!」と思わず歓声を漏らしてしまうほどお洒落。深みのある青いペンキで塗られた壁や、いくつもまとめて吊るされているオレンジ色の照明が、落ち着いた大人の雰囲気を醸し出している。
女性1人でも安心!ふらりと一杯飲めるカウンター
立派な一枚板でできたカウンター席もあるので、「電車待ちの間に軽く一杯」という使い方もできるのが嬉しいところ。カフェのようなお洒落な空間なので、女性1人でも気軽に立ち寄ることが可能だ。
常時8タップ!厳選した国産クラフトビールがずらり
TAP8では、柳澤さんが全国から都度厳選する8種類の「樽生クラフトビール」を味わうことができる。
日本ビールの元祖ピルスナー、モルトのコクやホップの香りがふくよかに感じられるペールエール、ホップをたくさん使ったIPA、小麦を使ったヴァイツェン、フルーツの香りや風味のするフルーツエール等、さまざまなスタイルのビールが揃っている。
「クラフトビール」と聞いて海外産をイメージする人も多いかもしれないが、TAP8で取り扱っているビールは国産のものばかり。
柳澤さん曰く、日本にも大小さまざま“300近く”のブルワリーがあるそうで、「日本でもおいしいビールがつくられていることを伝えていきたい」という想いから全国各地のビールをセレクトしているそうだ。
さまざまなスタイルを味わえる!「飲み比べセット」がおすすめ
クラフトビールにあまり詳しくない私は、メニューの中から3種類のビールを選べる「飲み比べセット」を注文し、柳澤さんおすすめのフルーツエール、ピルスナー、IPAの3つを飲み比べしてみた。(上のリストの1,4,5番)
中でも印象的だったのは、キウイの酸味が感じられるフルーツエール(1番)。すっきりしていてすごく飲みやすく、爽やかな後味でびっくりした。これならビールの苦みがちょっと…という人でもごくごく飲めてしまうかもしれない。
私のように「まずは、色々なスタイルを試してみたい」という人、はたまた「どれもおいしそうで一つに絞れないよ…」という人には、まずは飲み比べセットがおすすめだ。
店主が語る、クラフトビールの「おもしろさ!」
メニュー表に書かれた説明を読みながら、実際にクラフトビールを味わうと、徐々に興味が湧いてくる。柳澤さんはクラフトビールのどんなところに魅了されてお店を始めたのだろう。気になって聞いてみると、クラフトビールの「2つ」の魅力を語ってくれた。
クラフトビールの魅力1:好みのビールが見つかる味の幅広さ
柳澤さん「クラフトビールはスタイルやブルワリーごとに、全く違った味が楽しめるところがおもしろいと思います。サワーエールのようにフルーティなものもあるので、ビールが苦手という人もおいしいと思えるものに出会える可能性が高いところがクラフトビールの魅力の一つです。
妻は元々ビールが苦手でしたが、バナナのような香り、りんごのような風味のするヴァイツェンというビールを少しずつ飲むようになり、今ではすっかりビールが大好きになりました」
TAP8では、一通りのスタイルを揃えるため「8タップ」のサーバーを装備し、樽が空くごとに違うブルワリーのビール樽をセッティングしている。それらも、お客さんにさまざまなビールを飲み比べて楽しんでもらえるようにするためなのだそう。
ビールが苦手な人も普段何気なくビールを飲んでいる人も、ここで色々な味のビールに出会うことで、新たな世界への扉が開けるかもしれない…。
クラフトビールの魅力2:製造に込められたストーリー
柳澤さん「ブルワリーごとの個性やストーリーが感じられるところもクラフトビールの醍醐味です。「地域にある資源を活用しよう」「地域を盛り上げていこう」という想いを持っているブルワリーも多く、はねだしの果物を使っていたり、出来上がるまでのストーリーを大切にしているのが感じられます。そういったところが大手企業のビールとは違うおもしろさの一つだと思います」
柳澤さんに尋ねれば、どこでどのような想いでつくられているビールなのか教えてもらえる。背景を知った上で飲むビールはより味わい深く、愛着も湧きやすい。
想いの詰まったクラフトビールを飲むことでブルワリーや産地に貢献することができ、さらに韮崎というまちの活性化にも繋がっていく。そうした地域を越えた好循環が生まれていくのは、すごく素敵なことではないだろうか。
ビールとの相性抜群!スモーキーな香りが堪らない自家製燻製料理
TAP8ではなんと、クラフトビールにベストマッチな自家製燻製料理も味わうことができる。入り口付近に設置された燻製機からはスモーキーでおいしそうな香りが漂っており、お店に入る前からよだれがこぼれそうになる。
満足度大!ライス大盛り無料のランチ限定メニュー
11時30分からスタートするランチのメニューは、どのメニューもサラダ付きでライスの大盛りが無料。しっかりとお腹を満たすことができるボリューム感が嬉しい。
10種類のスパイスとりんご、香味野菜、燻製鶏肉の旨味たっぷりの『バタースモークチキンカレー』。燻製された鶏肉が、ルーや野菜と一緒にホロホロになるまで煮込まれている一皿だ。
口に入れた瞬間にスモーキーな香りが漂うが、味は燻製感が前面に出るわけではなく、素材の味もしっかり感じられてすごくバランスが良い。
ライスは白米とターメリックライスから好きな方を選ぶことができる。付け合わせの野菜や燻製卵もカレーの味に合っていて、すごくおいしかった。(昼からビールを飲んでいることは秘密…笑)
友人が頼んでいた『スモークチキングリルプレート』は、燻製したもも肉をじっくり焼き上げた一品。皮はパリッとお肉はジューシーで「クセになること間違いなし!」とのこと。
ソースはハニーマスタードソース、ピクルスソースの2種類から選ぶことができるのだが、この日に頼んでいた玉ねぎ・みょうが・大葉を使ったピクルスソースがすごくおいしそうだった。
他にも、『罪なチーズキーマカレー』『ピリッとスパイシー 彩りタコライス』など気になるメニューはまだまだたくさん。
さらに、ソフトドリンクにも、柳澤さんの並々ならぬこだわりが感じられる。コーヒーは柳澤さんの出身地である長野市の『ヤマとカワ珈琲店』の豆を使用。他にも『ちょっと大人のクラフトコーラ』や『ラムオレ』など、普段なかなか味わうことができないメニューが揃っているので、何度も足を運んでいろいろな組み合わせを試してみたくなる。
スナック菓子も燻製?みんなで味わいたいディナーメニュー
18時からスタートするディナータイムに提供されるのは、お酒を飲みながらみんなで分け合うのに適したおつまみメニュー。
私は、何気なくお通しのスナック菓子を食べていたのだが、それさえも燻製されていることに途中で気付いて感動。「だからこんなにおいしいのか!」と友人と話しながら、パクパクと食べまくってしまった。
ポテトサラダやゆで卵などの定番メニューも、燻製してあることで一味違う味わいを楽しめる。燻製と相性抜群な、いぶりがっこチーズやマヨネーズソースのかかったウフマヨも絶品なので、ぜひ味わってみてもらいたい。
この日食べた中で個人的に一番おすすめしたいのは、『スモークチキングリル』。
よく注文が入る定番メニューとのことで、燻製の香りや風味をダイレクトに楽しめる一品となっている。塩、レモン、ピクルス、タルタルソースをお好みで付けながら食べることができて、色々な味を楽しめるのも嬉しいポイント。
同じく人気メニューなのだという『鯖のアヒージョ』は、油っ気をクラフトビールで流し込むという最高の流れを楽しめるメニュー。
鯖からは燻製の風味が感じられ、全体的にしっかりと塩が効いている。さまざまな旨味の詰まった油に浸して食べる付け合わせのパンは、おいしくていくらでも食べられる気がする。
柳澤さんは料理について、「おいしさはもちろん、おもしろさも感じてもらえたら嬉しい」と話してくれた。個性的な料理というわけではなく、馴染みのある料理に燻製という一手間を加えることで、味わったことのない感覚を楽しんでもらえたらと考えているそうだ。
新たなものを生み出し、人が集まる場所になることを目指して
実は、柳澤さんのパートナーである、めぐみさんは、アメリカヤをリノベーションしたイロハクラフトの千葉さんの妹さん。柳澤さんは、韮崎でお店をオープンすることを決めた時に、義兄である千葉さんに相談をしたときのエピソードを話してくれた。
柳澤さん「韮崎でクラフトビールのお店を始めようと考えた時に、中には「こんなに人が少ないところでやっていくのは無理だと思うよ」「8タップも空けるなら甲府にした方がいいんじゃない?」等の意見をくださる方もいました。
けんさん(=千葉さん)に相談すると、「大丈夫だよ。アメリカヤを改装する前も、『そんなことしたって誰も来ないんじゃないか』『借金してまでする必要はないんじゃないか』という意見もあったけど、そのときに諦めなかったおかげで今があるから。本人が楽しみながらやっていれば自然と応援してくれる人も増えていくし、そういう空気に人は集まってくるから、自分がおもしろそうだなと思うことをやった方がいいよ」と言ってくれたんです。
それを受けて、人がいないのならば、人を呼べるように工夫してがんばっていけばいいんだと思えるようになりました」
樽のビールは賞味期限が短く、時間が経つとダメになってしまうというリスクがある。また、燻製料理は食材を調理前に燻製するという一手間が必要となる。しかし、柳澤さんはお店の希少価値を上げるために、缶や瓶ではなく8種類の生ビールと燻製料理を提供することを選び、これまでに韮崎のまちになかった新たなお店を誕生させた
柳澤さん「お店を始めてみたら、「韮崎でクラフトビールが飲めるようになって嬉しい」と言ってくださる方が大勢いて、韮崎にも需要はあったんだなと思いました。料理も「おいしいおいしい」と言いながら食べてもらえていて、本当に嬉しいです。噂を聞きつけてわざわざ甲府や北杜から来てくださる方も多く、今は「やってみてよかったな」と心から感じています。まだスタート地点に立ったばかりなので、これからがんばっていきたいです」
よりみちのかえりみち
柳澤さんの話を聞いて、全国のクラフトビールをもっと飲んでみたくなったし、まだまだ知らない世界にたくさん出会えそうな予感がして嬉しくなった。
韮崎は居酒屋が多いけれど、女性一人でふらりと入れるようなお店は少ないと感じていたので、TAP8ができたことは個人的にすごく嬉しい。しかも駅近で、クラフトビールと燻製料理の組み合わせが楽しめるお店ときたら、最高すぎる。
韮崎のまちは「人がいないこと」を理由に夢を諦めなかった人たちのおかげもあって、少しずつおもしろい方向に進んでいるように感じられる。
TAP8もまた、このお店を訪れた人が韮崎の魅力に気づいたり、友人を連れてきたり、移住を決めたり、お店を始めたり…新しい流れを作っていく場所になるのかもしれない。
そんな連鎖が起こってほしいし、これから先も続いていくことを願って…乾杯!
「TAP8」の基本情報
- 所在地:韮崎市中央町1-14 2F
- 営業時間:
ランチ 平日11時30分〜14時(土・祝〜15時)、日曜11時30分〜18時(夜はClose)
ディナー 18時〜23時(Food L.O 22時/Drink L.O 22時30分) - 定休日:月曜日
- Instagram:@tap.eight_craftbeer_smoke