『café まるげ』は、築100年以上の古民家を改装した和モダンな店内で絶品の創作イタリアンやフレンチ、種類が豊富なお酒をカジュアルに楽しめると評判のお店。
古民家から漏れるオレンジ色の光が街灯の少ない夜道に浮かぶ様子は、「これぞ隠れ家」という特別な雰囲気を感じさせる。常連客たちからも、「人に教えたくない」「あまり有名にならないでほしい」と囁かれるほど、多くの人から「とっておきの場所」として愛されている名店だ。
私も常連さんたちと同じくひっそりと愛していたい気持ちはあるものの、やっぱり多くの人に伝えたくなってしまう…
今回のよりみちでは、そんなまるげの魅力をたっぷりお届けしたいと思う。(常連さんたちお許しください! 笑)
目次
築100年以上!趣深い古民家で洋食を提供するカフェ
オープンして16年目を迎えた『まるげ』は、店主の伊藤仁さんが30歳の頃にはじめたお店で、「軽食を気軽に楽しんでもらいたい」という想いから、店主自ら「カフェ」と謳っている。
営業は夜のみ。アルコール類も豊富に揃っているが、食事やお茶だけの利用も歓迎しているため、ふらりと気軽に立ち寄れるところも人気のひとつ。
穴山町で生まれ育った伊藤さんは、金沢市にある香林坊や片町といった古い蔵がお洒落に活用されている街並みに憧れ、「いつか立派な梁がある古い建物で洋食を出したい」と思っていた。
地元でお店をはじめようと物件を探し回っていたときに偶然、子どもの頃からよく知っていた近所のおばあちゃんの家が空き家になっていることを知ったのだという。「絶対にココがいい!」迷うことなくこの古民家を借り自分で改装をしてお店をはじめた。
店主との会話を堪能できるカウンター席
背丈の低いドアをくぐると、手前がカウンター席、奥がテーブル席という造り。カウンター席はいつ訪れても、伊藤さんと話しにくる常連客たちで賑わっている。
伊藤さんは声が低く一見こわもてな印象だが、実際はとても気さくで話しやすい方。人と話をすることが好きでこの仕事を選んだそうなので、ぜひ気軽に話しかけてみてほしい。
和と洋が融合した居心地の良いテーブル席
グループで訪れた時には奥のテーブル席へ案内される。障子やタンスなど和風の印象が強い空間に、洋風のデザイナーズ家具が見事に調和している。新たな世界に来たような不思議な雰囲気も感じられる部屋なのだが、なんだかとても居心地がいい。
個性豊かな本棚で待ち時間も楽しく
窓際に立ち並ぶ竹が印象的な廊下には、本棚と本を読むための椅子が置いてある。「自分に新たなエッセンスが欲しくなった時には現代美術を観に行く」という伊藤さんが、これまで集めた美術関連の本、お客さんからいただいたという小説などが置かれている。料理が完成するまでの間、パラパラと眺めながら過ごすこともおすすめ。
創作イタリアン&フレンチに舌鼓!まるげの人気メニューをご紹介
まるげで提供しているのは創作イタリアンとフレンチ。ピザやリゾットなどのメインからアラカルトまで、幅広いメニューが用意されている。伊藤さんは、かつて清里にあったワインを豊富に取り揃えたcafe BARと、ホテルハットウォールデンの2カ所で修行した経験があり、料理に関してもお酒に関してもプロフェッショナルだ。
オール手描きのメニュー表をパラパラとめくると…丁寧に描かれたものから、ゆるすぎるものまで(笑)。画力にバラつきがあって、ついつい笑顔になってしまう。「写真だと味気ないじゃないですか」という伊藤さんの思惑通り、このメニュー表のおかげでお客さんたちは会話が生まれたり、緊張がほぐれたりしていると思う。
※美大生に絵について怒られたという爆笑エピソードもあるんだとか…(笑)。
一押しは地粉を使ったピザ!もちもち食感がクセになる
お店の一押しメニューは、地粉が混ぜ込まれた多種多様なオリジナルピザ。
中でも『マルゲリータ』は、店名の「まるげ」の由来でもある看板メニュー。香ばしく焼き上げられた生地は、カリカリともちもちの生地を楽しめる一品で、トマトの酸味、チーズのコク、バジルの豊かな香りが一口ごとに広がる。
写真右の『サーモンクリーム』は、5種類あるクリームソースピザのひとつ。生地の上にはモッツァレラチーズがたっぷり載せられていて、チーズのコクと芳醇な香りと旨味のスモークサーモンがベストマッチ!
地元の野菜をたっぷり味わえる『かりかりきのこのサラダ』
こちらは、カリッと揚がったきのこがたっぷり乗せられた『かりかりきのこのサラダ』。きのこの食感が良いアクセントとなり、程よく酸味の効いた濃いめのドレッシングが、野菜の味をより引き立てる。
野菜が豊富に採れる季節には、穴山町の犬飼農enの有機野菜を料理が使われている。サラダを頼めば地元の恵みをたっぷりと味わうことができるのも嬉しいポイント。
燻製の芳醇な香りが堪らない『まぐろの瞬間燻製カルパッチョ』
『まぐろの瞬間燻製カルパッチョ』は、金色の器に盛り付けられた見た目も楽しめる一品。表面を炙り中はレアの状態で提供されるまぐろは、程よい塩味、燻製の芳醇な香りが口いっぱいに広がり、その味を堪能できる。
ホロホロ具合に感動!『鴨のコンフィ』
『鴨のコンフィ』は、低温の油でじっくりお肉を煮込んだフランス料理。あえて低温で時間をかけて調理されたお肉は箸でほぐせるほど、ホロホロで柔らかな仕上がり。鴨肉特有のまろやかな味わい、噛むほどに広がる赤身の旨味が堪らない。
みんな大満足!バラエティ豊かなドリンク類
メニュー表に「山梨流の飲み方で是非」というメッセージが添えられている勝沼にある錦城葡萄酒の『錦城ワイン』。注文するとマスカットベリーAを使用した赤ワインが、グラスではなく湯呑みで提供される。県外から友人が来ているときにこれを注文すれば、盛り上がること間違いなし。
そのほかにも、さまざまな県産ワインやビール、ウイスキーに日本酒など、一通りのアルコール類が揃っている。さらに、ノンアルコールカクテルも充実しているので、運転手の人も大満足できるぞ。
「良いことを続けていたらお客さんは来てくれる」
伊藤さんにお客さんの年齢層を聞いてみると、「20代〜60代くらいまで幅広い年齢層が来ますね。というより、16年もお店をやってれば、45歳だった人がもう60歳を超えるわけで、そりゃ年齢層も広くなります(笑)」と答えてくれた。
お店がオープンした16年前は、この辺りに古民家カフェは一軒もなかった。当時、古民家を活用して新しいお店をするという文化が山梨には無く、場所も駅から離れていたため、友人たちからは「こんなところで商売をしたって儲からないぞ」と何度も言われたそうだが、伊藤さんの決意は変わらなかった。
「不安もありましたが、良いことを続けていればお客さんは来てくれるはずなので、自分の思うようにやってみようと思ったんです」
伊藤さんのまっすぐな想いでスタートしたまるげは、16年の間に地域になくてはならないお店となった。きっと、これからもまるげでは日々さまざまな物語が刻まれていくのだろう。
よりみちのかえりみち
この辺りに住む多くの人にとってそうであるように、私にとってもまるげは大切な場所だ。ここ数年で韮崎駅前にもおしゃれなお店が多く立ち並ぶようになった。以前は「韮崎の夜のお洒落スポット」というと、まるげが真っ先に候補にあがり、よく友人たちとご飯を食べに訪れては、「こんなに良いお店が韮崎にあるなんてすごいよね」と話していた。
駅前を中心に新たなお店が増え、韮崎に立ち寄る人が少しずつ増えてきている今だからこそ、まるげの魅力もより多くの人に伝わるといいなと心から思う。
優しい灯りを放つ「げ」とだけ書かれた看板を過ぎ、すこし背の低い入口をくぐれば、ぶっきらぼうな伊藤さんが低い声で「いらっしゃいませ」と温かく歓迎してくれるだろう。
「caféまるげ」の基本情報
- 所在地 :山梨県韮崎市穴山町3391
- 営業時間:18時〜0時
- 定休日 :木曜日
- 電話番号:0551-25-2428