はねだしが大人気!山梨県民おすすめ「硬めの桃」を堪能しよう|大草共選場

梅雨が明け、暑い夏が始まった。

外気は暑いけれど室内はクーラーで冷える。
そんな温度差により夏バテ気味になりやすいこの時期には、冷たくてジューシーな果物を思いっきり頬張りたくなるのは、きっと私だけではないはずだ。

そんなときに私が足を運ぶのは、“はねだしの桃”をまとめて安く購入することができる、共選場の直売所だ。

“はねだしの桃”とは、見た目に少し傷があるなどの理由で市場には出荷できない桃のこと。味は贈呈用に引けを取らないその日の朝に収穫したばかりの桃は、瑞々しくてとってもおいしい。

この“はねだしの桃”を求めて、韮崎の共選場には毎年多くの人が県内外から訪れる。
以前は『新府共選場』を紹介したけれど、韮崎にはもう一つ、『大草共選場』という穴場スポットがあるので、今回はそちらを紹介しようと思う。

新鮮な桃がお手頃価格で入手できる直売所

桃の直売所

毎年このシーズンになるとオープンする大草共選場の直売所では、贈答用の桃の販売・配送手配、はねだしの桃の販売が行われている。(2021年の営業カレンダーはこちら)

そのため、おいしい桃をいち早く食べたいと「大草の桃ファン」たちが、こぞって集まるのだ。中でも、ひときわ人気なのは“はねだしの桃”たち。
「特秀」と呼ばれる一番等級の高い桃が5kgで5,500円なのに対し、はねだしは5kgで1,800円という価格で販売されていることに、私も初めて来たときは驚いた。

5kgの大箱の他に、3kgの小箱もあり、そちらは1,000円で購入することができる。だいたい15個前後入っているので、一つあたりの値段は70円程度という驚きの価格だ。

桃が並ぶ写真

贈答用として販売されている桃は、まだ少し硬い内に箱詰めされている。それは送ってから口に入るまでに数日かかる可能性があることに配慮しているから。

お客さんからも「贈るにはこのくらいの硬さがちょうどいい」と大好評なんだとか。毎年ここで配送手配をする人もいるそうだ。

県外から大草の桃を求めて集まる多くの人々

地元の人よりも県外の人の方が「ここに来れば桃を安くGETできる」という情報をキャッチするアンテナが高いようで、次から次へと駐車場に入ってくる車は、静岡、多摩、横浜、名古屋など県外ナンバーばかり。

販売をスタートするのは9時30分だが、日曜日などの混雑日には、8時頃から並ぶ人もいるのだとか。

直売所で桃を買うお客さん

4箱購入していたご家族がいたので「今日はどちらから?」と声をかけてみると、「静岡からです。我が家では、年に1〜2回ドライブを兼ねて買いに来るのが毎年恒例なんです。」と笑顔で答えてくれた。

旭温泉を訪れた際にたまたま見かけて寄ったのが始まりで、それから5年ほど通っているそう。

「静岡ではこの値段では買えないからね!」と嬉しそうに話すのを聞いて、共選場が近くにあり、収穫したての桃をいつでも安く購入できるこの環境は恵まれているのだと改めて感じた。

おいしい桃が全国に届くまで

桃を共選しているところ

共選場の稼働日には、大草桃部会員のみなさんが、その日の朝に収穫したばかりの桃を届けにくる。箱に入った桃は2階に運ばれて、共選を担当しているスタッフさんたちの手により、形状、色、傷の有無を素早く判断され、通常の販売用とはねだし用に仕分けられる。

目視でのチェックを通った桃は、そのまま光センサーの機械へと流れていき、糖度と硬さをチェック条件を満たした桃だけが市場に卸すために箱詰めされ、満たさなかったものは、はねだしやジュースの原料として扱われる。

大忙しで働くスタッフのみなさん

今年収穫される桃の数量は、見込みで1万7千ケース(=桃約30万個!)
厳しい検査を通った桃は、東京、栃木、大分などの市場へと出荷されていく。市場の人にも「大草の桃は品質がいいから自信を持って売れる」と好評であり、多くは大手の百貨店やフルーツパーラーに卸されているそう。

韮崎の桃がそうした有名店で取り扱われていることを知ると、なんだか誇らしい気持ちになる。私たちの気付かぬところで、大草で獲れた桃を口にし、笑顔になっている人たちがいることを想像すると心もほっこりする。

「桃を通して韮崎のファンを増やしたい」

今回共選場を案内してくれたのは、部会長の米山さんと、副部会長のみなさん

みなさんは他の仕事を定年退職してから家業を継いで農家になったそう。
インターネットのない時代に本を読んだり周りの農家さんに教えてもらいながら桃をつくる技術を身に付けてきたという話を聞いて、おいしい桃が食べられるのは農家さんたちの努力があるからなのだと実感した。

部会長さんは、「ここで県外のお客さんに桃を買ってもらって、そのお客さんが誰かに桃をお裾分けすることで、多くの人にこの土地のことを知ってもらうことができるよね。僕らもやっぱり食べた人に『おいしかった』『また食べたい』と言われるのは嬉しいし、そうして大草の桃のファンが増えることが、地域の発展にも繋がっていくと思うんだ。ふるさとを良くしたいという想いはみんなそれぞれに持っているよ。」と話してくれた。

よりみちのかえりみち

共選場の帰り道、南アルプスを背にして青々とした桃の木が無数に並んでいる光景が目に留まり、思わず車を停めた。

晴れ渡った青空と緑の組み合わせがすごくきれいで、「こんな景色の中でつくられる桃は、美味しいに決まっている」と感じた。

帰ってから少し調べてみたところ、桃はビタミンEとナイアシンを多く含んでいて、夏バテ対策にぴったりの果物らしい。また、甘くて良い香りがするのは、フレグランスやフレーバーとしても使われる、ラクトンC11という香り成分が含まれているからなのだそう。

『まちづくり』という言葉が出てくるずっと前から、一生懸命に桃を育てて韮崎の魅力を発信してきた人たちがいて、遠いどこかで、その桃に笑顔や元気をもらっている人がいる。

次世代と呼ばれる私たちが、夏バテなんてしている場合じゃない。今年の夏も韮崎の桃をたくさん食べて、私もがんばろうと思った。そんな、よりみちの帰り道。

 大草共選場の基本情報

  • 所在地:山梨県韮崎市大草町下條西割1−1
  • 電話番号:0551-22-2361(JA梨北韮崎甘利支店)
  • 2021年営業期間:6月25日(金)〜8月13日(金)※営業カレンダーはこちら
  • 営業時間:9時30分〜14時30分(なくなり次第終了)
  • 取扱品種

ひかわ 6月下旬~
みさか 6月下旬~
白ほう 7月上旬~
あかつき 7月上旬~
なつっこ 7月中旬~
なつおとめ 7月下旬~
川中島 8月上旬~

※出荷時期は天候等により前後します。